知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第33話 受け継がれる意死

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「明彦くん、大丈夫?」

 しばらく放心していた俺を里奈が心配して声をかけてくれた。

「……ああ」

 だがそれ以上に声が出ない。
 言っていいことなのか。
 頭が固まる。

「何があったの? 教えて」

 里奈に求められるが、それでも戸惑う。
 あるいは里奈なら。
 そう思って口を開きかけるが、

「さて、会見はこれで終わりですね」

 煌夜に邪魔された。
 振り向いて改めて煌夜を見るが、小さく首を振るだけだ。

 話すなってことか。

 なるほど。
 こいつは全部1人で抱えてきたってことか。
 おそらく相方にも伝えていないだろう。

 なら、俺もそれに倣うべきだ。
 無理に心配させる必要はない。

「いや、ちょっとこいつの妄言を検討してただけだ。その結果、こいつは新興宗教の教祖様だよ。怪しいことこの上ない。とんだ電波だって分かって愕然としたんだ」

「心外ですね、それに教祖ではなく教皇です」

「どっちも同じだろ」

「違います。私はすたれた教義を復活させただけです」

「中興の祖ってことだろ。それでも十分、教祖の立場だ。ま、それもあの女神に騙されてたってことだろうけど」

「本気で怒りますよ、ジャンヌ・ダルク?」

「どうぞ、天罰をくだしてみやがれ、教祖様?」

 もちろん本気で口論しているつもりはない。
 里奈から話をそらすためにやっているだけにすぎない。
 相手もそれを分かっている。

 そこら辺の息の合い方に、どこかホッとしている自分がいる。

 あるいは。
 本当にあるいは。

 俺が帝国側に転生していたら……こいつとも仲良くできたのではないか。
 達臣も、堂島元帥も、長浜大将軍も。

 いや、そんなもしも、考えるだけでもむなしい。
 というより恐ろしい。

 それはつまり、敵対していたということだから。
 ジル、サカキ、ニーア、クロエ、そして……マリア。
 彼ら彼女らを、俺の采配で命を散らしていたかもしれないなんて、考えたくもない。

 だからこの出会いは必然で、この別れは運命だ。
 もはや時計は逆に戻ることもない。
 ここからさらに転生することもない。

 なら、ここまでだ。

 俺と彼の関係性の物語は。

「あー、なんか盛り上がってるとこ悪いけど。ボクはどうすればいいかな?」

 仁藤が心細そうに声をあげる。

 あぁ、そういえばそうか。
 このまま帝国に残れば、女神に殺される。
 それは心苦しい。

「うちに来るか?」

「いいのかい? ああ、けど煌夜さん」

「遠慮することはない。君は生きたまえ」

「……お世話になりました」

「うん」

 それで別れは終わった。

 が、そういえばと煌夜が思い出したように、

「1つだけ、お願いしてもいいですか?」

「負けたのに、図々しいな」

「そうでなくては、1つの宗教の教主にはなれませんよ」

 やれやれ、仕方ない。

 俺はうなずいて相手の言葉を待つ。
 そして、

「あの女神を、倒してください」

「っ!」

 まさか、という想いと、やはり、という想いが胸を駆け巡る。

 思い出すのは尾田張人の言葉。

『煌夜をあまり舐めない方がいい』

 舐めない方がいいのは、彼の執念。

 彼にとって自分の命はどうでもいいらしい。
 必要なのは、女神への復讐。

 いや、そんな浅いものじゃない。
 きっとこれは――

「世界への、抵抗か」

「そんな格好いいものではないですよ。ただ、自分がやり残した仕事を、頼もしい同志に託した。それだけのことです」

 …………同志、ね。
 都合のいい言葉だ。

「なんで俺なんだ。勝ったけど、俺は力は貧弱。武器も持てない。あの女神を倒そうと思っても、無理だって分かるだろ」

「それは、私がやろうとしたやり方ができるのは、この大陸広しといえどあなたしかいないからです。本当は、もっと仲間を集めて決戦に挑みたかったのですが、もはやそれも叶いません。ですから、あなたにしか託せない」

「…………」

「それに倒すといっても、あの女神を引きずり出さなければならない。それができるのは、これまで女神に繋がりを持った者、あなたしかいない。そしてその後、女神を倒すための環境を整えること、それもあなたしかいない」

「環境?」

「そう、女神を引きずり出し、戦いを挑む環境づくり。それは、知力に突出した私かあなたしかできなかった」

「それなら達臣にもできるだろ」

「彼も優秀ですが、それほどの執念はない。それに、どちらかというと、政治家ですよ、彼」

 そういうものか……。
 けど、まぁそうだな。
 これは彼の遺言みたいなもの。

 きっと、俺が恐れていた共倒れという線がないという告白だ。

 その覚悟に対し、応えるのはそれを受け入れるしかないのなら。
 俺は感謝の言葉を込めてうなずく。

「確約はできない。けど、善処しよう。俺も、あの女神には相当いらついてるし」

「それで構いません。それで、私と麗明は救われる」

「お前たちは――」

 その後に、何を言おうとしたのだろう。
 分からない。

 だからそれ以上、何も言えなくなって、口をつぐんだ。

「それでは、これにてお別れです」

 そんな俺を元気づけるためか、大仰に頭を下げる煌夜。

「……ああ」

 俺はそれしか言えなかった。

「さようなら、煌夜さん」

「ええ、さようなら、里奈さん。お元気で」

 里奈はお辞儀をして、仁藤は軽く会釈をした。

 そのまま煌夜はカジノを――いや、つぶれた教会から出ていく。

 その背には、覚悟を決めた男の力がみなぎっている。
 そんな風に思えた。
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