『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第115話『小さな異文化交流、そして始まる友情』

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「ぷははははははっ!」

 校庭の隅っこ。

 夕暮れに染まる空の下で、
 ハルカとエミリは、お腹を抱えて笑っていた。

「だ、だってエミリ……!」

「便所って連呼するから……!」

「だって、教科書にそう書いてありましたのに!!」

 エミリは、顔を真っ赤にして抗議してきた。

 それがまた可笑しくて、
 ハルカはさらに笑い転げた。

(最初は……あんなにビビってたのに)

 エミリ・セレスタ。
 銀色の髪に碧い瞳、まるで異世界から来たかのような美少女。

 最初に教室に現れたとき、
 この子とは絶対に仲良くなれないと思った。

 完璧すぎて、
 きっと別世界の人だって、どこかで決めつけていた。

 でも──

「和式トイレに四苦八苦してる姿とか……」

「スカート押さえながら必死に頑張ってるところとか……」

 全部見てしまった今では。

(この子、すごく素直で、すごく……かわいい)

 心の底から、そう思った。

 エミリも、
 ハルカの笑顔に釣られるように、
 ふわっと微笑んだ。

「ハルカさん……」

「わたくし……この国に来られて、本当に、よかったです」

 ポツリと、エミリは呟いた。

(……うわ)

(なにその破壊力)

 ハルカは、顔がカァッと熱くなるのを感じた。

「だ、だって……」

「まだトイレしか攻略してないじゃん!」

「これからいっぱい苦労するかもしれないのに!」

「はい!」

 エミリは、元気よく頷いた。

「それでも──」

「ハルカさんたちとなら、乗り越えられる気がします!」

(うぅぅ……)

(素直すぎてまぶしいぃぃ!!)

 ハルカは、
 あまりのまっすぐさにくらくらした。

 でも、嫌じゃなかった。

 むしろ、
 こんなふうに誰かと笑い合えることが、
 心から嬉しかった。

 ***

 風が、
 二人の髪をそよがせた。

 冬の夕暮れ。

 オレンジ色の空。
 長く伸びた影。

 ハルカは、
 そっと手を差し出した。

「これからも……よろしくね、エミリ!」

 エミリは、
 ぱぁっと顔を輝かせた。

「はいっ!」

 ぱしっ、と手を握り返す。

 小さな手。
 あったかいぬくもり。

 言葉なんか、いらなかった。

 この手の温度だけで、
 全部、伝わった。

(これが──)

(本当の、友達ってやつなんだ)

 ハルカは、
 胸の奥に小さな火が灯ったような気がした。

 ***

「あっ、でも……」

 エミリが、思い出したように言った。

「次の課題は、洋式トイレのウォシュレットです!」

「うわああああああ!!」

 ハルカは、思わず頭を抱えた。

「文化ギャップ、次から次へとぉぉぉ!!」

「また、ハルカさんが指南してくださるのですね?」

「えぇぇぇぇぇぇ!!?」

 わちゃわちゃとふざけ合うふたり。

 その笑い声は、
 冬空に吸い込まれていった。

 夕焼けの色が、
 少しずつ藍色に変わり始める。

 今日一日、
 いろんなことがあった。

 恥ずかしいことも、
 ドタバタも、
 泣きたくなる瞬間もあったけど──

 全部、笑い話に変わっていく。

 そう信じられるくらい、
 今は、心があったかかった。

(物語は、またひとつ、にぎやかに動き出す──)

 ハルカは、
 ぎゅっとエミリの手を握りながら、
 空を見上げた。

 まだまだ、これから。

 ドタバタで、バカみたいで、
 でも最高な毎日が、待っている。

 きっと、ずっと──。
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