402 / 627
第4章 ジャンヌの西進
第77話 総攻撃
しおりを挟む
思ったより水の勢いが激しかった。
首都スィート・スィトンの西にある川。
そこの一番首都に近い部分から、水路と並行して大きな堀を作った。
目的はもちろん、首都を水浸しにするため。
水計だ。
三国志における荀攸の呂布討伐。
戦国時代における羽柴(豊臣)秀吉の軍師、黒田官兵衛による備中高松城攻め。
あるいは楚漢戦争での韓信の廃丘城攻め。
これのために川と首都の間に穴を掘り、5メートルほどの余地を残して今日を待った。
さらに同時に、川の上流にも兵を派遣し、複数の川が合流する手前にそれぞれ穴を掘って堰を作って水を貯めさせた。
それらを同時に破壊し、増水した川の流れが首都に向かうよう仕向けたのだ。
雨が降っていたとはいえほんの数日だし、川の流れは速いといってもそれほどの鉄砲水になるとは思っていなかった。
竜胆のスキルでブーストかけてもらおうと思ったがその心配もなかったわけだ。
地形が良かったのかもしれない。
首都スィート・スィトンに一番近いところから曲がり始めていた川は、そこまではほぼ直線だった。
だから曲がる手前で首都に向かって水路を引けば、水は抵抗なくそちらに流れる。
鉄砲水は俺たちの作った水路を通り、首都スィート・スィトンの西の城壁にぶつかると左右に分かれてそこにあるものすべてを押し流す。
水の流れの終点である東門の辺りでは、合流した水がぶつかって爆発しているに違いない。
そしてその水はそうそう引くことはない。
首都スィート・スィトンがある窪地には排水路がないのだ。いや、南にあるにはあるが今こうして水を送っているものよりはるかに小さい。
その間にもどんどんと水は流れるのだから、排水が追い付かず、盆地が湖のようになるのにそうそう時間はかからなかった。
もちろんその間、こちらは手をこまねいていたわけではない。
水が盆地を襲ったということは、そこを攻めている帝国兵もなぎ倒したということ。
一度、水の勢いは城壁に当たって弱まったとはいえ、その勢いは激しく人くらいは簡単に飲み込む。もちろん、川に流されるわけではないので、押し流されてそのまま東門のあたりに吹き飛ばされるのが関の山だろう。
だがそれで十分だった。
この鉄砲水で水死させるのはわずかかもしれないが、敵の陣が大いに揺れたのは確か。水から逃れようとする者、おぼれた者を助けようとする者で相当に混乱した。
いくら百戦錬磨の軍団といっても、兵は人間だ。
急激な環境の変化に対応できないだろうし、こんな天変地異に勝てるはずもない。
そしてそこを突けば、どれだけ兵力差があろうと勝つのはたやすいのだ。
さらにここでミソなのは、首都スィート・スィトンでは人的被害がほぼ皆無ということ。
水で流されるのは城壁の外側だけ。城内を通る川も水かさが増すから首都内部にも水は行くが、それは徐々であって流されるようなことはないだろう。
『帝国軍を一方的にボコれて、あの女の頭蓋骨で敦盛ダンス踊れて、ビンゴ国民はあまり殺さず、あの丹とかいう舐めた奴らを屈服させられる作戦をさ』
喜志田が言っていた奇跡に近い圧倒的状況。
少なくとも帝国軍を一方的にボコれて、ビンゴ国民をあまり殺さない状況は作れた。
残る帝国元帥は喜志田次第。
そしてユートピアの姉弟についてはこれから丸裸にする。
「隊長殿! やりましたね!」
「相変わらず、すさまじいものですね。もはや隊長に敵う敵はいないでしょう」
クロエとウィットが大はしゃぎで駆けてくる。
だが俺の意識は東に集中している。
すると右手からルックが馬で駆けてくるのが見えた。
「隊長、師団長殿と騎馬隊は東門に攻めかかったよー。戦況は結構優勢みたい」
「よし、サカキとブリーダは行ったか!」
攻撃大好きなサカキが指揮する、クルレーン隊とワーンス軍。そしてブリーダの騎馬隊。
数は劣るとはいえ、混乱している相手だからあいつらなら大丈夫だろう。
そして北は視界に入っている。
ビンゴ兵2万が北門で混乱する帝国軍を襲う。
問題はそちらだ。
まともな指揮官がいないから、愚直に押すしかない。
一応、戦況は優位。
だがさすが帝国軍最強。
ほんのわずかな時間で落ち着きを取り戻し始める。
それが完璧に整えば今度はビンゴ軍が不利になる。
数で言えば、まだ相手の方が多いのだ。
だからあとはあいつに頼むしかない。
この雨の中、自ら志願してとどめを望んだあいつに。
「喜志田……うまくやれよ」
俺は北の山から駆け下りていく一団を見て、心の中から願った。
この一戦で、すべてが決まるだから。
首都スィート・スィトンの西にある川。
そこの一番首都に近い部分から、水路と並行して大きな堀を作った。
目的はもちろん、首都を水浸しにするため。
水計だ。
三国志における荀攸の呂布討伐。
戦国時代における羽柴(豊臣)秀吉の軍師、黒田官兵衛による備中高松城攻め。
あるいは楚漢戦争での韓信の廃丘城攻め。
これのために川と首都の間に穴を掘り、5メートルほどの余地を残して今日を待った。
さらに同時に、川の上流にも兵を派遣し、複数の川が合流する手前にそれぞれ穴を掘って堰を作って水を貯めさせた。
それらを同時に破壊し、増水した川の流れが首都に向かうよう仕向けたのだ。
雨が降っていたとはいえほんの数日だし、川の流れは速いといってもそれほどの鉄砲水になるとは思っていなかった。
竜胆のスキルでブーストかけてもらおうと思ったがその心配もなかったわけだ。
地形が良かったのかもしれない。
首都スィート・スィトンに一番近いところから曲がり始めていた川は、そこまではほぼ直線だった。
だから曲がる手前で首都に向かって水路を引けば、水は抵抗なくそちらに流れる。
鉄砲水は俺たちの作った水路を通り、首都スィート・スィトンの西の城壁にぶつかると左右に分かれてそこにあるものすべてを押し流す。
水の流れの終点である東門の辺りでは、合流した水がぶつかって爆発しているに違いない。
そしてその水はそうそう引くことはない。
首都スィート・スィトンがある窪地には排水路がないのだ。いや、南にあるにはあるが今こうして水を送っているものよりはるかに小さい。
その間にもどんどんと水は流れるのだから、排水が追い付かず、盆地が湖のようになるのにそうそう時間はかからなかった。
もちろんその間、こちらは手をこまねいていたわけではない。
水が盆地を襲ったということは、そこを攻めている帝国兵もなぎ倒したということ。
一度、水の勢いは城壁に当たって弱まったとはいえ、その勢いは激しく人くらいは簡単に飲み込む。もちろん、川に流されるわけではないので、押し流されてそのまま東門のあたりに吹き飛ばされるのが関の山だろう。
だがそれで十分だった。
この鉄砲水で水死させるのはわずかかもしれないが、敵の陣が大いに揺れたのは確か。水から逃れようとする者、おぼれた者を助けようとする者で相当に混乱した。
いくら百戦錬磨の軍団といっても、兵は人間だ。
急激な環境の変化に対応できないだろうし、こんな天変地異に勝てるはずもない。
そしてそこを突けば、どれだけ兵力差があろうと勝つのはたやすいのだ。
さらにここでミソなのは、首都スィート・スィトンでは人的被害がほぼ皆無ということ。
水で流されるのは城壁の外側だけ。城内を通る川も水かさが増すから首都内部にも水は行くが、それは徐々であって流されるようなことはないだろう。
『帝国軍を一方的にボコれて、あの女の頭蓋骨で敦盛ダンス踊れて、ビンゴ国民はあまり殺さず、あの丹とかいう舐めた奴らを屈服させられる作戦をさ』
喜志田が言っていた奇跡に近い圧倒的状況。
少なくとも帝国軍を一方的にボコれて、ビンゴ国民をあまり殺さない状況は作れた。
残る帝国元帥は喜志田次第。
そしてユートピアの姉弟についてはこれから丸裸にする。
「隊長殿! やりましたね!」
「相変わらず、すさまじいものですね。もはや隊長に敵う敵はいないでしょう」
クロエとウィットが大はしゃぎで駆けてくる。
だが俺の意識は東に集中している。
すると右手からルックが馬で駆けてくるのが見えた。
「隊長、師団長殿と騎馬隊は東門に攻めかかったよー。戦況は結構優勢みたい」
「よし、サカキとブリーダは行ったか!」
攻撃大好きなサカキが指揮する、クルレーン隊とワーンス軍。そしてブリーダの騎馬隊。
数は劣るとはいえ、混乱している相手だからあいつらなら大丈夫だろう。
そして北は視界に入っている。
ビンゴ兵2万が北門で混乱する帝国軍を襲う。
問題はそちらだ。
まともな指揮官がいないから、愚直に押すしかない。
一応、戦況は優位。
だがさすが帝国軍最強。
ほんのわずかな時間で落ち着きを取り戻し始める。
それが完璧に整えば今度はビンゴ軍が不利になる。
数で言えば、まだ相手の方が多いのだ。
だからあとはあいつに頼むしかない。
この雨の中、自ら志願してとどめを望んだあいつに。
「喜志田……うまくやれよ」
俺は北の山から駆け下りていく一団を見て、心の中から願った。
この一戦で、すべてが決まるだから。
0
あなたにおすすめの小説
Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
剣と魔法が交差する世界——。
ある男女のもとに、一人の赤子が生まれた。
その名は、アスフィ・シーネット。
魔法の才能を持たなければ、生き残ることすら厳しい世界。
彼は運よく、その力を授かった。
だが、それは 攻撃魔法ではなく、回復魔法のみだった。
戦場では、剣を振るうことも、敵を討つこともできない。
ただ味方の傷を癒やし、戦いを見届けるだけの存在。
——けれど、彼は知っている。
この世界が、どこへ向かうのかを。
いや、正しくは——「思い出しつつある」。
彼は今日も、傷を癒やす。
それが”何度目の選択”なのかを、知ることもなく。
※これは第一部完結版です。
聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~
猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。
――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる
『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。
俺と俺の暮らすこの国の未来には、
惨めな破滅が待ち構えているだろう。
これは、そんな運命を変えるために、
足掻き続ける俺たちの物語。
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
勇者をしている者なんですけど、キモデブ装甲のモブAにチェンジ魔法を使われて、身体が入れ替わった!? ありがとうモブA!やっと解放された!
くらげさん
ファンタジー
雑草のように湧いてくる魔王の討伐を1000年のあいだ勇者としてこなしてきたら、キモデブ装甲のモブAに身体を取られてしまった。
モブAは「チェンジ魔法」のユニークスキル持ちだった。
勇者は勇者を辞めたかったから丁度良かったと、モブAに変わり、この姿でのんびり平和に暮らして行こうと思った。
さっそく家に帰り、妹に理由を話すと、あっさりと信じて、勇者は妹が見たかった景色を見せてやりたいと、1000年を取り戻すような旅に出掛けた。
勇者は勇者の名前を捨てて、モブオと名乗った。
最初の街で、一人のエルフに出会う。
そしてモブオはエルフが街の人たちを殺そうとしていると気付いた。
もう勇者じゃないモブオは気付いても、止めはしなかった。
モブオは自分たちに関係がないならどうでもいいと言って、エルフの魔王から二週間の猶予を貰った。
モブオは妹以外には興味なかったのである。
それから妹はエルフの魔王と仲良くなり、エルフと別れる夜には泣き止むのに一晩かかった。
魔王は勇者に殺される。それは確定している。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる