知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第1章 オムカ王国独立戦記

第51話 王都バーベル防衛戦前日

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 エイン帝国軍10万が王都バーベルに向かって進軍中。

 その報告を受けた王都は恐慌、混乱状態に陥り、その混乱を収拾するのに24時間はかかった。
 逃げ出す者は数知れず。軍としてもそれは追わず、逆に無関係な一般市民を追い出した。

 恩情のためではない。それにより少しでも兵糧の節約になると判断したからだ。

 軍議では当然、籠城となった。
 当然だ。野戦なんかした日には、初日でオムカの滅亡は決定する。
 桶狭間おけはざまほど天の時を与えられたわけでもなく、厳島いつくしまほど地の利を与えられたわけでもなく、川越かわごえほど人の和(というより敵の愚)を与えられたわけでもない。
 賭けに出るには勝算1つない以上、籠城は当然の選択肢だった。

 だから1日でも長く籠れるよう、去る者は追わずの姿勢となったのだ。
 もちろん、10万を相手に兵糧を食いつくすほどの期間籠っていられるとは思えないけど。

 一応、慰撫いぶ政策の一環として去る者にはハカラのため込んでいた金の一部を渡したが、焼け石に水だろう。

 唯一の幸いは北の砦にいた兵とブリーダが率いてきた兵が間に合ったことか。
 騎兵が多いブリーダの兵は外に出し、遊撃隊として置いた。敵の背後を襲わせたり、補給線を切ったりと使えるほか、ブリーダたちの分の兵糧を節約できるうまみもある。彼らは外にいるからいつでも補給できるわけだし。財源は彼らの発掘した金を使って良いとなっている。

 だが一度籠城戦に入ると連絡は簡単に取れない。
 一応、細かい動きや狼煙の内容についてすり合わせたが、ほぼブリーダの才覚に任せたようなものだ。

 兵力は王都の中に5千700、外に3千。合わせて8千700だ。
 さらに義勇兵として立ち上がった者たちは、エイン帝国襲来の方を聞いて逃げ出した者もいたが、それでも1千人以上が残ってくれた。

 彼我の戦力把握ができたころ、主だった者は謁見の間に集められた。

「守備隊の総大将をジーン・ルートロワに、副将としてサカキ・ニールコップを置く。さらに軍師格としてジャンヌ・ダルクを任命し、戦闘に関するすべての権限を委任する。皆の者、危急存亡のときじゃ。国が一丸となって、必ずやエインどもを追い払い、真のオムカ王国独立の祝杯を上げるのじゃ!」

 マリアの裁断のもと、指揮系統が定められた。
 戦闘については軍に完全に任されたということで、それは悪い事ではない。

 ジルは早速いつもの営舎を本陣とした。
 そこで緊急の軍議を開き、籠城をメインとした方針を決めた。

 準備を行うために各自は本陣を出て行ったが、俺は営舎に残った。
 そこに各地からの報告が上がってくるからだ。

「ジャンヌ様、食料は王宮に運び込み、また水も川からくみ上げて可能な限りかめに入れて各地に保管しております」

「ジャンヌちゃん、四方の各門の配置は終わったぜ。ただ1カ所につき1千ちょいだ。厳しい戦いになる」

「隊長殿、義勇兵の調練終わりました。と言っても弩を放つくらいのことですが」

「ブリーダ殿より伝令! 敵の兵数はおよそ8万! 北の砦には引き続き2万が入っており、補給路を確保しているようです!」

「ジャンヌ様、捕虜は解き放ちました。弁当のほかに少量ながら金を渡しています。しかし、大丈夫でしょうか。いえ、疑っているわけではないのですが、そう簡単に敵に不協和音など……」

「帝国軍接近中! この速度だと明日の昼には王都バーベルを包囲します!」

 報告を聞き、それを書留め、次の指令を告げる。
 それをひたすらに繰り返す1日。もう頭がパンクしそうだ。

 いや、パンクしても勝てるならそれでいい。勝てなくても負けなければそれでいいんだ。

 シンクシンクシンク。
 考えろ。
 考えることは神が人間に与えた最強の武器だ。
 考えることがあまねく与えられた平等の力。
 考えることで凡人は天才を打倒しうる。

 だから思考を止めるな。
 鼻血がでようが目がくらもうが頭痛がしようが関係ない。
 寝落ちしようが気絶しようが卒倒しようが絶え間なく。
 飢えようが衰弱しようが死に瀕しようが最期の最期まで。

 考えぬけ。さすれば与えられん。

「おっはろー! 元気~? って、元気じゃないね」

 せっかく集中できてたというのに、それをぶち壊すこの暢気な声。
 狙ってやったのなら大したものだ。

「なんの用だニーア。俺はお前を相手にできるほど暇じゃない」

「あ、つめったいなー。せっかく援軍連れてきたのに」

「なに? どこの援軍だ!?」

「あ・た・し」

「帰れ」

「ひっどーい! そんなこと言うならもうおっぱい揉んであげないから!」

「元から頼んだ覚えはねーよ」

 てゆうかマジなんで来たんだよ。
 そう思うとますます態度が邪険になる。

「いいから暇じゃないんだ。お前は王宮の警護だろ」

「えー、でもいいの? 指揮官足りてないんでしょ?」

 こいつ、これだから油断がならないんだ。

 確かに4つの門を指揮する人間は足りていない。
 敵の本陣があるだろう北門には俺、東門にはジル、南門にはサカキまでは決まっているが西門がいない。
 クロエをあてがうしかないと思っていたところなのだが、優秀とはいえ経験不足だし、彼女には俺の近くにいてほしい。

「ふっふー、今なら3揉みで引き受けちゃうもんね」

「じゃあいいです。クロエがやるから」

「あ、うそうそ! もう、イケずだなぁ。分かったわよ。もともと女王様からの命令だからね。『余を守っても城が落ちたら意味がない。余に守りは要らぬのじゃ』って」

「マリアが……」

 自分の護衛より、国を守ることを先決にする判断。なるほど英邁(えいまい)だ。
 ならありがたくこの申し出を受けるとしよう。

「分かった。ニーアには西門を頼む」

「はいはーい。まかせり!」

 ……やっぱ不安だな。

 その後も人の往来が絶えず、ようやく落ち着いたころには日が暮れていた。

 とりあえずやれることはやった。
 籠城の準備、ブリーダを含めた作戦の打ち合わせ、ハワードへの伝令、東と北に放った密偵。
 慌ただしい1日だった。
 だが明日から本当の死闘が始まる。

 今はもう、なぜこうも迅速にエイン帝国が動いたかという理由はどうでもいい。
 それによって受けるデメリットはかなり大きいが、メリットがないわけではなかった。

 南部自治領とビンゴ王国だ。
 あまりに行動が迅速なため、どちらも侵攻の準備が間に合わなかったのだ。だから西と南から攻められて更に敵の数が増すこともない。小さいが、少なからずのメリットだ。

 だからエイン帝国軍8万をどう迎え撃つか、それだけ考えればよかった。

「隊長殿、皆が集まっています」

 クロエが呼ぶ。
 頭の使い過ぎでオーバーヒート気味だが、最後の最後まで打てる手は打っておきたい。

「分かった、今行く」

 国家が滅びるか生き残るかの瀬戸際だ。
 やってやりすぎるということはないだろう。
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