わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい

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「それはよかった……んだよな?」

 中途半端な反応になってしまうと、サフィナはおかしそうに笑い出す。

「えぇ!今は幸せよ!」

 本当に幸せそうな、穏やかな顔を見てホッとした。
 だが、それなら……と疑問にも思う。

「なのに、ラグランドルに行くのか?」

 聞くと、サフィナは少し眉尻を下げた。

「彼にも言われたの。……かなり危険な場所に行くのはわかっているわ。医師であろうと命の保障はない場所だもの」

 トーンの落ちた声。
 きっとその彼だけでなく、公爵も夫人も……むしろ、その派遣を応援した人は居るのだろうか?

「それでも行くんだろ?」
「そうね」

 ため息と共に聞くと、サフィナはカブせる勢いで答えて立ち上がる。

「やってみせるわ!」

 ただ前を向くサフィナの強さは美しい。
 太陽の光を浴びてキラキラと輝く髪。
 結んでいたゴムを解いてサフィナはサラリとその髪をなびかせた。

「彼ね、薬剤師なの」

 医師と薬剤師なら繋がりもわかるが、何かあるのだろうか?だが、

「……貴族でもない庶民」

 すぐに身分違いだと判明した。

「父の下で研究もしていた人で……農村部出身の人なのよ」
「それが何だ?」

 先を促すと、サフィナはそっと息を吐く。

「……ご両親が萎縮されてるの」

 リューラの宣言後、自由になったとはいえまだ気にする者が多いのは事実だ。
 農村部であるなら余計に周りも気にするだろう。

「公爵の娘……リオッター家の令嬢とだなんて」

 しかも、リオッター家は公爵家の中でも位の高い超級の貴族だ。
 その戸惑いはわからなくもない。
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