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金糸梅
第四夜
しおりを挟む「多分、小さい頃から貰い続けてないと、どこかで飢える。翠は、翠に必要な愛が足りないまま、大人にならなくちゃいけなくて……。それ埋めるのに、お酒とオトコが必要なのかな、って」
表現は違っていても、内容自体は私が千切れる心配をする必要のなくなった耳を見ていて感じた事とさほど変わらない。
物理的な穴を埋める事で、心理的な穴を埋めようとする私の習性を、彼女もまた見抜いていたようだ。
「……翠の欲しいカタチの愛じゃないかもしれない。数回会っただけでわかったようになってるって言われたら、言い返せない。けど、アタシにも出来る事、あるんじゃないかと思った。欠けてるトコ、少しは埋められるかも。今のアタシ、翠の恋人だから。無償の愛、あげて良いよね」
「…………もう、いっぱい貰ってるじゃないですか。お返しも全然出来てないのに」
「アタシ、あげる方が得意だし、あげてもあげても溢れちゃうの。だから、貰って。これも命令だから」
いつまでも使われないタオルを強引に奪った彼女は、私の目の下にそっとそれを当てた。
「……そういう事なら、貰わないといけませんね。謹んで拝受いたします、女王陛下」
フェイスタオル越しの声はくぐもっていて少し間抜けで、忠誠だけは一人前の騎士見習いのようだった。
「ん。今まで頑張って生きててくれて、ありがと。……オトコじゃなくて、ごめん。アタシがオトコだったら、全部上手く行ってたのにね。そしたら、一緒に暮らすだけじゃなくて、籍入れられたのに」
慈愛の眼差しを向けてくる献身の化身のような彼女には、やっぱり本物の女王なんて務まらない。
正確には『国のために粉骨砕身してしまうだろうから、恐ろしく向いていると言えば向いているが、私がそうなってほしくない』だけだ。
「紅さんと結婚……。考えた事なかったけど、それすごく良いですね。私だって、出来たら本当に好きな人と結構したいし。でも、謝るのは違うと思いますよ。というか、その事に関しては貴女に謝ってほしくないですね」
「なんで?」
ツンとした鼻の奥の痛みは引き、喉のつかえた感じも消えてきて、正直な思いを打ち明けると、彼女は落ちてしまいそうなほどに目を丸くした。
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