知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第2章 南郡平定戦

閑話13 マツナガ(ドスガ王国 宰相)

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 ――話は10日以上前にさかのぼる。

 重苦しい音を響かせて、高さ3メートルほどはある重厚なドアがゆっくりと開く。
 さてさて、ここの王様はいったいどんな反応を見せるんでしょうか。

 スーン王は物分かりの良い人でしたからね。あれほどの領土欲は南郡一と言ってもよいでしょう。
 ドスガ大王の釈放は二つ返事で承諾してくれましたし、念のため『トロイの木馬ドーリオス・イッポス』も仕込んでおきましたし、問題ないはず。

 ふふっ、元はそちらから仕掛けてきたというのに。
 王族というのはどこまでも自分勝手なのですね。

 ドアが開ききる。
 王の待つ玉座の間。
 そこにはずらりと並んだ廷臣たちだけでなく、槍と盾を持った甲冑姿の兵士たちの姿もある。それがドアから玉座の間にずらりと左右に並んでいるのだから、その圧となるや相当のものだ。

 これだけで明らかに歓迎されていないのが分かる。

 こちらは丸腰。しかもそもそも武闘派ではないから、何か不始末があれば私の命は紙屑のように切り裂かれるでしょう。

 ま、それも仕方ないですね。
 ドスガ大王がこの王族をことごとく殺してしまったのですから。
 交易権を王室の独占から開放するよう説得しているところでしたのに、大王のこらえ性のなさには困ったものです。

 はて、そうなると私はこれから誰を相手にするのでしょう?
 王族は全て死んだのならば、この玉座を抱く者はいないということになりますし。

 むむ、これは失策ですね。
 さすがの私もあの敗戦に動揺しているようです。

 しかしここで引き下がっては、私の野望が叶わなくなる。

 そう、野望。
 思えば、変わったものです。

 前の世界にいる時には、野望なんて言葉が頭によぎることもない、平和な生活をしていたのに。
 いえ、そんなことを考える暇がないほど忙しい毎日でした。

 朝起きて新聞配達のバイト。
 学校が終わればファミレスでバイト。
 夜は年をごまかしてちょっと大人なバーでバイト。
 そして家に帰れば内職のバイト。

 その繰り返し。

 学校は疲れた体を休める、寝るための場所でしかなかった。

 それもこれも素晴らしい両親のおかげ。
 友人の保証人になって、数千万の借金を残して消えた心優しい父親。
 消えた父親と借金の額に心を病み、宗教のセミナーにハマって今や壁の向こうで過ごしている信心深い母親。

 本当に素晴らしい。

 私に勤労の尊さと、お金の大切さと、世界の真理を身をもって教えてくれた尊敬すべき両親。

『騙されるのが悪い』

 そう、騙した方が勝者なのです。
 騙した方が悪いなんてのは、騙された側の負け犬の遠吠え。
 どんなに叫ぼうが、騙された者の心の傷は癒えないし、取られたお金は戻ってこない。

 だからこそ、私は騙す方になった。

 もともと才能があったんでしょう。
 20になる前には、年商数億の稼ぎ頭になっていたのですから。借金なんて一括返済してもおつりが出るほどの収入です。

 ただ――少し無理をしすぎたんでしょう。
 いざこざに巻き込まれてこんな世界に来てしまいました。

 それでも、この世界は面白い。
 人々の悪意と敵意と害意と殺意が渦巻くこの世界。
 騙す騙されるのは日常茶飯事。
 勝てばすべてが約走される弱肉強食の世界。

 あぁ、素晴らしい。
 そして何よりこのスキル。
 この世界に、何より自分にマッチしている、しすぎている。

 これほど切った張ったの殺伐とした世界でありながら、この世界の人間は驚くほどに頭の巡りが悪い。
 いえ、どちらかといえば元の世界の教育水準が高すぎたのかもしれません。無駄な知恵ばかりつけて、どんどん騙しにくくなってるわけですから。

 その分、この世界はとても気持ちい。
 騙されようが、それは騙された方が悪いという教育が徹底されているのもグッドです。

 だがそこに現れた、私の教唆きょうさを破る敵。

 ジャンヌ・ダルク。

 本当なら今頃ワーンス王国も下して、南郡から中原に出る準備をしていたはずなのに。

 いいでしょう。
 そちらが私を遮るのであれば、私は全身全霊をもってそれを食い破る方策を考えましょう。

 この訪問もその一手。

 だからこそ、こんな露骨な脅しになんか屈していられません。武威に屈して逃げたとあっては、縦横家じゅうおうかを称する私にとっては恥辱千万ちじょくせんばんに値すること。
 だから腹に力を入れて、足取りを軽く兵たちの間を進む。

 なに。こんなもの、レッドカーペットだと思えば……あまり想像できませんね。

 ただその突飛な発想が思いのほかよかったようで、

「ふふっ」

 笑った。
 この死地にもかかわらず。
 思わず笑ってしまった。

「な、なにがおかしい?」

 奥から苛立ちを込めた声が響く。
 こうも武力をほのめかさないと、使者にも会えない張り子の虎が。

 そう、誰であろうと関係ないではないですか。
 私のやることは単純明快。
 ドスガ大王の釈放と、南郡の安定。
 そして……。

 ここが終わればワーンスです。
 それですべてが終わる――いえ、すべてが始まるのです。

 私作曲、私プレゼンツ。
 破滅の輪舞ロンドを踊るのはオムカのジャンヌ・ダルク。

 まずは一本取られましたが、今度はどうでしょう。
 さぁさぁ、知恵比べの始まりですよ。
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