知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

第6話 3国合同大運動会

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「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 走る。
 息が辛い。

 それでも走らなければ捕まってしまう。
 その思いが足を前へ運ばせる。

「くそ、なんでこんなのに!」

 もともと体力はないのだ。
 こういう時が何回もあったのに、全然トレーニングとかしなかった。やろうやろうと言ってはや1年。本当に呆れる。

『あー、テステス。ただいま音響メガホンのテスト中。メガホンのテスト中~』

 王宮から実況の声が響く。
 九神くかみめ。またよく分からないものを!

『さぁ、盛り上がってまいりました! ビンゴ、シータ、オムカ3国による大運動会! 実況はわたくし、生まれはシータ王国なれど、口から生み出された実況の申し子、公威こういがお送りしまぁす! いやー、しかしこのメガホンという新設備。まったくもって素晴らしい』

『海外から流れてきた蒸気機関というシステムを利用した拡声器ですね。試作品でちょっと大きいのが難点ですが、こういった行事にはもってこいでしょう』

『ええ、その通りです九神様。しかし、わたくしの声がこうも王都バーベルに響き渡ることになるとは。わたくしの声、それすなわちまさしくわたくしの分身! これはもう感無量、人生に悔いなしということです!』

 ええい、うっとおしい!
 この実況の声を聴くと、シータ王国でのあの恥ずかしい思い出がよみがえる。

『さて、この大運動会。赤、青、黄のチームに所属国関係なく振り分けられたということですが、これは各国の融和を目指すためというのは本当でしょうか? オムカ王国の女王陛下』

『うむ! みんな仲良しが良いのじゃ! 国や身分を超えて一緒に頑張ることこそ、仲良くなる秘訣なのじゃ!』

 マリアめ。暢気のんきなこと言いやがって。

『なるほど! それでは第一種目のおさらいをしましょう。第一種目は“鬼ごっこ”。これは女王陛下たっての希望ということですが?』

『うむ! 前にオムカでやって大好評だったのじゃ! 各チームで鬼――逃げる役を決め、それを他のチームが捕まえるというチーム戦仕様に大改造したのじゃ!』

『なるほど! そしてその鬼が最後まで残ったチームの勝ちということですね!』

 あいつ……後で説教だな。
 はぁ、というかちょっと休憩だ。

 辺りを見回す。
 場所はオムカ王都。だから勝手知ったる我が庭なのだが……。

『しかしフィールドはオムカ王都。これはオムカ所属に有利なのではと憶測が流れましたが……』

『その心配はなしじゃ! この日のために、王都の通路を簡単に開け閉めできるドアで行き止まりになるよう色々改造したのじゃ。しかも各国の代表がそれに立ち会ったから不公平は減ってるはずなのじゃ!』

 ニーアが何やら色々発注してると思ったら……無駄遣いしてんじゃねぇよ。

『ルールの公平化、さすがでございます! それではここで、この第一種目の注目選手を見ていきましょう。九神様、よろしくお願いします!』

『そうですね。やはり我が国の淡英たんえいを推したいですね。あいつはいいですよー? 頭は悪いけど、こういう体を使った競技には光るものがあります。野生の勘も持ってますしね。それと水鏡。彼女はなんだかんだで身体能力高いですからね。しかも王都には川が流れている場所がある。水辺の彼女は最強ですよ』

『なるほど、となると彼らの所属するチームが有利だと!?』

『いや、そうはいかないのが混合チーム戦の難しいところですね。オムカ王国にはジーン殿、サカキ殿という双璧の師団長。さらに騎馬隊のブリーダ殿に、水鏡と互角の戦いを繰り広げた闘技場の三女神のニーア殿もおられる。さらにビンゴ王国の突撃隊長クリッド・グリード殿も侮れないと聞きます』

『うちのジャンヌはどうなのじゃ?』

『はっは、あれはダメですよ。体力がなさすぎです。まぁあの頭脳を使えば少しはもつと思いますが、やはり軍人が数多く出場するこの戦場ではすぐ捕まるでしょう』

『あっはは! そうじゃの。それはその通りじゃ!』

 笑ってんじゃねぇよ。
 てか九神。お前、ほんと国王かよ。暇なのか?

『なるほど。これはどのチームが勝つか予想ができませんね? あぁーと! ここで速報です! ジーン選手! ジーン選手が脱落です! なんとたった今注目選手として挙げられた、オムカの双璧。その一角が早くも崩れ去ったぁぁぁ!』

 マジか、ジルが!?
 くそ、何が起きてる。

 ……いや、今こそこれの出番だろ。
 こういう時に何が起こったのかをいち早く察知できるチートスキル。

「『古の魔導書エンシェントマジックブック』」

 ジル……ジル……違う。ジーンだ。本名を忘れるところだった。

「えっと……生い立ちとか経歴とかはどうでも……いや、ちょっと気になるな……いやいや! 今は何が起きたかだ。えっと、鬼として50人の追手から逃亡し、北部地域に潜伏。時期を見て味方の元へと合流しようとしたが、突如現れた何者かによって捕獲……って何も分からないぞ」

 とにかく今は休憩しながら動くしかない。
 一か所に留まっていてはそれこそ狙い撃ちされる。

 だから呼吸を整えると歩き出す。
 そして角を曲がったところで、

「いたぞ!」

「しまった!」

 見つかった。
 前の方から赤チームの面々が現れる。
 反対側に逃げ出す。

 だが相手の方が早い。
 身長が大きいから、歩幅でかなり不利だ。
 しかも体力がないこっちと違って、あちらは毎日鍛えている連中だ。

 負ける。
 俺も早々に離脱か。

 そう思った時、左手から声が聞こえた。

「こっちです、ジャンヌさん!」

 見れば青い鉢巻に懐かしの体育着を着た男たちが手を振っている。
 味方だ。

 そう、この大運動会。
 その名の通り運動会だからか、参加者全員に制服が配られた。
 というか体育着に鉢巻だった。どうせあの九神の入れ知恵だろう。くそ。再現度高いじゃないか。

 ただ20から40の屈強な男たちが、半そで短パンを着ているのだからある意味地獄絵図だったりする。女性もいるが、地獄の比率の方が高い。
 マジ何考えてんだろうな、あいつ。多分何も考えてないんだろう。

「すまん、頼む!」

「お任せを!」

 ただ勝負は勝負。
 シータ王国の水鏡のいる赤、ビンゴ王国の喜志田きしだのいる黄チームには負けたくない。だから味方に任せて逃げる。

『おぉっと! 見えました。あれは噂のジャンヌ・ダルク! 我が国では伝説となった闘技場の三女神の1人が超絶デッドヒートぉ! 体力がないとのことだが逃げ切れることができるのかぁ!?』

 うるさい、実況。弱点をばらすな。

「はっ……はっ……はっ……」

 とはいえもうこれ以上は辛い。
 もはや歩いているのとあまり変わらない速度だ。

 味方のおかげで追手は来ないみたいだし。
 速度を緩める。

『あぁ、なんと! 今入った情報によりますと、シータ王国の注目株、赤チームの淡英選手が捕まったぁぁ!』

『なんだって!?』

『これには九神様も絶句! んん? 少々お待ちください……な、なんと! 今年の正月にその淡英選手と壮絶なバトルを繰り広げた黄チームのニーア選手もアウトです! 一体何が起きているのか!?』

『なんじゃと!?』

『っと、情報が入ってきました。なんとニーア選手、自分が鬼だと忘れて相手を追い回していたところ、別のチームにすぐに掴まったとのこと。ルールをちゃんと理解していなかったようですね』

 馬鹿だ、馬鹿がいる。

『さぁ、分からなくなってきました、この第一種目“鬼ごっこ”! なお現在、この種目の勝利チームを当てようキャンペーンは終了しております』

 いや、マジ何が起きてる。
 ニーアはどうでもいいとして、あの淡英をガチで捕まえるとか、尋常じゃないぞ。実況の言う通り、何かが起きているのか。

「とりあえずヤバい。動かないと……」

 他の味方とも合流したい。それで落ち着いて考えをまとめるべきだ。てか最初のスタート地点がバラバラだったのが痛い。
 くそ、だからこんな体力勝負に俺を出すなってんだ。

「いたぞ! ジャンヌ・ダルクだ!」

「おお! 今こそ恨みを晴らすとき!」

 あぁ、もう! またかよ。
 てか恨みって、もしかしてビンゴ王国の人? ごめんね、過去の遺恨は忘れて仲よくしよう……なんてできるか!

「逃げる!」

 とはいえさっきまで本気ダッシュだったのだ。
 もはや逃げることさえおぼつかなく、さらには――

「行き止まり!?」

 最悪だ。
 ここは通れる場所だったのに、今や柵のようなものができて封鎖されている。
 しかもその柵、5メートルほどの高さがあり、かなり頑丈にできていそうで突破するのは不可能だろう。やたらと金具がついているのが気になるけど……。

「ふっふっふ、追い詰めたぞジャンヌ・ダルク。今こそ我がビンゴの積年の恨みを知れ!」

 あー、やっぱビンゴの人たちか。なんか殺気漂ってるなとは思った。
 てかこの状況、色々ヤバくね? 10人ばかりの屈強な男たちに追い詰められ、逃げ場はない。

「えーと、いや。この運動会ってどうやらそういた遺恨を忘れる場らしいぞ?」

「ふん、なに。勢いあまっての事故となればおとがめはあるまい!」

「えっと、俺って結構偉い人みたいだぞ?」

「身分などこの場では意味をなさないと言ったのはどっちだ!!」

「うぅ……おじさんたち、怖いです……」

「問答無用!」

 くそ、ウソ泣きまでバレるか!
 どうする。せめてこの柵が開けば――

 ……待て。

 そういえばさっきマリアはなんて言った?
 封鎖じゃない。開け閉めできる、だ。

 なら!

「ふはは! 柵に取り付いてどうしようというのだ! 貴様の細腕で壊せると思ったか!」

「そうじゃねーよ。だから柵は策なんだよ」

 柵にあったレバーを下げる。
 すると、これまでピクリとも動かなかった壁のような策が、その場だけクルッと回転した。忍び返しだ。
 マリアが通路の開け閉めと言ったからもしやと思ったが、ドンピシャだった。
 無駄に金具が使われていたのもこのためか。

「な、なんだとぉぉぉ!」

「それじゃあ、ばいばーい」

 はい、レバーを施錠施錠。
 これで向こうからは開けられない。

「くっ、待てジャンヌ・ダルクぅぅぅ!!」

「待てと言われて待つ人間はいないのだよ。バーイ偉い人」

 というわけで回り込まれないうちに逃走っと。

 いやー、危なかったけどこう上手く嵌められるとせいせいするな。
 まるで忍者のようにドロンと消えてみせるとか傑作だ。

 ……ん?

 何かが引っかかった。
 何だろう。

『なんとここで選手の脱落が次々と上がってまいります! ビンゴ王国のクリッド選手が脱落! さらにサカキ選手とブリーダ選手が相打ち! 水鏡選手も脱落! これは一気に勝負が決まるか!?』

 おいおい、これはマジで終わるんじゃないか?
 えっと、あと残ってる鬼は誰だ?

 たしか俺と、あとは……。

「ジャンヌ隊長」

 その時だ。
 呼ばれた。
 どこから?
 背後。
 振り返る。

「捕まえた」

 ポンッと肩を叩かれた。
 そこにいたのは――

「イッガー……」

「はい、そうです」

 あまり抑揚のない顔に、わずかにほころんだような色を見た気がした。
 それより目を奪われたのは、その鉢巻。
 黄色だ。
 ということは俺の敵。
 そして残った鬼は――

『おっと、青チームのジャンヌ・ダルクが捕まったぁ! 最後の最後まで粘ったのに残念。ここで競技終了ー! 最後まで残ったのは黄色チーム! ビンゴ王国のキシダ選手が逃げ延びたー! むしろ、圧倒的! 黄色チームのイッガー選手がことごとく鬼を捕まえるという快挙! これは種目のルールを上手く使った黄色チームを褒めるべきでしょう!』

「やりました」

 なんの達成感も見られない無感動な表情だったが、Vサインをするイッガー。

 いや、やりましたじゃねーよ。
 てかこいつ。そうか。気配がない。忍者みたいなやつだった。
 そりゃ死角から不意打ちされればジルも淡英も捕まるわな。

「あー、くそ。負けたかよ」

「ジャンヌ隊長でも悔しがるんですね」

「そりゃあな。軍師なんてものも、要は勝負事だし。てかあのやる気ない黄色チームの軍師に負けるのが我慢ならん」

「あー、確かに。あの人、表情変わらなくてよく分かんない人でした」

「お前、一度鏡見た方がいいぞ」

「え?」

 はぁ、まぁいいや。
 これはあくまでお遊び。
 本当の目的はこの後に控えているのだから。

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ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
まだまだお遊び回はありますが、その裏で進む作戦などもありますので、この後も読んでいただけると大変うれしいです。

また、いいねやお気に入りをいただけると励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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