知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話33 尾田張人(エイン帝国将軍)

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 戦局は劣勢だった。

 スキル『天士無双てんしむそう』による強制命令。
 死ぬ気で――いや、死ぬまで戦い続ける2万の貴族兵が敵に突っ込んだものの、あまり成果はあがっていない。

 っかしいなぁ。
 ちゃんと死ぬ気でってんのかなぁ。

 椎葉達臣と一緒に立てた策は半ば崩壊していた。
 本来なら水軍による援軍が相手の背後を脅かし、それに連動して攻め寄るはずだった。

 なのにこうしていつの間にか戦いが始まって、苦戦している。

 つか朝早くて眠いし、腹減ったし。

 あー……これもあのジャンヌ・ダルクの策ってこと?
 だとすると、すっげぇー不愉快。

 なんて愚痴ってても戦況は好転しない。
 椎葉達臣の方もてこずってるらしいし、堂島さんの援軍を頼みたいところだけど、それって俺の方から頭下げるみたいで癪に障る。

 となれば俺の手腕で逆転するしかないでしょ。

「全軍に通達。前の敵を突破する。ほかはわき目もふらずに突撃してって」

「し、しかし左方向から来るシータ軍は……」

「そんなのに構ってるとやられるだけだから。多少の犠牲はしょうがない。今は突破することが重要だって」

「で、ですが……」

「いいから、俺の指示に従え」

「……はっ!」

 やれやれ、なんで分からないのかな。
 前と左から挟撃を受けている状況だ。
 このまま戦えば出血死は免れない。
 なら少し傷を負ってでも、前をぶち抜くしか手はないってのに。

 本当、この時代の人は頭の回転が遅くって困る。

 だから一度、態勢を整えて前に向かってひたすら駆ける準備をしていると、

「……鉦?」

 右手、西の方から鐘の音が響いた。

 味方じゃない。
 だとすると敵。
 何かの合図?

 果てしなく、嫌な予感がした。

 これまでそれなりに、あのジャンヌ・ダルクと戦ってきたけど、それが何かを合図するということは、何か策を実行に移すということで、その標的は間違いなく俺か椎葉だろう。

「て、敵襲!」

 部下の悲鳴を聞くより先に、馬蹄の音が聞こえた。

 左斜め後ろ。
 その方向から衝撃が来る。

 騎馬隊だ。
 歩兵同士のぶつかり合いで、騎馬隊は堂島さんの妨害に動くと思ったのがここにいる。

 堂島さんを捨てて、こっちに来たか。

 まずい。これで三方向をふさがれた。
 いや、四方だ。
 北に騎馬隊、東にシータ軍、南にオムカ軍、そして西は味方の椎葉だ。

 逃げ場はない。
 いや、だからこそ前に出るしかない。

 やっぱり俺の命令は正しかった。
 全滅する前に、前に出る!

 だが――

「ちっ、ちょっとなんでこっちに押されてくんの!?」

 前に出るはずの部隊が徐々に下がってきている。
 それから左の方からも、さらに後ろからも。

 なんで下がる!
 もっとちゃんと戦えよ!

 そう内心毒づくも、どんどんと押されていくのは止まらない。
 3方向から押されれば、自然と中央へ、そして敵のいない西へと向かう。

 椎葉の軍の方も、まさか味方に押されるとは思わず、徐々に隊列が乱れていく。

 くそ、これが狙いか。
 俺の軍を中央へと追いやって、椎葉の軍を乱す。

 それ以上に効果的なのが――

「お、押すな! もっとそっちへ行け!」「うるさい! そっちこそ押すな!」「痛い痛い!」

 ざわめきが激しくなる。

 同時、冷や汗がほほを伝った。

 このままいくと潰される。

 抵抗しようにも、人と人がぶつかり合う中だ。
 剣を振るスペースもない。
 まるで万力に挟まれたように、ぎりぎりと体全体を締め付けられる。

 おい、なんだよこれ。
 こんなのってありかよ。
 普通に戦ってたはずなのに、どうしてこうも差がつく。
 俺と、ジャンヌ・ダルク。
 何が違ってこうなった。

 思えばあいつは小国のただの軍師のまねごとをしていた奴だ。
 もう少しで潰せたのに、残念ながら逃してしまった。

 それから何度か機会がありながらも取り逃がしている。
 その結果がこれだ。

 俺のせいなのか。
 俺がちゃんと始末しなかったから。
 リーナちゃんの時みたく、下手に温情を示したから。

 違う。
 俺は悪くない。
 俺のせいじゃない。

 俺は生きる。

 生きて、生きて、生きまくって。
 もっと楽しいことをいっぱいして、もっといい女と出会って、それから、それから!

 敗北。それは死。
 だがそれを覆してこそ、俺ってものじゃないか!?

 幸い、全軍の指揮権は俺にゆだねられている。
 ならもう、やるしかない。

「尾田張人の命令を聞け! 全軍――」

 だからこそ、俺にしかできない命令を下す。
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