わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

寂しい

2

　こういう時は時が経つのが早い気がする。
　時間が止まればいい。
　こんなことを思ったのは初めてだ。

「ただいま！」

　ドアを開けて走り込んでくるリューラに抱き着かれて身を捩りつつも内心はホッとする。

「……明日は何時に行くの？」

　聞かれてビクッと肩を揺らしてしまった。
　もうリューラと過ごせるのはこの一夜だけ。

「決めてねぇけど……家に戻って荷物は準備するから昼前には……」

　言いながら妙に心細くなってきてグッと下唇を噛む。
　そんな俺に気付いたのか、リューラは指で俺の唇をなぞって微笑んだ。
　そのまま唇が重なって何度も角度を変えて食み合う。
　こんなキスも……しばらくできないと思うと触れていた袖をギュッと握ってしまった。

「……今日はゆっくり寝ようか？」

　あの指を受け入れた日から何度か指ではシていて、今日も……リューラは言い出す気がしていたのにそうではないらしい。
　俺ばかりされるだけなのも気になるが、結局俺からは何もリューラにしてやれていない。

「で、明日の朝はちょっと早いんだけど、一緒にご飯食べない？」

　言われてじっと見上げてしまうと、リューラはコテンと首を倒す。

「どうかした？」

　普段なら何でも気にせず言うのに、なぜリューラにはそのまま口にできないのか？
　まぁ、実際俺が何をしてやれるかもわからないというのもあるのだが。
　言葉がうまく出て来ない。

「一緒にお風呂入る？」
「お、俺はもう入った」

　逃げてしまって俺は部屋の隅で丸まった。