『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第114話『ついに成功! そして友情へ』

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「──行きます!」

 エミリ・セレスタは、
 トイレの前でピシッと背筋を伸ばした。

 緊張で少し肩が震えている。

 でも、その表情には、
 確かな決意が宿っていた。

(がんばれ……!)

 ハルカは、拳を握りしめながら見守った。

 さっきまでは、
 心の中でぐるぐるモヤモヤしていたけど──

 今は違う。

 今だけは、
 心の底からエミリを応援したかった。

(ここまで頑張ってきたんだもん)

(絶対、成功してほしい──!)

「重心は前傾だ!」

「膝を曲げろ!」

「つま先に体重をかけろ!」

 ミキたちも、相変わらず謎の熱血応援団モードだった。

「エミリー! エミリー!」

 男子たちまで、リズムを取って声援を送る。

(なんだこれ、運動会か……?)

 ハルカは小さく苦笑しながら、
 それでも胸の奥がぽかぽかするのを感じていた。

 エミリは──

 そろり、そろりと、
 慎重に、便器の前に立った。

(……いける! 今度こそ……!)

 ハルカは、心の中で祈るように願った。

 エミリ、スカートをきゅっと押さえる。

 ふぅっと息を吐き──

 しゃがみ始めた。

「……!」

 みんなが固唾を呑んで見守る中。

 エミリは──

 膝を深く曲げ、
 上半身をほんの少し前に倒し、
 バランスを取りながら、スルスルとしゃがんでいく。

 プルプル……。

 脚がわずかに震える。

 でも──

 耐えた!

「……っ!」

 エミリ、膝を締めて、
 完璧な和式スタイルで止まった。

「──できたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 エミリの叫び声が、トイレ棟中に響き渡った。

 その瞬間。

「「「うおおおおおおおお!!!」」」

 大歓声!!

「やったぁぁぁぁ!!」

「成功だぁぁぁぁ!!」

「エミリー! エミリー!」

 拍手と歓声が教室棟にまで響く勢いだった。

 男子も女子も関係ない。
 みんな、立ち上がって拍手した。

 ハルカも、
 思わず顔をくしゃくしゃにして笑った。

(よかった……本当に、よかった……!)

 ***

 エミリは、
 ゆっくりと立ち上がると──

 涙ぐみながら、
 ハルカたちに向かって深々と頭を下げた。

「みなさん……」

「わたくし……ついに……!」

 ぐすっ、と鼻をすすりながら。

「できましたぁぁぁぁぁぁ!!」

 その姿に──

 全員、ぐっと胸を熱くした。

「おめでとおおおおおおお!!!」

「エミリー最高だぁぁぁぁ!!!」

 ミキは抱きつき、
 ナナは手を取り、
 ユイは号泣していた。

「がんばったね……! がんばったねぇぇぇ!!」

「うわああああああああん!!」

(……もう、めちゃくちゃだな)

 ハルカは、
 でもそれがすごく嬉しかった。

 エミリも、
 顔をくしゃくしゃにして笑っていた。

 あの、完璧に見えたエルフ美少女が。

 今はただの、
 普通の、同じ年頃の友達だった。

 ***

「ハルカさん……」

 エミリが、そっとハルカに手を伸ばしてきた。

「本当に……本当に、ありがとうございました……!」

「えっ、わ、私!? べ、別に私なんて……!」

「いえ。ハルカさんが……」

「一番最初に、話しかけてくれたから──」

 エミリは、
 微笑んだ。

 その笑顔は、
 とてもとても、眩しかった。

(……そっか)

(私、あのとき)

(勇気出してよかったんだ)

 ハルカも、
 そっとエミリの手を握り返した。

「これからも──」

「友達、だよね」

「はいっ!」

 エミリは、
 涙と笑顔でいっぱいになりながら答えた。

 ***

「友情、ばんざーい!!」

 ミキがわけわからない叫びをあげ、
 全員で、ぐちゃぐちゃになって抱き合った。

 笑いながら、
 泣きながら、
 ふざけながら。

 冬の冷たい風の中で、
 小さなあったかい輪ができていた。

 異国から来た少女も、
 地元育ちの普通の女子たちも。

 なんの壁もなく。

 ただ、笑い合っていた。

(続く)
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