知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第2章 南郡平定戦

第9話 魅力95

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「うぅ、体中が痛い……」

 あてがわれた宿舎の一室、目が覚めるとベッドから起き上がれなくなっていた。

 これってあれか? まさか筋肉痛?
 プールで少し泳いだだけで?
 もともと体力には自信がなかったわけだが、それにしてもひどい。
 前にちょっと鍛えようと思ったけど、激務でそれどころじゃなかったからなぁ……。

 ただこれは困った。
 そろそろ出兵の時期が近づいていると聞くから、そのことについて今日は九神と話をするつもりだったのに。

 そもそも俺がこの国に来たのは、エイン帝国を攻める時に知恵を借りるというあまつの要望が理由なのだ。
 同盟の話とかは別段俺がやらなくてもよかったんだけど、他に人がいないし、ついでにということで話をしたわけで。

 それなのにここ数日、なんか遊んでばかりな気がする。
 だから一応昨日を区切りとして、今日から頑張っていこうと思った矢先のこれだ。まったくしまらない。

「おっはろーん! ジャンヌー、朝だべー!」

 こいつはうるせーし。

「あれ、ジャンヌまだ寝てる? もう、それならそうと言ってくれればいいのにー。さ、お嬢様、お目覚めのキスを――ぶべっ!」

「なにしようとしてん――痛ったたたたた…………」

「ジャンヌがぶったー。てかなに? 筋肉痛? あははー、さすがジャンヌ。貧弱だね」

「うるせーよ」

 くっそー、これも全部あの女神のせいだ。絶対許さん。

「とりあえず早く着替えちゃって。お手伝いさんが朝ごはんの準備してくれてるから。あと5分で支度しないと、あたしの理性が残ってる保障はないよん」

 そんな物騒な予告を残して部屋から出ていくニーア。

 あいつの理性には期待できそうにないので、痛む体に無理させて着替えを行う。
 上は薄手のシャツに下はスカート。礼服は暑いし後ででいいか。一応国の代表としているのだから変な格好はできないけど、さすがにこの暑さは辛い。

 それにしても約半年。
 俺も女の体に慣れたというか、スカートとか下着を変とは思わなくなってきている。ヤバいなぁ。どこかで自分は男だと再認識させることが必要そうだ。

 着替えて居間に出ると、ちょうど朝食の準備が揃ったところだった。
 目玉焼きとパンにサラダ、あとはヨーグルト。質素だが、朝はもともとそんなに食べないので有難かった。
 さすがに一国の使者に対する礼儀として、大きくはないが宿舎を用意してくれた。食事を用意してくれる老婦人に、部屋の掃除やベッドメイクをしてくれる女中さんつき。そもそもの宿舎が大きいわけではないので、2人で十分だった。それ以上いられても落ち着かないからちょうどいい。

「いただきます」

 手を合わせて、それからパンを取ると目玉焼きを挟んでひとかじり。熱々で美味しい。
 サラダはさっぱりとした味付けで目覚めに優しかった。
 時間の経過とこの朝食で気力を得たからか、なんとか筋肉痛に耐えられるくらいには回復した。

 ただニーアはというと、

「がふがふ……うまっ、ごくごく、うん、いける! もぐもぐ、うっまー」

 マナーもへったくれもないな。
 ちなみにニーアの方にはベーコンやらソーセージが乗っていて、全体的にボリューミーだ。見ているだけで胃もたれを起こしそうだった。

「ん、ジャンヌもう食べないの? 美味しいのに。ほら、食べないと大きくならないぞ」

「もう十分だよ。俺は小食なんだ。それに、いくら食べたって大きくならないものは大きくならないぞ」

「……しーん、ジャンヌに馬鹿にされた。もうダメです。生きていけません」

「わ、悪かったよ! 悪かった。取り消す!」

「じゃあ好きって言って?」

「は、はぁ!? それとこれとは……ほら、人の目もあるし」

「うぅー、ジャンヌの心もとない一言であたしの心は砕け散った。なのにジャンヌはごめんの一言も愛してるの言葉もないなんて……ひどい、ひどすぎる!」

 そ、そんなにか……。
 いや、確かに無神経だったのは悪かったけど。

 てか好きとか、そんなこと里奈どころか誰にも言ったことないのに。

「……ニーアはもうダメですーしにますーいきるきりょくをうしないましたー」

 ええい! もうしょうがない!
 これ以上こんな調子でいられるのもうざったいし、さっさと済ましてしまおう。

「す、好きだよ……友達として」

 俺が小声でそう言ったのと、

「入るわよ!」

 玄関のドアから水鏡が入って来たのは同時だった。

 顔を真っ赤にした俺と、にまにま顔のニーア。
 そんな朝食の風景を見た水鏡は、硬直して、首をかしげ、

「…………邪魔だったみたいね」

「あ、いや! 水鏡! 頼むから入ってきて! てかこの空気助けて!」

「ちっ、あともうちょっとだったのに」

 何がだ、ニーア。
 もうやだ、誰だよこいつを同行に選んだの。はーい、俺で――はないよね!? こいつが自薦したんだよね。くっそー。

 そんな俺を見て、水鏡が鼻を鳴らす。

「ちょっといい? ……あ、アッキー」

「お前までそれで呼ぶか……」

「なに? 何か文句ある?」

 少し顔を赤らめて噛みついてくる水鏡。
 うぅ、昨日はちょっとイイ感じかと思ったけど、やっぱり水鏡はこれだ。下手に逆らうと精神を殺されるから大人しく従っておこう。

「分かった。それでいいよ。それでどうした?」

「呼び出し、明から」

 九神が? 昨日の今日で何の話だろうか。いや、もともとこちらから話をしに行くつもりだったのだから好都合だ。

「ん、そうか。じゃあ準備して行くよ」

「朝食の時間くらいは待つって。表に馬車を待たせてるから。わたしも一緒に行くわ」

「そうか、すまない」

「別に。仕事だし」

 うぅん? なんだろう。若干棘が少なくなったような気持ちだけど。
 やっぱりちょっとまだよく分からないな。

「ちょ、ちょっと待った! ジャンヌ、アッキーって何!?」

 あぁ、違ったところにめんどくさいのがあった。
 そしてそれに火をくべるのが水鏡だ。

「ふん、わたしとアッキーの間にはあんたには知りえない秘密があるの」

 水鏡が得意げに胸を反らす。
 いや、なんでそこ張り合うの? そういうキャラだっけ?

「むー! ジャンヌずるい! そんな秘密をこんな奴に漏らすなんて!」

「いや、それは……」

 まさか本名ですとは言えない。いや、本名でもないのか。
 どうする。隠すか。あるいはごまかすか。

「何? それ以上隠し事するならジャンヌを殺してあたしも死ぬ」

 いや、ダメだ。これ本気でやる目だ。
 それを感じ取ったのか、水鏡も口を挟めないでいる。

 ええい、火だねだけ投下して静観するんじゃない。
 こうなったらしょうがない。

「な、名前だよ。通称」

「通称? ってことは……ジャンヌ・アッキー・ダルク…………ゴロが悪い!」

 そりゃそうだ。
 だって嘘だもん。

「そ、そう。だからあんまり名乗らなかったんだ。ちょっと恥ずかしいし」

「ふーーーーーーん。ま、いっか。話してくれたし。それにアッキーって男っぽいし。やっぱジャンヌはジャンヌだね」

 うわっ意外と鋭い。本能か。

 水鏡が口を押えてるけど目が笑っているのが見える。
 こいつ……いきなり感情豊かになりやがって。

「ん、何? まさかまだ隠し事してる?」

「してないしてない! それより何か外が騒がしいなー。何かあるのかなー?」

 話題を避けるための方便だったが、実はさっきから気になっていた。
 人の話し声というか、ざわめきが聞こえてくる気がする。

「あ、ちょっと今は――」

 水鏡の制止を聞く前に、玄関のドアを開けていた。
 その瞬間――

「おお、出たぞ!」「ジャンヌ様だ、本物だ!」「あれが水鏡様とオムカ一の猛将が争ったという……」「さすがの美しさだ」「ジャンヌ様、こっち向いてー」「きゃー! 目が合った! どうしよう……」「いや、美しさだけじゃない。エイン軍10万を一睨みで退散させたとか……」「俺はビンゴの将軍を策で100人討ち取ったと聞いたぞ!」

 え、なにこの盛り上がり。

 宿舎は街の一角にあり、それなりに人通りのある通りに面していた。
 一応、通りと区別するための門があるわけだが、その門にへばりつくように人だかりができている。さらに向かいの建物から身を乗り出す人もいたし、屋根に登っている人もいた。
 老若男女関係なく集まった人々の視線が俺に注がれている。

 視線に酔うというか、そういったものを通り越してさすがにこれは気分が悪くなるレベル。

 一体この群衆はどうしたことか。
 いや、ざわめきの内容を聞く限り予測はできるけど、その原因が分からない。

「昨日のでアッキーも有名になったから」

 俺の後を追って水鏡が顔を出す。すると、さらに群衆が湧いた。

「おお、水鏡様だ!」「オムカの猛将もいるぞ!」「ああ、昨日見れなかったから感激だ!」「いや、闘技場の三女神が揃い踏みとは、眼福眼福」「いやー、尊い! 私、この光景二度と忘れない!」

 うん、軽く引くわ。この盛り上がりに。
 てかやっぱり意味が分からない。

「なんで俺が? 何もしてないぞ?」

「美女2人が争った美少女ってことで噂になってるわけ。自分で美女とか言うのもなんだけど。それにドレス姿のあんたを見た人が更に尾ひれをつけたんでしょ」

「なんだそりゃ……」

「わっはー、こりゃ凄い。はーい、ニーアでーす。よろしくー」

 頭を抱える俺の横で、ニーアがぶんぶん手を振って歓声にこたえてる。
 昨日も思ったけど、本当こいつ大物だよな。

「どうする、ジャンヌ? 歌でも歌っとく?」

「全力で勘弁してくれ」

 ちやほやされることが嫌とか、夢見たことはないわけではないが、これはさすがに度を越しているレベルだ。
 何かの呪い? いや、スキル?

 そこまで考えた時、そういえば俺のパラメータの中で知力の次に高かったのが魅力だよな、と思い返す。

 もしかしてそれか? そのせいなのか?

 魅力なんてパラメータ、シミュレーションゲームでは戦闘に役に立たないし、内政でも副次的にしか効果を持たない微妙スキルだから軽視してたけど……。
 これはこれで、その影響度合いを考えないといけないかもしれない。

 いや、ただ単にこの国の人間がお祭り好きでテンション高いだけかもしれないけど。

 とりあえず今はもう、どうにでもなれ。
 最近そう思うことが多くなってきた気がしてさらに気が滅入った。
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