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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
閑話32 堂島美柑(エイン帝国軍元帥)
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敵が頑強だった。
尾田張人により強化された、逃げることを知らない最強の軍団が止められ、さらに鎧袖一触できるはずの敵左翼が以外に持っている。
どこかで何かが狂い始めている。
そう感じたが、それが何かは分からない。
とにかく戦局は互角、いや、若干劣勢だ。
中央の尾田張人の軍勢が前と横から攻撃を受けて苦戦している。
椎葉の率いる敵左翼攻撃軍も、鉄砲の斉射からの2方向からの攻撃で押し切れない。
どちらに加勢するか。
考えるまでもない。
もとから尾田張人の軍は死兵、使い捨てだ。
ならば椎葉の方を援護するのが理にかなっている。
「行くぞ」
だから部下を率いて走り出す。
戦場を大きく反時計回りに動くように。
そしてたどり着くのは、敵左翼の真横。
ここから突っ込めば、椎葉の軍と挟撃できる。
さらにあのジャンヌ・ダルクの存在が確認できている。
だからこの一撃ですべてが終わる。
――そのはずだった。
途端、地面が破裂した。
いや、破裂という単語はあまり適切ではない。
地面から噴出したという方が正しいだろう。
天高く伸びる線。
その高さが頂点に達した時、起こるのは落下。
だがそれによって直接的な被害が生まれるわけではなかった。
落ちてきたのは水だ。
どうやら地下水脈でも掘り当てたのか、飛び散るのはその水。
ぼたぼたと落ちてくる水滴が全身を濡らしていく。
そのことを不快に思いながらも、何を意味のないことをと考える。
どうやって堀ったか知らないけど、そんなことをして何になると。
だから敵の真横に突撃しようとして――その意味を知った。
地面が濡れている。
ただそれだけのこと。
だが草原とも言えるこの場所において、そして何より自分たちの状況においてそれはかなり致命的だ。
土の上に草が生い茂る草原。
そこに大量の水が降り注げばどうなるか。
土は水と混ざって泥になり、草は水を受けて滑りやすくなる。
やられた。
相手はこちらの騎馬隊の動きを抑制しに来たのだ。
だがそれも少しの時間稼ぎに過ぎない。
移動速度が遅くなったところで、突っ込めばそれで勝ちなのだ。
『抜山蓋世』の前に敵はいない。
里奈くんならば止められるかもしれないが、今の自分ならそれすらも凌駕する。
お腹が空いているのもあった。
お腹がすくと腹が立つというのは本当らしい。
だから勝負をつけるのは一瞬だ。
そう思い、速度を落としながらもなんとか敵に向かって突撃を敢行しようとした瞬間、
突風が来た。
前を向いていられないほどの風。
顔にバシバシと散らばった水滴がたたきつけてくる。
小癪な真似を。
こんな小細工で止められるとでも?
食い散らかしてやろう。
そう思った。
だが、
「全軍、散れ!」
嫌な予感がした。
何か凶暴なものが飛んでくるような激しい予感。
激しい銃声が連続して鳴り響く。
自分には一発も当たらなかった。
だが部下がもんどりうって落馬していく。
速度を落とした騎馬隊を、鉄砲の斉射で削り取る。
普段ならこんな鉄砲の弾なんて当たらない。
だが一番の武器である速度が殺されている。
「元帥、いかがしますか!?」
部下が聞いてくる。
いかがする?
そんなの決まっている。
「突っ込む」
その言葉を聞いた部下が、息を呑む。
だがすぐにその意図を理解して小さくうなずいた。
戦局は劣勢。
それを覆すのは自分たちしかいない。だから犠牲を覚悟で突撃し、戦局を変える。そのために。
ただ、自分にとってはどうだったのだろうか。
もはや勝ち負けはどうでもいい。
そんな思いがしていた。
杏の仇。
それすらももはやない。
ただ戦い抜く。
戦って、戦って、最期まで戦い続ける。
元の世界では得られなかった充足。他の誰に理解されなくとも、今の私にはそれこそがすべてだった。
この戦い、9割はもう負けだ。
椎葉と尾田張人の立てた策は空振りに終わり、敗北への道を転がり落ちて行っている。
彼らに恨み言を言うつもりはない。
丸投げした自分にも責任はある。
だから、これはある意味責任取りだと思う。
責任を取りつつ、自分のために戦う。
ジャンヌ・ダルク。
ここまで戦いぬき、そしてこうも勝利を収めた相手。
最期にふさわしい相手と言える。
だから行く。
脚がとられようと、速度が出なかろうと、突っ込んでしまえばそこまでだ。
だから行く。
すべての決着をつけに。
だから行く。
この世界に再び生まれた自分の生に、今度こそ意味を持たせるために。
だから行く。
私は、ジャンヌ・ダルクを殺しに行く。
誰に言われるまでもない、自分の意志でそれを成し遂げる。
敵。見える。ジャンヌ・ダルクの旗が近づく。
あと少し。
もう少し。
その美しい顔を、跳ね飛ばして自分の人生の最期に彩りを添えよう。
剣を抜いた。
もはやジャンヌ・ダルクの顔しか見えない。
この戦いの終わりは、すぐそこにある。
尾田張人により強化された、逃げることを知らない最強の軍団が止められ、さらに鎧袖一触できるはずの敵左翼が以外に持っている。
どこかで何かが狂い始めている。
そう感じたが、それが何かは分からない。
とにかく戦局は互角、いや、若干劣勢だ。
中央の尾田張人の軍勢が前と横から攻撃を受けて苦戦している。
椎葉の率いる敵左翼攻撃軍も、鉄砲の斉射からの2方向からの攻撃で押し切れない。
どちらに加勢するか。
考えるまでもない。
もとから尾田張人の軍は死兵、使い捨てだ。
ならば椎葉の方を援護するのが理にかなっている。
「行くぞ」
だから部下を率いて走り出す。
戦場を大きく反時計回りに動くように。
そしてたどり着くのは、敵左翼の真横。
ここから突っ込めば、椎葉の軍と挟撃できる。
さらにあのジャンヌ・ダルクの存在が確認できている。
だからこの一撃ですべてが終わる。
――そのはずだった。
途端、地面が破裂した。
いや、破裂という単語はあまり適切ではない。
地面から噴出したという方が正しいだろう。
天高く伸びる線。
その高さが頂点に達した時、起こるのは落下。
だがそれによって直接的な被害が生まれるわけではなかった。
落ちてきたのは水だ。
どうやら地下水脈でも掘り当てたのか、飛び散るのはその水。
ぼたぼたと落ちてくる水滴が全身を濡らしていく。
そのことを不快に思いながらも、何を意味のないことをと考える。
どうやって堀ったか知らないけど、そんなことをして何になると。
だから敵の真横に突撃しようとして――その意味を知った。
地面が濡れている。
ただそれだけのこと。
だが草原とも言えるこの場所において、そして何より自分たちの状況においてそれはかなり致命的だ。
土の上に草が生い茂る草原。
そこに大量の水が降り注げばどうなるか。
土は水と混ざって泥になり、草は水を受けて滑りやすくなる。
やられた。
相手はこちらの騎馬隊の動きを抑制しに来たのだ。
だがそれも少しの時間稼ぎに過ぎない。
移動速度が遅くなったところで、突っ込めばそれで勝ちなのだ。
『抜山蓋世』の前に敵はいない。
里奈くんならば止められるかもしれないが、今の自分ならそれすらも凌駕する。
お腹が空いているのもあった。
お腹がすくと腹が立つというのは本当らしい。
だから勝負をつけるのは一瞬だ。
そう思い、速度を落としながらもなんとか敵に向かって突撃を敢行しようとした瞬間、
突風が来た。
前を向いていられないほどの風。
顔にバシバシと散らばった水滴がたたきつけてくる。
小癪な真似を。
こんな小細工で止められるとでも?
食い散らかしてやろう。
そう思った。
だが、
「全軍、散れ!」
嫌な予感がした。
何か凶暴なものが飛んでくるような激しい予感。
激しい銃声が連続して鳴り響く。
自分には一発も当たらなかった。
だが部下がもんどりうって落馬していく。
速度を落とした騎馬隊を、鉄砲の斉射で削り取る。
普段ならこんな鉄砲の弾なんて当たらない。
だが一番の武器である速度が殺されている。
「元帥、いかがしますか!?」
部下が聞いてくる。
いかがする?
そんなの決まっている。
「突っ込む」
その言葉を聞いた部下が、息を呑む。
だがすぐにその意図を理解して小さくうなずいた。
戦局は劣勢。
それを覆すのは自分たちしかいない。だから犠牲を覚悟で突撃し、戦局を変える。そのために。
ただ、自分にとってはどうだったのだろうか。
もはや勝ち負けはどうでもいい。
そんな思いがしていた。
杏の仇。
それすらももはやない。
ただ戦い抜く。
戦って、戦って、最期まで戦い続ける。
元の世界では得られなかった充足。他の誰に理解されなくとも、今の私にはそれこそがすべてだった。
この戦い、9割はもう負けだ。
椎葉と尾田張人の立てた策は空振りに終わり、敗北への道を転がり落ちて行っている。
彼らに恨み言を言うつもりはない。
丸投げした自分にも責任はある。
だから、これはある意味責任取りだと思う。
責任を取りつつ、自分のために戦う。
ジャンヌ・ダルク。
ここまで戦いぬき、そしてこうも勝利を収めた相手。
最期にふさわしい相手と言える。
だから行く。
脚がとられようと、速度が出なかろうと、突っ込んでしまえばそこまでだ。
だから行く。
すべての決着をつけに。
だから行く。
この世界に再び生まれた自分の生に、今度こそ意味を持たせるために。
だから行く。
私は、ジャンヌ・ダルクを殺しに行く。
誰に言われるまでもない、自分の意志でそれを成し遂げる。
敵。見える。ジャンヌ・ダルクの旗が近づく。
あと少し。
もう少し。
その美しい顔を、跳ね飛ばして自分の人生の最期に彩りを添えよう。
剣を抜いた。
もはやジャンヌ・ダルクの顔しか見えない。
この戦いの終わりは、すぐそこにある。
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