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第1章 オムカ王国独立戦記
閑話5 尾田張人(エイン帝国将軍)
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「あー、ったく。だりーことしてんじゃねーよ」
なにハカラのやつ死んでんの? 馬鹿なの?
オムカとか地図にちんまり載ってる超弱小国だろ。
そんなのに負けるとか超ウケる。
せっかく俺が色々アドバイスしてやったってのによ。ロハで。
政敵の陥れ方とか、クーデターのやり方とか、命令を出す一番上の人間を押さえる方法とか。
ま、俺としてはどっちでもよかったんだけど。
ハカラの馬鹿がそのままオムカを支配するなら、ビンゴかシータに対して戦争ができるということ。
逆にオムカがハカラを追い出せば、それを口実としてオムカと戦争ができるということ。
どちらにせよ俺、尾田張人が大好きな戦争が繰り広げられるのだから文句はない。
そのために国境付近で、相手に悟られないよう演習と称して軍を駐留させてたわけだけど。
2カ月って読みは外れて1カ月弱で望んだ事態が起きたのは嬉しいことだ。
なぜならできる奴がいるってことだから。
「面白いなぁ、誰だろうなぁ。オムカとかちっちぇえ国に興味はないけど、それは興味津々ってなぁ」
何せ帝国の要衝で、ビンゴとシータに攻められ続けている地域だ。南部の自治領も不穏な動きをしているというから、万が一のことも考えると三方向から攻められる場所だ。
それが良い。
戦争が多い。
最高じゃないか。
元来争いごとが好きなわけじゃない。
ただ陥れるのが好きだった。困惑させるのが好きだった。うろたえさせるのが好きだった。混乱させるのが好きだった。蹂躙するのが好きだった。いたぶるのが好きだった。嬲るのが好きだった。追い詰めるのが好きだった。見下すのが好きだった。泣き顔を見るのが好きだった。
ただそれだけの事。
直接手を下すこともなかったし、殺人なんて嫌悪の象徴だった。
だけど、知ってしまった。
戦争の面白さを。極限状況で繰り出される命のやり取り、一手打ち間違えれば即敗北につながるギリギリの駆け引きにはまってしまった。
それだけならまだギリギリ踏みとどまれた。
そんな戦争屋は世界のどこにでもいるし、有史以来いつの時代にもいた。
けどダメだ。
アレを知ってしまったのだから。
アレを知った時の喜びは、エクスタシーの快感より代えがたい物だ。
「言うよね。最高は汚い、汚いは最高だって」
指揮官用の詰所として接収した民家のドアを開けた。
そこには少女が1人ぽつんと座っている。触りたくなるくらいサラサラな黒髪のストレートヘアーに、憂いを覗かせる横顔はたまらなくそそる。白のブラウスにロングスカートといういで立ちだけ見れば、深窓の令嬢と見間違われてもおかしくはない。
彼女こそ俺の欲望を満足させてくれる、唯一の存在。
俺に快感を届けてくれる天使。
「リーナちゃん。はやいねー」
「…………別に」
「あいっ変わらず暗いねぇ。ほら、もっとスマイルスマイルー」
「…………うるさい」
「あ、冷てーの。もう、せっかく同じとこから来たってのに、もうちっと仲良くしてくれてもいーんじゃね?」
「…………」
あーあ。やっぱりだんまりかー。
見た目はちっと美人系なんだけど、この暗さが相まってちょっとジメジメ系っていうの? あんまりその手は好きじゃないんだけどね。でも俺はこの子が気に入っちゃってるのだ。
「反応してくれないと悲しいのよね。でもおかしーの。戦場じゃ、あんなに楽しそうなのにね」
「っ! あれは……私じゃ、ない」
ようやくまともな会話になった。
ま、内容はまともじゃないけどね。
「ふーん、その魔剣のせいってこと? でもおかしいなー。それじゃあなんであんなに笑顔なの? 嬉しそうなの? ね、楽しいんでしょ? 人を殺すのが。人の首を刎ねるのが。人をバラバラにするのが。人の血を見るのが。人を脱穀するのが」
「私は! …………もう、殺したく、ない」
「それはそれは優しいことで。でも考えてみなよリーナちゃん。俺たちが勝たなきゃ、エインが統一できない。そうなると俺らは帰ることができない。前も言ってたけどさ、君にも帰る理由があるんだろ?」
「……………………」
あーあ、また黙りこくっちゃった。
戦場だとあんなにテンション高いのに、このギャップがたまらないっての?
しかも待たせてる人がいるとか幸せそうでいいねー知んねーけど。
俺?
俺はほら、一人っ子だから。なんてね。
でもこの世界が気に入ってるのは確か。
だって、こんなに面白い世界、元の世界じゃ体験できねぇっつーの。あの日本とかいうくだらなく退屈だった世界になんか、戻りたくはない。
だから――
「ほら、だったら行こうぜ。俺の『天士無双』とリーナちゃんの『収乱斬獲祭』でオムカの奴らを皆殺しにするためによ?」
なにハカラのやつ死んでんの? 馬鹿なの?
オムカとか地図にちんまり載ってる超弱小国だろ。
そんなのに負けるとか超ウケる。
せっかく俺が色々アドバイスしてやったってのによ。ロハで。
政敵の陥れ方とか、クーデターのやり方とか、命令を出す一番上の人間を押さえる方法とか。
ま、俺としてはどっちでもよかったんだけど。
ハカラの馬鹿がそのままオムカを支配するなら、ビンゴかシータに対して戦争ができるということ。
逆にオムカがハカラを追い出せば、それを口実としてオムカと戦争ができるということ。
どちらにせよ俺、尾田張人が大好きな戦争が繰り広げられるのだから文句はない。
そのために国境付近で、相手に悟られないよう演習と称して軍を駐留させてたわけだけど。
2カ月って読みは外れて1カ月弱で望んだ事態が起きたのは嬉しいことだ。
なぜならできる奴がいるってことだから。
「面白いなぁ、誰だろうなぁ。オムカとかちっちぇえ国に興味はないけど、それは興味津々ってなぁ」
何せ帝国の要衝で、ビンゴとシータに攻められ続けている地域だ。南部の自治領も不穏な動きをしているというから、万が一のことも考えると三方向から攻められる場所だ。
それが良い。
戦争が多い。
最高じゃないか。
元来争いごとが好きなわけじゃない。
ただ陥れるのが好きだった。困惑させるのが好きだった。うろたえさせるのが好きだった。混乱させるのが好きだった。蹂躙するのが好きだった。いたぶるのが好きだった。嬲るのが好きだった。追い詰めるのが好きだった。見下すのが好きだった。泣き顔を見るのが好きだった。
ただそれだけの事。
直接手を下すこともなかったし、殺人なんて嫌悪の象徴だった。
だけど、知ってしまった。
戦争の面白さを。極限状況で繰り出される命のやり取り、一手打ち間違えれば即敗北につながるギリギリの駆け引きにはまってしまった。
それだけならまだギリギリ踏みとどまれた。
そんな戦争屋は世界のどこにでもいるし、有史以来いつの時代にもいた。
けどダメだ。
アレを知ってしまったのだから。
アレを知った時の喜びは、エクスタシーの快感より代えがたい物だ。
「言うよね。最高は汚い、汚いは最高だって」
指揮官用の詰所として接収した民家のドアを開けた。
そこには少女が1人ぽつんと座っている。触りたくなるくらいサラサラな黒髪のストレートヘアーに、憂いを覗かせる横顔はたまらなくそそる。白のブラウスにロングスカートといういで立ちだけ見れば、深窓の令嬢と見間違われてもおかしくはない。
彼女こそ俺の欲望を満足させてくれる、唯一の存在。
俺に快感を届けてくれる天使。
「リーナちゃん。はやいねー」
「…………別に」
「あいっ変わらず暗いねぇ。ほら、もっとスマイルスマイルー」
「…………うるさい」
「あ、冷てーの。もう、せっかく同じとこから来たってのに、もうちっと仲良くしてくれてもいーんじゃね?」
「…………」
あーあ。やっぱりだんまりかー。
見た目はちっと美人系なんだけど、この暗さが相まってちょっとジメジメ系っていうの? あんまりその手は好きじゃないんだけどね。でも俺はこの子が気に入っちゃってるのだ。
「反応してくれないと悲しいのよね。でもおかしーの。戦場じゃ、あんなに楽しそうなのにね」
「っ! あれは……私じゃ、ない」
ようやくまともな会話になった。
ま、内容はまともじゃないけどね。
「ふーん、その魔剣のせいってこと? でもおかしいなー。それじゃあなんであんなに笑顔なの? 嬉しそうなの? ね、楽しいんでしょ? 人を殺すのが。人の首を刎ねるのが。人をバラバラにするのが。人の血を見るのが。人を脱穀するのが」
「私は! …………もう、殺したく、ない」
「それはそれは優しいことで。でも考えてみなよリーナちゃん。俺たちが勝たなきゃ、エインが統一できない。そうなると俺らは帰ることができない。前も言ってたけどさ、君にも帰る理由があるんだろ?」
「……………………」
あーあ、また黙りこくっちゃった。
戦場だとあんなにテンション高いのに、このギャップがたまらないっての?
しかも待たせてる人がいるとか幸せそうでいいねー知んねーけど。
俺?
俺はほら、一人っ子だから。なんてね。
でもこの世界が気に入ってるのは確か。
だって、こんなに面白い世界、元の世界じゃ体験できねぇっつーの。あの日本とかいうくだらなく退屈だった世界になんか、戻りたくはない。
だから――
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