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金糸梅
第三夜
しおりを挟む「アタシは、翠のお母さんお父さんがどんな人か知らない。だから、想像で話すしかないけど。違ってたら、ごめんね。二人の肩持つ気も、貶すつもりもない。けど、そういう感じに聞こえるトコもあるかも。だから、先に謝る。ごめん。とりあえず、適当に聞いといて。無言の膝枕、なんとなく気まずいでしょ」
涙を堪えた情けない顔で頷くと、彼女はどこから出したのか、手触りの良いタオルを利き手にそっと持たせてくれた。
『喋らなくて良いし、泣いて良い』という飾り気のない言葉が聞こえてくるかのようだ。
「二人とも、翠の事、愛してない訳じゃないと思う。立派に成長して、今も連絡取り合えてる事も、喜んでるんじゃないかな。でも、翠がホントにしてほしい事に気付くのが得意じゃないのと、言葉も足りなそうな感じ。多分、親子で愛情表現のカタチが違いすぎる? のかな」
配慮された言葉選びと、私なんかとは格の違う的確な言語化に舌を巻く。
言われてみれば、両親は物質主義に傾いていたかもしれない。
彼らは私が百点満点の答案用紙を見せる度に欲しがっていた服や話題の限定品などを買い与えてくれていたし、連続記録が伸びるほどに御褒美のグレードも上がっていた。
とても嬉しかったし、モチベーションの維持にも繋がっていたが、学生時代の私は『頑張ったね』の一言が欲しくて努力していたというのが実際の所だった。
「翠の事、生んでくれた人達だから、ホントは悪い風に見たくないし、言いたくない。けど、アタシは翠の味方。だから、『もっと翠に伝わるように愛してあげてほしい』って思う。今からでも変わってくれたら良いけど、ちょっと遅すぎだよね」
彼女の溜め息かエアコンの風かわからないものが前髪を揺らす。
「翠がホントに欲しいって思う物……。多分、愛情? 他の人に貰っても良いと思う。親から貰わなくちゃいけないとは、思わない。友達とか、恋人とかからも貰える。……けど、ホントは、そういうの作れるようになる前から、親が沢山あげてないと、どんな感覚より先に……寂しさを感じる人になるんじゃないかな」
咄嗟に彼女の耳を見たが、視界がいやにぼやけていて、人工的な穴の所在は確認出来なかった。
しかし、確信出来る。
ピアスのない穴がもし見えていたとしても、寂しそうなんて感想は今の私からは出て来ないだろう、と。
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