知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話31 大山雫(シータ王国四峰)

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 後ろから喚声が聞こえた。
 始まったという認識はある。

 けど、自分は戦闘ではなくとうとうと流れる大河を見ていた。

 アッキーとミカが呼んでいる女の子に頼まれたからだ。

 平地での戦いに私たち砲兵隊は役に立たない。
 そのせいかと思った。けど、違った。

 彼女の言うことによると、敵が来るから大砲で追い払ってほしいということだけど。
 よく分からない。

 初めて会った時から気に食わなかったけど、ミカからもお願いされたから部隊を率いて川辺まで下がってきたのだ。

「雫さん、まだっすかねー」

 隣で川を一緒に眺める良介が話しかけてくる。

「知らない。てかなんでいるの?」

「うわ、雫さん。それパネェって。普通、手伝いに来た重傷者に言う?」

「別に。頼んでないし」

 そう。頼んでない。
 のにわざわざやってきた。

 数日前に無茶して大けが負ったばかりなのに。
 わざわざ来る意味が分からない。

「いや、やっぱ俺がいないと駄目っしょ。雫さんのスキルに合わせられる俺がさ」

「だから要らない。大砲、撃つだけ」

「たはー、相変わらず容赦ねぇの」

 といいつつも、なんだか楽しそうに笑う良介。

 なぜこの男はいつもこんななのだろう。
 ミカに怒られても、自分に邪険にされてもただ笑って済ます。
 理解ができない。
 こんな風な男が、いたことないから。
 あの人とは、まったく違うから。

「隊長! 船影が見えました!」

「おおおお、マジで来た! うわ、やっべ」

「良介、うるさい」

 本当に緊張感がなくなる。
 別に緊張なんてしないけど。

「照準、合わせて。距離が来たら撃つから」

「はっ!」

 部下に命令して迎撃の準備を整える。

 なんでもミカたちの背後を襲うために来た敵らしい。
 よく分からないけど、ミカが追い払えっていうのなら追い払うだけ。

「準備整いました!」

「そ。じゃあいい感じに撃って」

「はっ!」

 正直、砲術の知識なんてないから、部下が自発的に動くのを見るだけだ。
 それでも自分はここで隊長をしていて、四峰に選ばれている。
 それなりに自分のスキルを使って戦果をあげたからかもしれないけど、それでもみんながついて来てくれるのが謎だ。

「いや、そりゃ雫さんの魅力っしょ。雫さんって、こう……なんつーか守ってあげたいっていうか――ぐほっ!」

 なんて言ってきた良介には、折り鶴を飛ばしてボディに直撃させた。

 それでも、あの人と一緒の立場にいれたのだから文句はないけど、それも今はどうでもいい。
 ただミカに命じられたからやるだけ。

 それだけ……だったんだけど。

「ど、どうしたんですか雫さん。俺の顔になんかついてます?」

 じっと良介の顔を見る。
 なんてことない、普通の顔。

 けど、それがなんとなく気になってしょうがない。
 もちろん良い意味じゃない。
 蹴りを入れたくなるような、イラつく顔だということ。

「別に。来たなら手伝えば? それだけ」

「……お、おお! やってやるさ! さ、雫さん。俺に折り鶴を!」

「うるさい。今やる」

 こいつ。やっぱりなんだかつかめない。
 ペースも握られている気がする。

「てぇー!」

 部下が大砲を使いだした。
 お腹にずんと響く砲声が響く。

 数秒して、遠くに見える船影が火を噴いた。
 さらに数発がヒットして、次々と黒煙を上げていく。

 だがそれは一隻。
 あとから十数隻が続いてくるはず。

 それをここで防がないと、ミカたちが大変なことになるというのだから、こちらも必死になる。
 それまでこっちの大砲が持つのか、という話だけど、冷却期間は雫の能力でカバーする。

「『創造する紙片ピース・メーカー』」

 折り鶴が飛ぶ。
 良介のスキルによって爆弾化した鶴が。

 それは船団に次々と着弾し、小さいながらも確実にダメージを与えていく。

「っしゃあ! 当たりましたよ、雫さ――っで! なんで蹴るんすか!」

「うるさい。さっさと次やる!」

 良介を急かして折り鶴を次々と飛ばした。
 船団は混乱していた。
 油断していたのか、攻撃を受けるとその場でくるくる回ったり、蛇行したりしているのがよく分かる。
 さらに船同士がぶつかって沈んでいくのもある。

 1時間もしない戦闘の結果。敵の船団は半数が沈没し、半数が逃げていく。

 終わった。
 ミカの要請には十分に応えられたはずだ。

 部下たちが歓声を上げる中、

「っだっはー! もうだめ、疲れたー!」

 良介が情けない声を出して地面に転がる。
 情けない奴。

 そう思うけど、ミカが言うにはこれが最後の戦いになるという。
 ならこうして良介と一緒にスキルを使うのも最後になるだろう。

 なぜかそれが、少し寂しい。
 なぜかそう思ってしまったのだ。不覚にも。
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