知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
525 / 627
第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第3話 最後の休息

しおりを挟む
 ノーネームの一件は、意外と俺にショックを与えたようで、俺はその日の出立を延期させた。

 やってきたサールに連れられ西門のところに戻った時には、すでにクロエたちは城外へ出て行っていた。
 また、マリアとニーアも、暗殺者の危険性を考慮して王宮に帰った後だ。

「私が先に行って、クロエさんに伝えてきましょう。リナさん、あとはよろしくお願いします」

 というサールの言葉を受け、俺はもと来た道を戻り、自宅へと戻った。

「ごめんね、明彦くん。ちゃんと気を付けてれば」

 ベッドに寝転がり、ぼぅっと天井を見上げていると里奈が真横に腰を降ろしてそう言った。

「いや、里奈には助けられたよ。そうでなきゃ、今頃俺は……」

「そうだね……うん、姉としては当然だけど! それに明彦くんを、こうぎゅっとして、とっても柔らかかったし」

「お前な……」

 あの状況でそんなことを考えられるのは、何も考えてないのか、あるいは図太いのか。
 後者であってくれと真剣に思った。

「でも、よかったね。リンちゃんが無事で」

「……ああ」

 本当に、よかった。
 あれでもしリンがそうなっていたら、俺は今頃、本当にダメになっていたかもしれない。

 そう考えると、リンを殺さないでくれたノーネームに感謝の思いを感じてしまうのだから不思議だ。

「結局、あいつは何がしたかったんだろうな。俺を殺しても、この戦いは終わるわけじゃないのに」

「一度くらいかな、それしか彼女と話したことないんだけど」

「あぁ、そうか。里奈は、知ってるんだったな。相手の、素顔を」

 知り合いが目の前で死んでいくのを見て、あえてその話題を振ったのはデリカシーがなかったか。

「うん、でも言ったとおり一度くらいしか話したことないから、平気。でね、自分はこれしかできない。だからそうやって生きてくんだって」

「……分かったような、分からないような」

「私もそう言ったら、あの変な笑いして。分かる必要はねーよ、それが分からねーなら、それはもう他のこともできるちゃんとしたやつだ。だからそのまま生きればいーんじゃね、だって。やっぱりよく分からなかったから印象に残ってた」

 里奈に言われ、なんとなく納得いった。
 これしかできないから、そうやって生きていく。

 彼女にとってそれが暗殺だったということ。
 それは、翻って俺に当てはめてみれば、軍師だということ。

 俺にはこれしかできない。
 いや、元の世界のように学者を目指せばそれなりの生活は送れたかもしれない。
 けどこの世界が、この状況が、周囲のみんなが、それを許さない。

 結果として、俺は軍師として人を殺した。
 暗殺しかないと言った彼女と何が違うのか。

 人の命を奪うという意味では同類項なのに。

「明彦くん?」

「あ、いや。なんか難しい哲学みたいなこと考えてんだなぁって」

「そうかもね。私も、なんだかちょっと考えることもあったし……」

 里奈は、何を考えているのだろう。
 あるいは彼女自身も人を殺めた過去を思っているのだろうか。

「大丈夫だよ。里奈も俺も、ちゃんと生きてる」

「うん……」

 なんの慰めになったか分からないけど、里奈の声に少し力が戻ったような気がした。

「さ、10分くらいしたら出るかな。あまり皆を待たせてもしょうがないし!」

 少し沈んだ空気を打ち払うように力強く言い、ベッドから跳ね起きた。
 だが、そこから一歩踏み出そうとして、

「あ……あれ?」

 ベッドに膝をついてしまう。
 体がうまく動かない。

 本気で死ぬ一歩手前だったわけで、さらに万が一リンに何かあったらと思うと平静ではいられなかったようだ。

「ほら、明彦くんも大変だったんだから。無理しない無理しない」

「でも……」

「クロエさんたちにはサールさんが色々言ってくれてるわけでしょ。無理しないで」

 確かに、俺が今日出発しなくても、すぐに戦端が開かれることもないだろう。
 それに里奈と2人だけなら、馬を飛ばせば遅れは取り戻せる。

「……そう、だな」

「あれ、聞き分けがいいね。普段ならあと5分ぐらいはごねると思ったのに」

「俺ってどういう評価だよ……。ま、最近色々あったからな。色んな人に迷惑かけたし。里奈にも」

「いえいえー。でも明彦くんが元気になってよかった。本当に。おかえりなさい、明彦くん」

「……ただいま、里奈」

 向かい合って、そう言い合うのが、なんだかほほえましく、なんだか新鮮だ。

「というわけで今夜はどうする? お風呂にする? それともお食事にする? それとも、わ・た・し?」

「里奈……その芸風、ニーア、というかあの女神だぞ」

「なんかそれはすんごい屈辱……」

 そして笑いあう。

 それから一息入れてお茶を飲んで、話して、夕ご飯を食べて、そして一緒に寝た。

 思えばこの一か月、落ち込んだ時間と策を練る時間とこの国に残る人たちへの時間で費やされていた。

 里奈とこうして語り合ったことも、ほぼないと言っていい。
 だからこうして、最後の最後で語り合えたことは、最後の休息の意味も兼ねてありがたかった。
 それに、里奈の覚悟も聞けたことも。

「里奈は、いいのか。俺についてきて」

「ただ待ってるだけなのは辛いから。それに、私の手はもう汚れてる。だから、最後まで、その罪を背負って生きるから」

「……ありがとう」

「どういたしまして。それと明彦くん」

「ん?」

「頑張ろうね」

「……ああ」

 里奈の笑顔を見て思う。
 この世界に来て、再び里奈に会えて、心が通じ合えて。
 本当に、よかったと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

処理中です...