知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
236 / 627
第3章 帝都潜入作戦

閑話16 玖門竜胆(フリーのプレイヤー)

しおりを挟む
 次の部屋は先ほどの部屋とは違って、何もないまっさらな部屋だった。
 最初の部屋と似てるけど、その広さは20メートル四方はありそう。

 その部屋の中央に怪しい黒いローブをまとった1人の人物がいた。

 おそらくそれが次の正義ジャスティスの相手!

「じゃあ私が――」

 クロエさんが名乗りを上げる。
 それを遮ったのは意外な人物だった。

「連戦は無理でしょ。だから、ここは私がやらせてもらうわ」

 マールさんだ。
 いつも大人しくて控えめな彼女にしては珍しいと思った。

『おやおや、いいのかな。この試練は2人まで参加が可能だよ。たぶん、1人じゃ厳しいからね』

「そう……じゃあもう1人」

「はいはーい! 俺、俺! 俺がやる!」

 ザインさんが熱烈に手を挙げてアピールしている。

 むむ……この感じ。
 ラブレーダーに感ありです。

 そのマールさんもザインさんに視線を向け、「そうね」とつぶやく。
 おお、これはもしや!

「リンドー、お願いできる?」

「おお、ラブゲッ……んん? 私です?」

「ええ、お願い」

「えっと……でも」

 ちらりとザインさんを見る。
 期待していた分、かなりしょげ返ってしまっているようで見るに堪えない。

 うーん、代わってあげたい。
 けど、なんだかそれも違う気がする。

「はっ! そうです、心を鬼に! それもまた正義ジャスティスです!」

「? よくわからないけどよろしくね」

「はい!」

 愛は障害があってこそ燃え上がるもの。
 そう漫画にも描いてありましたし!
 ここは私が障害となることこそ正義ジャスティスです。

『それじゃあ参加者以外は壁際の緑色の部分に行ってくれたまえ。そしてルールは簡単。そこにいる魔術師を倒せば君たちの勝利。逆に“時間までに倒せなければ”君たちの敗北、即死亡! アー・ユー・レディー?』

正義ジャスティス!」

 うん、思いのほか簡単そうで良かった!

『それでは、第二関門! バトル・スタート!』

「先手必勝、正義ジャスティスです! スキル『九紋竜くもんりゅう』! 第六もん! 閃竜せんりゅう!」

 木刀が来る。色は白。
 そしてその特性は――

「ハイパー・ジャスティス・ビーム!」

 振り下ろした木刀の先端から光が発射される。
 光の束は光速で空間を進み、魔術師に直撃――

「プロースクレセープロースクレセー……」

 何かが霧散した。
 魔術師じゃない。違うものに当たった。
 それは次々と床から現れてくるもの。何やら気持ち悪い液体のようなもの。

 いや、それを知っている。
 よくゲームとかに出てくるやつだ。

「スライム……」

 と思ったけど、本当かな。
 私が知ってるのはもっとまとまったもの。
 けどこれは黒いヘドロみたいなドロドロの水分が多いもので、正直、気持ち悪いし近づきたくもない。

 しかもそれが床のいたるところから湧き出るように出現してくる。

「リンドー! 左右で同時に行くわよ!」

「了解です!」

 マールさんの声に反応する。

 そうだ。見た目に惑わされちゃだめだ。
 敵はすぐそこにいるのだから。

九紋竜形態変化チェンジフォーム、第一もん! 火竜かりゅう!」

 相手がスライムなら焼き斬ったところで問題なし!
 というわけで突撃!
 私が右から、マールさんが左から魔術師に攻撃をしかける。
 途中にあるスライムがぐにょおっと身をもたげてくる。キモいから叩き斬った。

「もらったわ!」

正義ジャスティス!」

 たどり着いたのは同時。
 だが――

「いない!?」

 そこには魔術師の影も形もなかった。
 あるのはスライムのみ。

「プロースクレセープロースクレセー……」

 声。右。いた。10メートルほど離れた壁際にいつの間にかいる。

 なら!

九紋竜形態変化チェンジフォーム、第三もん! 風竜かざりゅう!」

 地面に木刀を当てる。
 すると風の力で飛ぶような加速を得ることができるのだ。

正義ジャスティス!」

 だが、充分な加速からの攻撃にもかかわらず、木刀は空を切った。
 再び魔術師の姿は影も形も消えていた。

「リンドー、あそこ!」

 マールさんの声。
 振り向くと、部屋の反対側の辺りに魔術師は立っていた。

 まさか……ワープした?
 そんなとんでもスキル……悪ですね!

 とはいえ――

「えっと……これどうするんです?」

 近づくとワープで逃げられる。
 その逃げた先を捕えようとしてもどこに出てくるか分からない。

 よく分からな過ぎて頭から煙が出てきそう。
 元から考えたりするのは苦手だった。

 だからとりあえず一旦落ち着くために、マールさんのところへ戻ることにした。

「近づけば消えて逃げる。その間にこの気持ち悪いのを呼び出す」

「これはスライムというのですよ」

「そ、そう……。このスライム。まったく強くないけど……もしかしてこれで時間稼ぎしてタイムオーバーを狙う気?」

「うぅ……そんなの正義ジャスティスじゃないです」

 けどどうすればいいのか分からない。
 今やスライムは床の半分以上まで増殖し、壁にも張り付いている。
 好奇心もあり、ちょっと失礼して踏んでみた。

「うわー、ぐにゃっていった……気持ち悪いー」

 思ったより弾力性がある。
 初期装備がブーツでよかった。
 普通のシューズとかだったら、足首からスライムが入り込んで大変な――

「ん?」

 違和感。
 粘り気のあるスライムから足を引っぺがすと、ブーツの表面が溶けてドロドロになっている。

 元からそうだったわけがない。
 スライムに触ったからそうなった、ということは……。

「こ、これ……ヤバさ正義ジャスティス級では!?」

 見ればマールさんの顔も青ざめている。

「タイムオーバーじゃなく、溶かして殺すってわけ……熱っ!」

 マールさんの肩にスライムが垂れたらしく、服が焦げている。
 見上げれば天井にもスライムが現れ、どろどろとした体を滴らせている。

「おい、ヤバいのか!? 早くあいつ倒せよ!」

「いやーザイン、無理じゃないかなーこれ。あの距離……自分が出ればよかったかなー」

 観戦中の皆からざわめきが起きる。
 皆は緑のバリヤーで守られているようで、スライムの被害は全く受けていない。

 受けてない……あれ、じゃああの魔術師は?

「マールさん、あれ。魔術師はダメージ受けてないんです?」

「それは……そうね。スライムのいないところに逃げて、私たちの周囲で発生させてるみたいね」

「むぅ……私たちのところばかり、卑怯です!」

「待って、リンドー。ということは……」

 マールさんが考え込む。
 その間もスライムが足元を侵食してきて気が気でない。

 こうなったら仕方ない。

「マールさん、いったん移動します」

「え……きゃ!」

 マールさんの腰に手を入れて、右手で風竜を振る。すると風が起こって、私たちを逆側、スライムがまだ少ない反対側に飛んだ。

「すごいのね。それ、なんか特別な力?」

「いえ、正義ジャスティスです!」

「そ、そう……えっと、なんだっけ。どこまで考えたんだっけ」

 再びマールさんは考えこんでしまった。
 自分はそういったことが得意じゃない。
 ただ、何が良くて何が悪い事か。それを考えることは得意だ。
 というより、両親にそう育てられた。

 他の何を間違ってもいい。
 けど、自分の中にある正義ジャスティスだけは間違っちゃいけないって。
 だからそのために、何が良くて何が悪いか考えるんだと。

 だから考える。
 先輩は私を救ってくれた大恩人。
 だから先輩を誘拐したニトーは悪!
 そしてその手先の魔術師も悪!

 もうそこまで考えればやることは簡単だ。

 まずやってみる。やってから考える。
 たとえそれで間違っても、きっと自分の正義ジャスティスは正しい方向を向いていれば、それは後悔にはならないはずだから!

 分からなくてもいい。
 間違っててもいい。
 それに考えることはマールさんがやってくれている。
 だから自分は得意なことをするだけ。

 とにかく動く!
 そして正義ジャスティス

 とりあえず、当たって砕けろ!

「行きます! 正義ジャスティス!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
剣と魔法が交差する世界——。 ある男女のもとに、一人の赤子が生まれた。 その名は、アスフィ・シーネット。 魔法の才能を持たなければ、生き残ることすら厳しい世界。 彼は運よく、その力を授かった。 だが、それは 攻撃魔法ではなく、回復魔法のみだった。 戦場では、剣を振るうことも、敵を討つこともできない。 ただ味方の傷を癒やし、戦いを見届けるだけの存在。 ——けれど、彼は知っている。 この世界が、どこへ向かうのかを。 いや、正しくは——「思い出しつつある」。 彼は今日も、傷を癒やす。 それが”何度目の選択”なのかを、知ることもなく。 ※これは第一部完結版です。

聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。 ――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる 『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。 俺と俺の暮らすこの国の未来には、 惨めな破滅が待ち構えているだろう。 これは、そんな運命を変えるために、 足掻き続ける俺たちの物語。

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

勇者をしている者なんですけど、キモデブ装甲のモブAにチェンジ魔法を使われて、身体が入れ替わった!? ありがとうモブA!やっと解放された!

くらげさん
ファンタジー
 雑草のように湧いてくる魔王の討伐を1000年のあいだ勇者としてこなしてきたら、キモデブ装甲のモブAに身体を取られてしまった。  モブAは「チェンジ魔法」のユニークスキル持ちだった。  勇者は勇者を辞めたかったから丁度良かったと、モブAに変わり、この姿でのんびり平和に暮らして行こうと思った。  さっそく家に帰り、妹に理由を話すと、あっさりと信じて、勇者は妹が見たかった景色を見せてやりたいと、1000年を取り戻すような旅に出掛けた。  勇者は勇者の名前を捨てて、モブオと名乗った。  最初の街で、一人のエルフに出会う。  そしてモブオはエルフが街の人たちを殺そうとしていると気付いた。  もう勇者じゃないモブオは気付いても、止めはしなかった。  モブオは自分たちに関係がないならどうでもいいと言って、エルフの魔王から二週間の猶予を貰った。  モブオは妹以外には興味なかったのである。  それから妹はエルフの魔王と仲良くなり、エルフと別れる夜には泣き止むのに一晩かかった。  魔王は勇者に殺される。それは確定している。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

処理中です...