知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

間章6 尾田張人(フリーター放浪譚3)

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 年末も差し迫ったころ。
 俺はエーンという場所にいた。
 ヨジョー城から北西に十数キロいった、ヴィー地方との間にある地域だ。

 それまでの旅路も、道行く人々が“親切”にも色々施してくれたので苦労はなかった。
 いや、苦労はあった。

 何もないのだ。

 文字通り、草原と山と木々が広がるばかりで、建物も人の影すら激レア。

 昔、修学旅行で北海道の郊外に行ったことがあったが、あれよりない。
 観光地も食事処もコンビニも人通りも車もない。

 何もないのだ。

 見渡す限りの平地と山々。
 時々あるのは村や小城といったものばかり。
 高層ビルはもとより、街並みといったものがない。

 帝都にいたころは軍事行動以外で郊外に出たことがないし、軍事行動中は作戦を考えたり兵たちがいたから問題はなかった。
 けどこうして一人旅をして、その辛さを思い知った。

 当然といえば当然なんだけど、これがこの世界なんだなと、今更ながらに思う。

 そんな辛い一人旅から逃げるためか、俺は1つのそこそこ大き目な集落に足を運んだ。
 そこにいる人たちもとても親切で、俺が言えば色々と叶えてくれたから、ようやく人心地がついた。

「教皇が来た?」

 そんな村で、知っている人間の消息を聞いたのだから、つい聞いていた。
 なんだかんだで、自分も人とのつながりを求める心優しき寂しがりやな人間なんだなぁとしみじみ。

「はい、2か月ほど前。こんな辺鄙へんぴなところに、わざわざ足を運んでいただき。それはもう、村人総出で歓迎いたしました」

「ふーーーーん」

 煌夜こうやがねぇ。
 確かに村人が言う通り、こんな何もない辺鄙なところにわざわざ来るものか。

 ちょっとだけ興味が沸いた。
 新しい話題に飢えていたこともあるのかもしれない。

「それで? わざわざありがたいお説教をしにここまで来たって?」

「いえ、この村のはずれにある遺跡に用があると」

「遺跡?」

「はい。なんでも古代の神殿とかで、それを調べられるとかなんとか」

 なるほどね。古代遺跡ね。

 ……めっちゃ面白そうじゃん?

 いやー、これでも子供のころは考古学とかトレジャーハンターとか憧れたし?
 ちょっとインディーな気分になって暇つぶ――もとい煌夜が何をやってるのかを調べるのも悪くない。

「んじゃ、ちょっと明日行くから、誰か案内つけて」

「は、はぁ……」

 というわけで翌日。
 案内の若者を連れて、その街はずれとやらに行ってみた。

 速攻、落胆した。

 遺跡とかいうから、ピラミッドとかアンコールワットとかそういう感じのデカくて古びた神々しい何かを期待してたわけで。
 いや、古びてはいる。
 けどこれは……。

「朽ちてるって言った方がいいんじゃないか?」

「はぁ……なにせ誰かが手入れをしているわけではないので」

 案内役の若者が答える。

 いや、確かにツルが絡まって古代っぽさは出してるけど、ところどころ崩れているし、もはや倒壊寸前と言っても過言ではない。
 神殿とかいう割にはかなりちっちゃいし、地元のみで信仰されていた神なのかもしれない。

 うーん、これは予想以上にしょぼい冒険になりそうだ。

 実際そうなった。

 逆になんでこんなところを煌夜が訪れたのか気になって入ってみたものの、10メートル四方もない、がらんとした伽藍がらんが広がるだけで神像とかそういうのもない。

 ただ1つだけ。
 壁一面に描かれた壁画らしきものがあり、それがこの神殿のすべてだった。

 その壁画も外見同様朽ちていて、ところどころが欠けている。
 一応分かるのは、中央にいる3人を周囲の人間が崇めているような図ということ。神を崇める典型的な宗教画だ。

「この絵は?」

「なんでも世界創造の三神を祀るものだとか。この壁画に書かれていた予言の言葉というものもありまして」

「予言、ねぇ」

 まさかそんなものを調べに来たわけはあるまい。
 こんなどうでもいい滅びた神の何に煌夜は惹かれたのか。

「その予言っての知ってる?」

「いえ、私はまったく。ただ、村長の家にはそれを記した古文書があるとか」

 あの村長か……先に言えよな。

 というわけで大した収穫もなくUターン。
 村長に頼んでその古文書を見せてもらった。

 あの神殿のことだから歴史的価値のある古書だと思ったが、意外にも新しい紙で出てきて驚いた。

「一応、何かのためにと思い、定期的に写しを作っておるのです。まぁ、暇なわしの道楽ですが」

 なるほどね。
 まぁ別に古かろうが新しかろうが問題ない。読めなければ、古いも新しいもないのだ。

「ふむ、なになに……」

 と思って読み始めたけど、もちろん書かれているのは大陸言語。
 読めないわけではないけど、どこか癖があって非常に読みづらい。

「や、これは失礼しました。古語も交ざっておりますので、若い方には読みづらいかと。良いでしょう、わしが読んでさしあげましょう」

 というわけで村長の昔語りが始まった。
 てかなんで年寄りの昔語りって長くて……つまらないんだろう。
 校長先生の話と同じだよね。

 てか『校長先生』って言葉、あってるのかな?
 先生っていう立場を『教師』として言うのであれば、別に校長は授業を持つわけでもないから、先生という区分からは外れると思うんだよね。
 でも『先に生きる』人という風に考えると、少なくとも生徒よりは年上だし、指導者的な意味合いなら間違ってはいない。
 けどどこか納得いきづらいところがあるよなぁ。

 なんてどうでもいい、生産性のまったくない思考をしてしまうほどに退屈。
 しかも興味のない滅んだ宗教のお話だからつまらなさは倍増だ。
 正直、このまま眠ってしまおうかと思った。

 だがその眠気が、ある言葉を聞いたことで、一気に霧散した。

「今のところを、もう一度」

「はぁ……『世界を作りし三神は、悪を退け、永久とこしえの眠りにつく。しかして世界の崩壊に先立ち、彼女らは再び目覚め、人々を幸福に導くだろう』ですな」

 聞いたことがある。
 いや、確か……うん、間違いない。
 たまに煌夜が行う説教をぼんやりと聞いていたことがあったが、このフレーズは頭に残っていた。

『世界が滅びし時、パルルカ様は異界の神官たちの力を得て、受肉を果たしこの世に顕現する。そして世界は幸福に包まれる』

 確かそんな文言。
 パルルカ教の根本にある終末思想。

 煌夜はそれをもって女神に対抗すると言っていた。

 だが、この2つが合わさった時。
 また別の解釈が飛び出してくるとすれば……。

 考える。
 煌夜の目的、ここに来た意味、そして結果。
 それらを統合して、この終末思想を味付けすると……。

「これは、マズいかもなぁ」

 煌夜はこのことに気づいているのか。
 いや、あの男のことだ。ここまで来てそれを知って、気づかないわけがない。

 となると、今頃は大わらわだろう。

「1つ聞きたいんだけど?」

「なんでしょう?」

「煌夜――教皇様はこれを見た時何か言ってなかった? ぐぎゃあああ、そんなアホなぁぁぁ、みたいな」

「あ、た、確かに。そこまでではありませんが『馬鹿な……』とおつぶやきになった後は、どうも御顔色が悪く……皆が心配する中、粛々とお帰りになりました」

 だよねぇ。
 なにせ、女神殺しの頼みの綱としていたパルルカ様が、真っ赤な偽物だってわかったのだから。本当にご愁傷様。

「ふぅ……半年か、いや、半年もたなかったか」

「何がでしょう」

 俺のつぶやきに、律儀に村長が聞いてくる。
 だから苦笑して俺は答える。

「休暇が、さ」

 やれやれ、やっぱり俺は働き者だ。
 年末年始にここまでやるとは。
 こんなこと無視してしまえばいいのに。
 でもできない。

 だって、俺。とってもいい奴だからね。
 ちょっくらあの生意気な女の顔を見に、そしてリーナちゃんに会いに行こうかな。
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