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第2章 南郡平定戦
第74話 後始末
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後始末記を少々。
ドスガ王都陥落、マツナガ宰相の降伏、ドスガ王の自害、四天王の全滅。
それらによる混乱は思ったより少なかった。
それだけドスガ王から民心が離れていたということだろう。
もちろん軍に一部、王の熱烈な支持派はいた。だが四天王がいないこと、武器蔵などは抑えられていることから大規模な行動に移れず、内通や密告により次々と捕らえられた。
連合軍も略奪や無法を働くこともなく、また祝勝の祝いもなく翌日には解散した。
マリアがドスガ王の喪を理由に、そういったことをすべて禁じたからだ。
後から論功行賞を行うことになったが、それほど大きな問題にはならないだろう。
そもそも今回の戦争が、ドスガ王からの南郡の支配解放という南郡諸国の意思の上に乗ったものだからだ。
俺たちオムカ王国は女王を奪還し、南郡諸国はドスガ王国の支配からの脱却を願った。
その利害の一致で、まずその第一目標が果たされたから、論功行賞は二の次といってもいい。
ただ問題点は2つあった。
1つは、時間がない戴冠式について。
2つは、ドスガ王国の今後について。
戴冠式までついに2週間を切った。
いや、これでもギリギリのところで女王を奪還できたのだからかなり良い方だろう。
それでもやることは山積みだ。
とりあえずマリアを速攻でオムカ王都に送り返した。
サカキら軍の大半もついていったから身の上は問題はないだろう。
それ以上に問題なのが、カルキュールだった。
政治的決定権と人脈の広さ、あとはなんだかんだで仕事の速さを持っていた彼の離脱が痛い。
だが後日に分かったことだが、彼の執務室には引継ぎ資料が山のようにあり、それをこなすだけで何とか準備は間に合った。引退を本気で考えていたことと、あるいはこうなることを予見してのことなのだろう。
全く、最後まで敵わないな、あのおっさんには。
ま、こうして無事にマリアを奪還できたのだから、文句は言われないだろうけど。
ちなみに水鏡もオムカに戻り、手伝ってくれた。
『後で見返り頂戴ね。シータ王国の兵に王都への通行手形と1年の飲食無料券とジャンヌを好き放題できる権利とか』
こっちもまったくもって頭が上がらない。
さすがに1年の飲食無料は無理――というか最後のは絶対拒否する――だけど、何らかの形で報いるべきだろう。
そして月が変わるころ、各国から次々と使者が来た。
シータ王国からは水鏡がいる。
ビンゴ王国からは王族の1人が。
ワーンス王国は王が直々に。
トロン王国は王族がいないので、宰相が代理として。
スーン王国は色々国内でごたついているらしく、王位継承権の低い第9子を送ってきた。
フィルフ王国は王が病のために王子が。後日、お見舞いの使者を送った。
――そしてドスガ王国。
そこからは誰も来ない。
いや、来れない。
というよりドスガ王国というのがなくなった。
そのために俺の出立は遅れに遅れたのだ。
王には後継者がいなかった。
そこが問題をややこしくした。
だから宮廷内では跡目争いが勃発し、王の甥やら叔父やらを立てた派閥争いが勃発した。
さらにそれに対して一般の民衆から反発があり、王国制度の解体を求めるデモが行われ、王宮を守る兵士と衝突した。
軍部を掌握している俺たちとしてはどちらを擁護するわけにはいかず、なんとか仲裁に奔走することになった。
なんとか王族を擁する宮廷派と一般の代表の民衆派の会談までセッティングしたが、それをマツナガは蚊帳の外から静観していやがった。
『いやぁ、大変そうですねぇ』
なんで他人事なんだよ、本当最低だ。
だから俺は全てマツナガに押し付けて帰国した。
少し不安だったが、俺も戴冠式に参加しないといけないし、もうオムカの臣なのだからそれくらいやれと言ってやったら、
『ええ、オムカ王国に――なにより君には決して損はさせませんよ』
なんて不敵に笑ったのが怖かった。
結論から言うと、とんでもないことになった。
俺たちがオムカ王都で戴冠式を行っている間に、民衆が蜂起。各地で王都から派遣された役人を追放または殺害した。
それに慌てたのは王宮で派閥争いをしていた特権階級だ。すぐに鎮圧を軍部に命じたが、それを統括しているマツナガはのらりくらりと返事を遅らせ、最終的には拒否。
それに勢いを得た王都の民衆は、王宮へ乱入。
そこではじめてマツナガが動く。
結論としては、民衆派の勝利。
王族は全て平民に落とされるか追放されるかして、さらに一部は帝国に亡命したり行方不明になったらしい。
そしてこの世界で初となる民主国家が成立した。
とはいえまだ体制の整ったばかりの雛のような不安定。
だからドスガ王国――いや、ドスガ民主国はオムカに後見を依頼した。
マリア女王の初仕事はその受諾処理だった。
それによりドスガ民主国はオムカの支配下に入ったと言っても良い。
その間、わずか1カ月も経っていない。
年が改まる前にすべてが終わっていた。
おそらくマツナガが裏で色々暗躍したんだろう。
ただその鮮やかで陰惨なやり口は、俺には絶対真似できないし、進んで真似しようとは思わない。
そんな成果を引っ提げて、年末にオムカ王都に凱旋したマツナガは、もう1つの争点となる。
「こ、こいつを宰相にするだって!?」
サカキの困惑した声が室内に響く。
王宮にある広くもない会議室。参加者は俺、ハワード、ジル、サカキ、ブリーダ、そしてメルの国の運営に携わる人たちに加え、当事者のマツナガの7人。
「こいつのせいで女王様が捕まり、宰相が殺され、ジーンたちも死にかけたんだろ!?」
「けどマツナガのせいだけじゃない。それに、それは俺だって同じだ。俺のせいで何人もの人が死んでる」
「そんな変なこと言うなよジャンヌちゃん。ジャンヌちゃんは味方で、こいつは敵だ」
「今はもう味方だよ、サカキ」
「いや、だからそういうわけじゃ……」
「それより、最後に主君を裏切ったって方が問題っすよ。そんな簡単に裏切る奴、信用できないっすね」
ブリーダの指摘に、サカキがその通りだとばかりに指を鳴らす。
「それについては、俺が見張る」
「また仕事を抱え込むつもりっすか? そうやってまた爆発すると?」
「それは……申し訳ない」
「別に謝ってほしいわけじゃないっすよ。軍師殿に仕事が集中したのは俺たちの力が足りないところもあったわけっすし。だからもうちょっと俺たちにも仕事くれっす。こいつが変なことしないか見張るくらい、自分たちにもできるっすからね」
「……ありがとう、ブリーダ」
「お安い御用っす」
反対かと思いきや賛成寄りのブリーダの意見に、サカキは不満そうな顔でジルに話を振った。
「おい、ジーン。お前も当事者だろ。なんか言え」
ジルは今まで目を瞑ってじっとしていた。
反応がないが、寝ているわけではないようだ。
やがてジルは目を開け、一言呟いた。
「私は…………賛成だ」
「なんだって!?」
「ジャンヌ様に以前申し上げたことがある。手を汚す仕事をさせる者を見つけるべきだと。今、ジャンヌ様に仕事が偏りすぎている。それをどうにかしなければならない」
「それがあいつだって言うのか? そんなもん他の奴にやらせりゃいいだろ」
「いや、任せる仕事はかなり厳しい。誰にでもできるようなものではない。人を陥れても、苦しめても、追い詰めても平気な者しかできない仕事だ」
「それが、こいつだと?」
「ああ。お前もドスガ王国……いや、ドスガ民主国か。その手際を見ただろ。私も個人的には好きになれない。殺したいとも思う。だがそれは私事だ。国事の前に私事は意味を成さない」
「そうだ、ジルの言う通りだ。俺たちは聖人君子を登用したいわけじゃない。宰相としての才能が欲しいんだ。だから前歴がどうとか、人間性がどうとかは関係ない。それに、今は少しでも有能な人間は欲しい」
俺の言葉にサカキは黙ってしまった。
ほぼ決定の空気。
だが最後に聞いておきたい人がいる。
「メルは、それでいいか?」
メルはカルキュールに懐いていた。
そのカルキュールを殺したドスガの人間に好感情を抱いていないのは、その雰囲気で分かる。
「これは独り言ですが」
メルは少し黙った後、そう切り出した。
「宰相殿が亡くなったのはとても悲しいです。でも、宰相殿は常に言っておられました。仕事は誰とやるかも重要だが一番大切なのは何をするかだ。お主はもう少し力を抜いくがよい、と。だから、私は構いません。宰相殿の言う通り、誰とでもやってみせます」
その言葉に誰もが黙りこくってしまった。
もう反論しようとしない。
「決まりだのぅ。宰相の葬儀を終えた後、マツナガを新宰相を立てる」
ハワードの一声ですべてが決まり、それが散会の合図だった。
「あんま歓迎されてなさそうですねぇ……」
散会後、会議室に残ったマツナガがそうこぼす。
部屋にいるのは俺だけだ。だから少し砕けた姿勢になる。
「自分がやったことを考えろ」
「ひどいですねぇ、君は。わたしだって君と同じ。この世界で生き残るために精いっぱい戦っただけだっていうのに」
「だから許してるだろ。それとも要らないお世話だったか? 死刑にすることはできないが、お前を殺したい奴はたくさんいる。お前を放逐すれば、そいつらは喜んでお前の首を刎ねに来るぞ」
「おお、怖い怖い。ま、いいでしょう。精いっぱい働かせてもらいますよ」
「俺たちが勝ち続ける間は、だろ。また旗色が悪くなったら寝返るつもりだ。俺か、マリアの首を手土産に」
「さっすが。よくわかってらっしゃる。だから負けないでくださいよ?」
「お前が手を抜かなきゃな」
「ふふ、まぁ精々頑張りましょう。わたしだって死にたいわけじゃないですからね」
というわけで南郡の仕置きが終わり、戴冠式も終わり、新しい宰相が決まった。
一応順風に進んだのだが、なんだろう、この徒労感。
いや、それもこれもあの戴冠式での出来事だ。
あの男との出会いが、新たな争いの火種となった。
そう思うと心が休まらない。それゆえの徒労感なのだろう。
すべては戴冠式の日にさかのぼる。
ドスガ王都陥落、マツナガ宰相の降伏、ドスガ王の自害、四天王の全滅。
それらによる混乱は思ったより少なかった。
それだけドスガ王から民心が離れていたということだろう。
もちろん軍に一部、王の熱烈な支持派はいた。だが四天王がいないこと、武器蔵などは抑えられていることから大規模な行動に移れず、内通や密告により次々と捕らえられた。
連合軍も略奪や無法を働くこともなく、また祝勝の祝いもなく翌日には解散した。
マリアがドスガ王の喪を理由に、そういったことをすべて禁じたからだ。
後から論功行賞を行うことになったが、それほど大きな問題にはならないだろう。
そもそも今回の戦争が、ドスガ王からの南郡の支配解放という南郡諸国の意思の上に乗ったものだからだ。
俺たちオムカ王国は女王を奪還し、南郡諸国はドスガ王国の支配からの脱却を願った。
その利害の一致で、まずその第一目標が果たされたから、論功行賞は二の次といってもいい。
ただ問題点は2つあった。
1つは、時間がない戴冠式について。
2つは、ドスガ王国の今後について。
戴冠式までついに2週間を切った。
いや、これでもギリギリのところで女王を奪還できたのだからかなり良い方だろう。
それでもやることは山積みだ。
とりあえずマリアを速攻でオムカ王都に送り返した。
サカキら軍の大半もついていったから身の上は問題はないだろう。
それ以上に問題なのが、カルキュールだった。
政治的決定権と人脈の広さ、あとはなんだかんだで仕事の速さを持っていた彼の離脱が痛い。
だが後日に分かったことだが、彼の執務室には引継ぎ資料が山のようにあり、それをこなすだけで何とか準備は間に合った。引退を本気で考えていたことと、あるいはこうなることを予見してのことなのだろう。
全く、最後まで敵わないな、あのおっさんには。
ま、こうして無事にマリアを奪還できたのだから、文句は言われないだろうけど。
ちなみに水鏡もオムカに戻り、手伝ってくれた。
『後で見返り頂戴ね。シータ王国の兵に王都への通行手形と1年の飲食無料券とジャンヌを好き放題できる権利とか』
こっちもまったくもって頭が上がらない。
さすがに1年の飲食無料は無理――というか最後のは絶対拒否する――だけど、何らかの形で報いるべきだろう。
そして月が変わるころ、各国から次々と使者が来た。
シータ王国からは水鏡がいる。
ビンゴ王国からは王族の1人が。
ワーンス王国は王が直々に。
トロン王国は王族がいないので、宰相が代理として。
スーン王国は色々国内でごたついているらしく、王位継承権の低い第9子を送ってきた。
フィルフ王国は王が病のために王子が。後日、お見舞いの使者を送った。
――そしてドスガ王国。
そこからは誰も来ない。
いや、来れない。
というよりドスガ王国というのがなくなった。
そのために俺の出立は遅れに遅れたのだ。
王には後継者がいなかった。
そこが問題をややこしくした。
だから宮廷内では跡目争いが勃発し、王の甥やら叔父やらを立てた派閥争いが勃発した。
さらにそれに対して一般の民衆から反発があり、王国制度の解体を求めるデモが行われ、王宮を守る兵士と衝突した。
軍部を掌握している俺たちとしてはどちらを擁護するわけにはいかず、なんとか仲裁に奔走することになった。
なんとか王族を擁する宮廷派と一般の代表の民衆派の会談までセッティングしたが、それをマツナガは蚊帳の外から静観していやがった。
『いやぁ、大変そうですねぇ』
なんで他人事なんだよ、本当最低だ。
だから俺は全てマツナガに押し付けて帰国した。
少し不安だったが、俺も戴冠式に参加しないといけないし、もうオムカの臣なのだからそれくらいやれと言ってやったら、
『ええ、オムカ王国に――なにより君には決して損はさせませんよ』
なんて不敵に笑ったのが怖かった。
結論から言うと、とんでもないことになった。
俺たちがオムカ王都で戴冠式を行っている間に、民衆が蜂起。各地で王都から派遣された役人を追放または殺害した。
それに慌てたのは王宮で派閥争いをしていた特権階級だ。すぐに鎮圧を軍部に命じたが、それを統括しているマツナガはのらりくらりと返事を遅らせ、最終的には拒否。
それに勢いを得た王都の民衆は、王宮へ乱入。
そこではじめてマツナガが動く。
結論としては、民衆派の勝利。
王族は全て平民に落とされるか追放されるかして、さらに一部は帝国に亡命したり行方不明になったらしい。
そしてこの世界で初となる民主国家が成立した。
とはいえまだ体制の整ったばかりの雛のような不安定。
だからドスガ王国――いや、ドスガ民主国はオムカに後見を依頼した。
マリア女王の初仕事はその受諾処理だった。
それによりドスガ民主国はオムカの支配下に入ったと言っても良い。
その間、わずか1カ月も経っていない。
年が改まる前にすべてが終わっていた。
おそらくマツナガが裏で色々暗躍したんだろう。
ただその鮮やかで陰惨なやり口は、俺には絶対真似できないし、進んで真似しようとは思わない。
そんな成果を引っ提げて、年末にオムカ王都に凱旋したマツナガは、もう1つの争点となる。
「こ、こいつを宰相にするだって!?」
サカキの困惑した声が室内に響く。
王宮にある広くもない会議室。参加者は俺、ハワード、ジル、サカキ、ブリーダ、そしてメルの国の運営に携わる人たちに加え、当事者のマツナガの7人。
「こいつのせいで女王様が捕まり、宰相が殺され、ジーンたちも死にかけたんだろ!?」
「けどマツナガのせいだけじゃない。それに、それは俺だって同じだ。俺のせいで何人もの人が死んでる」
「そんな変なこと言うなよジャンヌちゃん。ジャンヌちゃんは味方で、こいつは敵だ」
「今はもう味方だよ、サカキ」
「いや、だからそういうわけじゃ……」
「それより、最後に主君を裏切ったって方が問題っすよ。そんな簡単に裏切る奴、信用できないっすね」
ブリーダの指摘に、サカキがその通りだとばかりに指を鳴らす。
「それについては、俺が見張る」
「また仕事を抱え込むつもりっすか? そうやってまた爆発すると?」
「それは……申し訳ない」
「別に謝ってほしいわけじゃないっすよ。軍師殿に仕事が集中したのは俺たちの力が足りないところもあったわけっすし。だからもうちょっと俺たちにも仕事くれっす。こいつが変なことしないか見張るくらい、自分たちにもできるっすからね」
「……ありがとう、ブリーダ」
「お安い御用っす」
反対かと思いきや賛成寄りのブリーダの意見に、サカキは不満そうな顔でジルに話を振った。
「おい、ジーン。お前も当事者だろ。なんか言え」
ジルは今まで目を瞑ってじっとしていた。
反応がないが、寝ているわけではないようだ。
やがてジルは目を開け、一言呟いた。
「私は…………賛成だ」
「なんだって!?」
「ジャンヌ様に以前申し上げたことがある。手を汚す仕事をさせる者を見つけるべきだと。今、ジャンヌ様に仕事が偏りすぎている。それをどうにかしなければならない」
「それがあいつだって言うのか? そんなもん他の奴にやらせりゃいいだろ」
「いや、任せる仕事はかなり厳しい。誰にでもできるようなものではない。人を陥れても、苦しめても、追い詰めても平気な者しかできない仕事だ」
「それが、こいつだと?」
「ああ。お前もドスガ王国……いや、ドスガ民主国か。その手際を見ただろ。私も個人的には好きになれない。殺したいとも思う。だがそれは私事だ。国事の前に私事は意味を成さない」
「そうだ、ジルの言う通りだ。俺たちは聖人君子を登用したいわけじゃない。宰相としての才能が欲しいんだ。だから前歴がどうとか、人間性がどうとかは関係ない。それに、今は少しでも有能な人間は欲しい」
俺の言葉にサカキは黙ってしまった。
ほぼ決定の空気。
だが最後に聞いておきたい人がいる。
「メルは、それでいいか?」
メルはカルキュールに懐いていた。
そのカルキュールを殺したドスガの人間に好感情を抱いていないのは、その雰囲気で分かる。
「これは独り言ですが」
メルは少し黙った後、そう切り出した。
「宰相殿が亡くなったのはとても悲しいです。でも、宰相殿は常に言っておられました。仕事は誰とやるかも重要だが一番大切なのは何をするかだ。お主はもう少し力を抜いくがよい、と。だから、私は構いません。宰相殿の言う通り、誰とでもやってみせます」
その言葉に誰もが黙りこくってしまった。
もう反論しようとしない。
「決まりだのぅ。宰相の葬儀を終えた後、マツナガを新宰相を立てる」
ハワードの一声ですべてが決まり、それが散会の合図だった。
「あんま歓迎されてなさそうですねぇ……」
散会後、会議室に残ったマツナガがそうこぼす。
部屋にいるのは俺だけだ。だから少し砕けた姿勢になる。
「自分がやったことを考えろ」
「ひどいですねぇ、君は。わたしだって君と同じ。この世界で生き残るために精いっぱい戦っただけだっていうのに」
「だから許してるだろ。それとも要らないお世話だったか? 死刑にすることはできないが、お前を殺したい奴はたくさんいる。お前を放逐すれば、そいつらは喜んでお前の首を刎ねに来るぞ」
「おお、怖い怖い。ま、いいでしょう。精いっぱい働かせてもらいますよ」
「俺たちが勝ち続ける間は、だろ。また旗色が悪くなったら寝返るつもりだ。俺か、マリアの首を手土産に」
「さっすが。よくわかってらっしゃる。だから負けないでくださいよ?」
「お前が手を抜かなきゃな」
「ふふ、まぁ精々頑張りましょう。わたしだって死にたいわけじゃないですからね」
というわけで南郡の仕置きが終わり、戴冠式も終わり、新しい宰相が決まった。
一応順風に進んだのだが、なんだろう、この徒労感。
いや、それもこれもあの戴冠式での出来事だ。
あの男との出会いが、新たな争いの火種となった。
そう思うと心が休まらない。それゆえの徒労感なのだろう。
すべては戴冠式の日にさかのぼる。
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