知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

閑話18 ルック(オムカ王国ジャンヌ隊部隊長)

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 3つ目の部屋に来た。
 そこは木造の建物が並ぶ町だった。

 室内のはずなのに空。
 むき出しの地面と、乾燥した空気がどこか荒涼とした雰囲気をかもし出す。

「これは……西部劇ってことかな」

 イッガーさんが呟くのが聞こえた。

「セーブゲキ?」

「そういうジャンルの映画。いや、元はアメリカの……えっと、外国の街並み、かな」

「ふーん」

 あまり興味はなかった。
 そんなことより、ここの門番がどういうものかが気になる。

「おうおうおうおう。なんだよ。まだ誰も死んでねーじゃねぇか。クールだな」

 男の声。
 右手にある建物から、左右に開く扉を開けて1人の男が出てきた。
 薄い青色の長袖と長ズボンに茶色のチョッキのようなものを着た長身の男で、茶色のつば広帽子のようなものをかぶっている。帽子のおかげで目元は見えないが、煙草を咥えている様は、どこか無頼な雰囲気を感じさせる。

『えー、それじゃあ第三の関門のルールを――』

「おい、ニトー。あとはオレがやる」

 男は天からの声を遮ると、右手を振る。
 そこに現れたのは、小型の何か。
 銃? それにしては小さすぎる。

 男はそれをくるくると手元で回し、放り投げると体を一回転させて空中キャッチ。
 そしてその銃口らしきものをこちらに突き出し名乗った。

「俺の名はキッド。キッド・キャシディだ! イカした名前だろう?」

 男が自信満々に言い放つが、それがどうしたというのだろう。
 誰もがポカンとして男の反応を待つ。

「あぁん? てめぇら知らねぇのか? マジか? ワイルドバンチに明日はねぇってあんだろうが! 分かんだろ? ……あぁ? マジかよ。ちっ、しけた野郎どもだ。まぁいい。おいこんなかでガンマンはいるかい?」

「ガンマン、鉄砲使い……か」

 イッガーさんの言葉にハッとした。
 やはりあれは鉄砲だ。そしてこの男はその使い手ということ。

「はっ、通訳ありがとよ。で、いんのかいないのかい?」

「ガンマンだか鉄砲だろうか良く分からねーけど、ここは俺の出番だろ」

 ザインが意気揚々と前に出る。
 ダメだ。相手が鉄砲使いだとすると、ザインには荷が重すぎる。

「あーん? 剣吊ってるってことはてめぇ剣士だろ。そんなのとやっても面白くねーだろ。いいか? 銃は剣より強ぇんだ。近づく間もなくハチの巣DAZE!」

「あ? それどういう――ぐぉ! こら、ルック! 襟を引っ張るな!」

 ザインの抗議も無視して、自分が前に出る。

「そういうことだからー。ここは自分に任せてよ」

 背中に背負った弓を取り出す。
 相手が鉄砲だとすると、自分が出るのがここでは最適解。多分。

「はっ、弓。弓ねぇ。そんな時代遅れの武器で勝負になるかよ」

「別に、勝負なんてするつもりないですよー。ただ……弓を馬鹿にする無礼者をぶちのめすだけだから」

 どうしてそこまで弓にこだわるのか。
 自分でもよく分からない。
 けど自分に合っていたし、狩りで腕が上がっていくのも楽しかったし、何より弓を教えてくれた父が好きだった。今では弓が体の一部にも感じることがある。

 だから新しい兵器である鉄砲はしっくりこなかったし、進んで使おうとは思わなかった。
 それに、やっぱりこういう奴がいるからなんだよなー。
 弓は時代遅れとか。そういうの、ちょっとだけ、カチンと来るというか。

「……良い目だ。だがどこまでその意気込みが持つかな。見な!」

 そう言うと男は右手に持った小さな銃を構えると――撃った。
 1、2、3、4、5、6……それ以上は出ない。
 すべて自分の足元から10センチほど離れた地面を穿っている。

「っと、俺の銃は6発で弾切れだ。そしてこのシリンダーを回転させると――」

 再び男が銃を構えて――撃った。計6発。

「これだけで再び6発撃てる。それが俺のスキル『トリガー・トリガー・ハッピー』、イカスだろぅ?」

「どうでもいいよ、そんなこと」

「はっ、俺の温情だと思えよ。拳銃を知らないねんねに勝っても面白くねーからな。これで平等だ」

「別に、そんなのなくても弓は鉄砲に負けないけど」

「……オッケー。その気に食わない目。ハチの巣にしてやりたくなった。じゃあルールを説明するぜ。ルールは簡単。オレの銃とお前の弓、それぞれ放って相手に当てたらポイント。腕と足は2ポイント、胴体が3ポイント、頭が5ポイントで先に5ポイント取った方の勝ちだ」

「それでいい、さっさとやろうよ」

 なんかもうこいつの声を聴くのが辛くなってきた。
 さっさと倒して先に進もうか。

『はい、それじゃあ、挑戦者の彼以外は離れて。そこの緑の床に入って待機。それじゃあ、第三の関門、バトル――』

 天井からニトーの声。

 その言葉に反応して背中の筒から矢を取り出し、弓につがえる。
 対する男はシリンダーとかいう筒をくるくるまわしながら、にやけている。

『スタート!』

 弓を持ち上げ、右手で矢を引いた。
 同時に狙いも定めている。
 狙いはもちろん胴体。ポイントが高く、かつ狙いやすい。
 だからそこに狙いを定めたところで――

「っ!」

 男が銃を構えていた。
 右手と――左手の二丁。

 一瞬の動揺。それが致命的。

「それじゃあ、レッツパーリィってなぁ!」

 咄嗟に身を横に投げ出した。
 銃弾が空を切り裂く。
 そのまま転がって建物の影へと隠れる。
 そこを容赦なく銃弾が襲う。

 その間にも銃弾は数えている。
 10、11、12!

 弾切れだ。
 だから建物の陰から身を乗り出し弓を構えようとしたところで――

「ハチミツ酒より甘ぇんじゃあねーのか!?」

 12発目が地面に当たるのと、右手の銃のシリンダーが回転し終わるのが同時。
 それはすなわち、13発目が直後に飛んでくるということ。

 再び建物の陰に隠れた。
 そこを銃弾が通り過ぎた。

「二丁拳銃に弾切れの死角はねーんだよ! 分かったか、このボケナスがぁ!」

 間断ない銃撃。
 あー、まんまとやられたなぁー。
 てかあれって反則じゃん?

「ま、そうじゃなくても勝ちますけどねー」

 弓を構える。
 男に向けてじゃない。
 隠れたまま、空へ向かって。

 位置は分かっている。
 風は……ほぼ無風。もともと建物の中だ。上空も考えなくて良さそう。

 放った。
 空へ。

 ぐんぐんと伸びる矢は、ある一定のところまで来ると失速し、そしてやじりを下にして落ちていく。

「あぁ? なにやってん――だっ!?」

 放たれた矢を見つけたらしい。
 男が不審な声をあげ、そして銃撃が止んだ。

 ちらりと建物の陰から目を覗かせると、男の帽子のつばに矢が突き刺さっていた。

 あー、外したかぁ。惜しい。
 けどこれはまたチャンスじゃないかな。

 男が突っ立ったままだ。
 帽子を射た矢に恐怖したのか。

 だから陰から出て弓で射ようとして――

「てめぇ、俺の命の次に大事な愛帽あいぼうをよくもぉ!」

 憤怒の表情の男が再び銃を構える。
 そのまま烈火のごとく放たれる銃弾は、その怒りを代弁するかのように襲ってきた。

 ダメっぽい。
 やっぱり弓は構えて射るまでの時間がかかってしまう。
 それでも弓が鉄砲に劣っているとは思わない。
 そこを突けば、この勝負勝てるはず。

「そろそろお遊びも終わりだろうがぁ! そこから引きずり出してやるぜぇ、このクソ××××野郎が!」

 銃撃が激しさが激しさを増す。
 声も近づいてきている。隊長から聞いた。銃弾をばらまいて相手に行動させないようにする、制圧射撃というものがあると。もちろん鉄砲に興味もったわけじゃなく、弓の敵になる鉄砲の弱点を聞こうと思っただけのことだけど。

 相手が近づいてくる。
 なら、それを逆手に取るしかない。

 建物は1階建てでそこまで高くない。
 さらに屋根のところには雨どいがあって、少しジャンプしてそこに手をかければ登れる。

 手をかけた。そのまま屋根に登ると、体を屋根に寝そべらせる。
 そして頭を屋根の先から出し、ずれ落ちそうになるのを堪えながら弓に矢をつがえた。

 外すと確実に反撃をくらう。
 正射必中。
 自分に弓を教えた父親はそう言った。
 当てることではなく、正しく射ることに集中すれば結果はついてくるというもの。

 今の自分の体勢は邪道も邪道。
 だけど、構えはいつもと変わらない。
 だから当たる。
 そう信じる。

「タマ取ったぁ!」

 相手の男が建物の角から飛び出て銃を構え――止まった。
 そこにいるべき自分の姿がいなかったからだろう。

 そこ。

 射る。

 弓はまっすぐ飛び、狙い通り男の脳天へ飛び――
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