前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー～うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと！～

第165話：温泉で妹の闇が炸裂!? もう限界だよ！

　俺の名前は佐藤太一、１８歳。
　コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
　でも俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。  
　トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
　もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
　このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー！」なんて浮かれてた自分が恨めしい。  
　昨日は肛門内科で触診中に彩花、美月、美咲に囲まれて、気まずさと羞恥心で死にそうになった。
　その前は製鉄工場で灼熱に耐えたし、毎回毎回が試練だ。
　なのに、今日もまた腹がゴロゴロ鳴ってる。
　原因は昨夜のコンビニ飯だ。
　半額だった「激辛チリタコス」を勢いで食っちまって、胃が今朝から暴動起こしてる。
　チリの辛さとタコスの油っぽさが胃の中で混ざって、ヤバい感じになってる。  
　学校から帰って少し横になってたけど、我慢の限界が来た。
　仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
　湯気と硫黄の匂いが鼻をついた。
　目の前には露天温泉が広がってて、岩風呂に浸かる人々がのんびりしてる。
　俺の便器は、その温泉のど真ん中、熱い湯の中にポツンと浮かんで出現。  
「うおっ、温泉!? 露天風呂かよ！」  
　周りにはおじいちゃんやおばちゃんが「いやぁ、極楽だねぇ」なんて言いながら湯に浸かってる。
　遠くには山の景色が広がってて、湯気がモクモク上がってる。
　でも俺の便器、湯の中で微妙に浮いてて、熱い水が尻に当たる感覚がヤバい――って、物理的干渉できないから実際には感じないけど、錯覚で汗だくになるよ！  
「こんなとこで用を足すとか、マジで無理ゲーだろ……！」  
　腹痛は待ってくれない。
　チリタコスの辛さが下腹部をギュルギュル締め付けてきて、冷や汗が止まらない。
　でもその時、温泉の端から聞き覚えのある声が響いてきた。  
「我が闇の力を解き放つ時が来た……この温泉に眠る魔力を我が手に！」  
　何だ、この厨二病全開のセリフ!?
　見ると、湯船の岩に立ってるのは俺の妹、佐藤遥だ。
　中二病をこじらせた１４歳で、いつも変なポーズとセリフで家族を困らせてる。
　今はタオル巻いて、湯気の中で片手挙げて何か叫んでる。  
「遥!? お前何で温泉に!?」  
「兄よ！ この聖なる湯に呼ばれたのだ！我が闇の力を――」
　遥が俺を指さしてくる。
　待て、待て、見えてないはずの俺が見えてるのか!?  
　すると、別の声が割り込んできた。
「太一くん、大丈夫？ またお腹痛いんだね？」
　明るい声と笑顔。
　山本彩花だ。
　俺のクラスの癒し系ヒロインで、昨日も肛門内科で心配してくれた。
　湯船に浸かりながらこっちに笑いかけてくる。  
「彩花!? またお前かよ！」  
　さらに別の声。
「太一、彩花ちゃんに近づきすぎじゃない？ 温泉でも落ち着いてね」
　穏やかで親しみやすい口調。
　山本美月だ。
　幼馴染で、いつも冷静にフォローしてくれる。
　でも今はタオル巻いて湯に浸かってるし、状況がカオスすぎる！  
「美月まで!? 何でみんな温泉にいるんだよ！」  
　すると、湯気の奥から低い声が響く。
「太一……私がそばにいるのに、温泉で他の女と楽しそうに……許さないよ？」
　佐々木美咲だ。
　ヤンデレ気質のクラスメイトで、昨日も肛門内科で怖い目をしてた。
　今は湯船の中でジトッとした目でこっち見てて、温泉の癒し効果ゼロだよ！  
「み、美咲!? お前ら全員何でここに!?」  
　混乱してる俺の横で、遥が「闇の力がうずく……この湯に魔獣が潜む！」って叫びながら湯をかき回してる。
　おじいちゃんが「何だ、この子は？」って困惑してるし、彩花が「太一くん、顔赤いよ？」って近づいてくる。
　美月が「ほら、落ち着いて」って笑ってるけど、美咲が「太一は私だけでいいよね？」って湯の中で迫ってくる。
　温泉が戦場と化してるよ！  
「集中しろ、集中しろ、集中しろ！ 早く終わらせないと精神持たねえ！」  
　腹に全神経を集中させる。
　おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ！
　ブッ。  
「……うっ、音が温泉に響いた！」  
　湯面に波紋が広がって、遥が「魔獣の咆哮だ！」って叫ぶ。
　彩花が「え、太一くん、これって……？」って目を丸くして、美月が「まさかね……」って苦笑い。
　美咲が「太一の全てを受け入れるよ……」って目を潤ませてる。
　おじいちゃんが「何だ、この臭い!?」って湯船から飛び出すし、見えてないはずなのにカオスすぎる！  
　ポチャン。  
「よっしゃ、出た！ 終わった！」  
「ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」  
　光に包まれてアパートのトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
　心臓バクバクで息を整えながら、俺は便器に座ったまま放心状態。  
「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」  
　汗だくで呟く。
　温泉で妹と仲間たちに囲まれて用を足すとか、俺の人生終わってるだろ。
　遥の厨二病、彩花の優しさ、美月の冷静さ、美咲のヤンデレっぷりが混ざって、癒しゼロの地獄だった。
　玲奈は出てこなかったけど、次は闇落ちまで加わるんじゃないかとビビる。  
「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」  
　腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
　次に開けるのが怖い。
　でもチリタコスの残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
　コンビニ飯、やめたいけどやめられないんだよな。
　安いし美味いし、半額シール見るとつい手が伸びる。  
　とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
　でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
　温泉で生き延びただけでも褒めてくれよ、自分。