わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

代償

7

「……やっぱりお二人はまだご婚約……？」

　聞こえてきた声に反応して、バッとサフィナが俺の胸を押す。

「ち、違うからっ！私は派遣後、結婚するし！」
「そうなのか？」

　少し赤くなったサフィナに聞くと、サフィナは恥ずかしそうに口元を押さえつつこくりと頷いた。

「めでたいな！」

　スルリと出た言葉だが、サフィナに横目で見られてため息を吐かれる。

「何だよ」

　ムッとすると、サフィナは軽く体ごとぶつかってきた。

「一度は婚約してたって覚えてる？」
「そりゃ、つか忘れるわけねぇだろ」

　小声で聞かれて釣られて声をひそめると、サフィナに呆れた顔をされる。

「振った女にいい顔をしない方がいいわよ？」
「振った!?」
「間違いないでしょ？」

　笑われて押し黙った。
　何かもう友人って感覚の方が強かったのだが……こうやって一緒に居るのは無神経だったのだろうか？

「サライド様」

　呼ばれて顔を上げると、いつの間にか周りに居た連中も居なくなっていた。

「少しお話できる？」

　頷いて端のあるベンチに座る。
　共に腰を下ろすとサフィナはタオルをくれた。

「……あれから結構落ち込んで……」

　自身もタオルを手にして口元に押し当てて話すサフィナの表情はよく見えない。
　だが、声はかなり沈んでいるように聞こえる。
　しかも、落ち込んだなんて……俺は何と言えばいいのか。

「それを慰めてくれたのが今の彼なのよ」

　タオルを下ろしてこっちを向いたサフィナは花が開いたように優雅な笑みを見せた。