『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第117話『下着売り場、未知との遭遇』

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「……あら?」

 エミリ・セレスタが、
 ふわふわと店の隅へと歩き出した。

「エミリ? どこ行くのー?」

 ミキが呼びかけるが、
 エミリはすっかり夢中になってしまっている様子だった。

「ちょ、ちょっと待ってエミリ!」

 ハルカが慌てて追いかける。

 ナナとミキも続く。

(まさか──)

(まさか──)

(まさか──!!)

 3人の悪い予感は的中した。

 エミリが吸い寄せられた先。

 そこは。

 煌びやかな照明に照らされた、
 カラフルでセクシーな──

 下着売り場だった。

「うわあああああああああ!!」

 ハルカは心の中で絶叫した。

(なんでよりによって下着売り場ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

「す、すみませんっエミリ、こっちはちょっとっ──!」

 必死に止めようとするハルカだったが──

 時すでに遅し。

 エミリは、
 どこまでも無垢な瞳で、
 色とりどりのランジェリーたちを見つめていた。

「……美しい……」

 ぽつりと呟くエミリ。

 その表情はまるで、
 美術館で名画を鑑賞する芸術家のようだった。

(だめだ……エミリには、ここも芸術空間に見えてる……!)

 ハルカは頭を抱えた。

 周囲のお客さんたちが、
「なにこの子天使か……」とざわめき始める。

(いやいやいや、そんな問題じゃなくて!)

 ***

 そして、次の瞬間──

 事件は起きた。

 エミリが、
 店頭に飾られたセクシーランジェリーセットを指差して、
 澄んだ声で堂々と質問したのだ。

「みなさん!」

「この──“ふたまたパンツ”とは、いったい何ですか!?」

 しーん。

 その場の空気が、
 瞬間冷凍された。

(ふたまた……!?)

(ふたまたって……)

(Tバックのことぉぉぉぉぉぉ!!?)

 ハルカたちは、
 口をパクパクさせた。

 目の前に飾られていたのは──
 極細の生地がY字型になった、
 きわどすぎるTバックショーツだった。

「や、やめろエミリぃぃぃぃぃ!!!」

 ミキが飛びつき、
 エミリの肩をわしづかみにした。

「エミリ! それは! それは今この場で叫んじゃだめなやつ!!」

「ええっ!? そ、そうなのですか!?」

 エミリ、ぽかんとする。

「……ですが、なぜ……?」

 さらに追い打ちをかけるように、
 エミリは無邪気に続けた。

「お尻を、ふたまたに割るデザインには──どのような意味が?」

「うわあああああああああああ!!」

 ハルカたち、顔面真っ赤。

 ナナは膝から崩れ落ち、
 ユイは震えながら壁に額を押し当てた。

(なんだこの地獄……!!)

(でも悪気がないだけに止められない……!!)

 周囲のお客さんたちも、
 こっそりエミリに注目していた。

(恥ずかしい……死ぬ……)

 ハルカは顔を覆った。

 ***

「ええっと……エミリ、あれはね?」

 必死に言葉を選びながら、
 ハルカは説明を試みた。

「……えっと……その……オシャレ? そう、オシャレのために……!」

「おしゃれ……?」

 エミリは、
 美しい眉をきゅっと寄せた。

「わたくしの国では、衣服とは“身体を守るもの”という認識ですが……」

「これは、どのような保護効果が……?」

「ないよ!!」

 即答するミキ。

「完全に! 守る気ないから!!」

「むしろ、積極的に攻めてるから!!」

 ミキとナナが大混乱で叫ぶ。

 エミリは目をぱちくりさせ、
 その場に飾られたTバックを再び見つめた。

「……ふむ……文化の、違い……」

 真剣に頷くエミリ。

(真面目に考察しないでぇぇぇぇ!!)

 ハルカたちは、
 内心で大絶叫していた。

 ***

 そしてエミリは──
 さらにとんでもないことを言い出す。

「せっかくなので──」

「わたくしも、試してみようと思います!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 ハルカたち、全力で止めにかかった。

 だが、エミリはピュアな目で問う。

「では、みなさまも、おそろいで!」

「いや無理無理無理無理無理!!」

 ナナとユイが即座に拒否した。

 ミキは爆笑しながら「むしろネタでアリじゃね?」と言い出し、
 ハルカはもう崩れ落ちる寸前だった。

(どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁ!!!)

 もはや収拾がつかないドタバタ下着爆発事件。

 そして──

 物語はさらに、
 カオスへと転がっていく。

(続く)
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