『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第108話『エルフ美少女、来日!?』

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 冬の乾いた風が、
 校舎の窓をカタカタと鳴らしていた。

 昼休み直前のチャイムが鳴り、
 教室の空気はどこかざわついていた。

 そんな中──

「ねぇ、知ってる? 今日さ……転校生、来るらしいよ」

 誰かが呟いた。

 その瞬間。

 教室内の空気が、ビリッと弾けた。

「転校生!? マジで!?」

「今の時期に!? しかも女子らしいぞ!」

「うわー、どんな子だろー!」

 わいわい、がやがや。

 ハルカも、
 友達のミキに肘でつつかれた。

「なぁなぁ、ハルカ。新しい子、どんな子だと思う?」

「うーん……普通に地味な子じゃない? この時期だし……」

「いやいや! こういう時ってな、超美人が来るんだよ、漫画とかだと!!」

「現実と漫画は違うから!!」

 ハルカは即座にツッコミを入れた。

 ──しかし。

 次の瞬間。

 教室のドアが、
 静かに開いた。

 カラララ……

 そこに立っていたのは──

 銀色に輝く長い髪。

 澄んだ碧眼。

 透き通るような白い肌。

 まるで異世界から抜け出してきたかのような、
 完璧な美少女だった。

 制服を着こなしてはいるが、
 それすらも異国のドレスのように見える。

 背筋はピンと伸び、
 どこか気品に満ちた佇まい。

 教室全体が、
 一瞬で、凍りついた。

(……うそ……)

 ハルカは、目を丸くした。

(エルフ……!?)

 その美しさは、
 まるで童話やゲームの中のキャラクターそのものだった。

 ざわ……ざわ……。

 生徒たちが、どよめいた。

「や、やばい……」

「本当に美少女すぎる……」

「なんだこれ、作画バグってる……」

 ミキもぽかんと口を開けていた。

「……本当に来た……漫画みたいな転校生……!」

 女子たちですら、
 呆然と見惚れるレベル。

 その中で。

 その“エルフ美少女”は、
 静かにお辞儀をした。

「はじめまして。エミリ・セレスタと申します。」

 流れるような日本語だった。
 少しだけ不自然な発音が、
 逆に異国情緒を際立たせた。

「この国の文化に、深く興味がございます。皆さま、よろしくお願いいたします。」

 ぺこり、と丁寧に頭を下げるエミリ。

(……なんだこの圧倒的ヒロイン力は……!)

 ハルカは、ただただ圧倒されていた。

 男子たちは全滅していた。

「……無理」

「恋に落ちた……」

「尊い……」

 机に突っ伏す者、
 鼻血を出しそうな者、
 壁にもたれかかる者、続出。

 教師ですら、
 一瞬目を奪われたあと、咳払いして立て直す始末だった。

 ***

 そんな異様な空気の中で──

 ハルカたち女子グループは、
 小声で相談を始めた。

「な、なんか……すごい子来たね……」

 ナナが、そっと呟く。

「う、うん……」

 エミも、顔を強張らせながら頷く。

 ユイに至っては、
「同じ人間なのか……?」と真顔で呟いていた。

(いやまぁ、確かにわかるけど)

 ハルカは、ひそかに同意した。

 だが。

「……でも」

 ミキが、
 ぐいっと前のめりになった。

「せっかくだし、話しかけようぜ!!」

「は、話しかけるの!?」

「もちろんだろ! あんな美少女と友達になれるチャンス、滅多にないって!!」

「いや、でも……怖いよぉぉぉぉ!」

 ハルカは必死に抵抗する。

 だが、ミキは容赦なかった。

「行くぞー!! レッツエンカウントォォォ!!」

 ドン!

 ハルカは背中を押され、
 半ば強制的にエミリの元へ連れていかれた。

(死ぬぅぅぅぅ!!)

 心の中で絶叫するハルカ。

 そして──

 至近距離で対峙したエミリ・セレスタは、
 近くで見るとさらに破壊力抜群だった。

 まつげ、長っ……
 肌、白っ……
 目、透き通りすぎぃぃぃ!!

 ハルカの思考は、完全に停止した。

「こんにちは」

 エミリが、柔らかく微笑んだ。

 それだけで、
 クラスの男子数名が息を呑んだ。

(あっ、無理)

(勝てない)

 ハルカは悟った。

 そして、
 かろうじて脳の片隅で覚えていた日本語で、
 なんとか声を絞り出した。

「よ、よよよよよろしくおねがいしますぅぅぅ!!!」

 勢い余って、深々とお辞儀。

 そのあまりの勢いに、
 エミリがびくっとなり、思わず笑ってしまった。

「ふふっ……よろしくお願いします、ハルカさん」

(うわああああああ!!)

 名前呼ばれたぁぁぁぁ!!

 ハルカは、顔を真っ赤にして蒸気を噴き出した。

(……やばい)

(この子、想像以上に……すごい)

 そう思った、次の瞬間だった。

「ところで、ひとつ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

 エミリが、真剣な顔でハルカに尋ねた。

「は、はい、なんでしょう……?」

「この学校の、便所について──」

「──便所!?」

「なぜ、地面に穴が開いているのでしょうか?」

「!?!?!?!?」

 ハルカの頭上に、
 巨大なハテナマークが浮かび上がった。

 和式トイレ問題、爆誕。

 物語は、ここからさらに、
 ドタバタの渦に巻き込まれていくのだった。

(続く)
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