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第3章 帝都潜入作戦
閑話19 ルック(オムカ王国ジャンヌ隊部隊長)
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「ちっ!」
寸でかわされた。
相手も動く以上、狙い通りは難しい。
けど、左肩を切り裂いた。
『ジャンヌ・ダルク奪還チーム、2ポイント!』
よーし。
予想通りの結果なんて求めてない。
まずは先制。それでいいよ。
とにかくこの態勢のままだと隙だらけ。
敵が怯んだ今のうちに距離を取るべき。
だけど――
「いっ……てぇじゃねぇか!」
相手は痛みを怒りに変えて即座に反撃してきた。
銃弾がかする。
屋根を転がりながら銃弾の雨をかいくぐる。
マズイなぁ。
この状況。相手は一度退くと思ったのに。
「おら、おらぁ!! 乱・乱・乱射だぁ!!」
銃弾の勢いはとどまることがない。
とにかく屋根の反対に出よう。
その思いが焦りとなって、足が滑った。
「ぐっ!」
刃物をねじ込まれたような痛み。そして熱さ。
右肩をやられた。
『キッド、2ポイント!』
「ひゃっはああ! 手ごたえありだ、この××××野郎が!」
痛みを堪えてとにかく逃げようとする。
けどその思い虚しく、左足に衝撃。そして痛みと熱。
『キッド、2ポイント! 合計4ポイント! これでリーチだ! てか腕と足をやられて逃げられないし弓も引けない、さぁどうなる!?』
なんとか屋根の向こうに転がり出たけど、うん、確かにどうしようかなぁ……。
「さぁ、これで逃げられもしねぇ、反撃できもしねぇ。弓はよえぇなぁ!」
悔しいけどあいつの言う通りだ。
もう逃げられない。弓も引けない。
こっちの負け、かな。
……いや、そんなわけにはいかない。
弓が鉄砲に負けるわけにはいかない。
それ以上に――隊長のため、ここで負けるわけにはいかないのだ。
隊長はどんな困難な状況でも諦めなかった。だからここに自分はいるのだ。
血の流れる左足をかばいながらも距離を取るために歩く。
その背後、気配がした。
咄嗟に建物の陰に隠れる。
銃弾が空間を切り裂いていった。
「おらおら、逃げろ逃げろ! 後悔しろ、懺悔しろ、絶望しろ! そんでションベンまき散らしながら命乞いしなぁ! そしてら最後はてめぇの脳天にヘッドショット決めてエクスタシーにイカせて月までぶっとばしてやんよ!」
とにかく距離だ。
距離を取って、そこから。
時間を稼ぐ。
右手をあげる。それだけで激痛が走る。
矢を取り、つがえる。再び激痛。涙で視界がゆがむ。
放った。空へ。
結果を見る前に移動。左足を引きずるようにして、けどその振動でまた右肩が痛む。
これは厳しいなぁ。
「はっ、大外れだ! だがその腕で撃ってきたのは大したもんだよなぁ!」
声。そして銃声。
そこに目掛けて、再び射る。
「まだやってやがんのか! とっとと逝っちまえよ!」
声。銃声。射る。痛い。
「逃げても無駄だっつってんだろうが! てめぇの血の跡が教えてくれんだよ! ヘンゼルとグレーテルかてめぇは!」
逃げる。ひたすらに逃げる。
距離。距離があれば、勝てる。
あまり稼げてない。
建物の隙間を抜けて、大通りに出た。
いた。
目指すもの。さっきちらっと見たもの。
近づくと、馬がいななく。
大丈夫だよ。別に危害は加えないから。
右足で跳躍して馬に乗る。鞍がない。けど問題ない。
「馬……てめぇ、逃げる気か!」
相手が飛び出してくる。
その時には走り出した。
馬体にしがみつくようにして。
銃声。当たらない。距離。あと数メートル。
瞬間、空中に放り出された。
受け身も取れず、ごろごろと転がる。
体を起こして見たのは、血を流して倒れる馬。ぶるんと小さくいなないて動かなくなった。
ごめんな。自分がいなければ死ななかったのに。
倒れた馬の奥に相手の男の姿が見える。
ゆっくりと近づいてくるその距離……80、いや、70メートル。
相手は撃ってこない。悠々と近づいてくる。
それは余裕か、それとも……射程外なのか。
「なら、外さないよ……」
右手。動かない。左手で矢を取り出す。最後の1本。
左足。動かない。右足で踏ん張りを利かせる。
左手。動く。弓を構える。
――なら矢は?
問題ない。口が使える。
引く。口で。キツイ。けど離したら負ける。その思いで耐える。
口の中に血の味。どうやら噛みしめすぎて血が出たようだ。
けど耐える。
なんでこんなに耐えているんだっけ。
あぁ、そうだ。
隊長を助けるためだ。
そして、皆で帰るためだ。
なんだかんだで楽しかったこの旅。
笑顔で終わらせたいから。
だから今、頑張らなきゃ。
未来を、勝ち取るために。
引ききった。
「はっ、くそったれ……」
男の声が、聞こえた気がした。
射た。
まっすぐ飛ぶ。
それが命中する前に、自分が倒れた。
青く、本当の空みたいな天井が見える。
結果は見なくても分かる。渾身の一矢。外すわけがない。
『胴体にヒットォォォ! これにてジャンヌ・ダルク奪還チーム、3ポイント! 合計5ポイント獲得でジャンヌ・ダルク奪還チームの勝利ぃぃぃ! いやー、いいもの見せてもらったよ、お兄さんは感動した!』
別にあなたに褒めてもらいたくてやったわけじゃないけどねー。
声が聞こえる。
あぁ、皆の声だ。
よかった。それを守れたなら、それでいい。
そう思った。
寸でかわされた。
相手も動く以上、狙い通りは難しい。
けど、左肩を切り裂いた。
『ジャンヌ・ダルク奪還チーム、2ポイント!』
よーし。
予想通りの結果なんて求めてない。
まずは先制。それでいいよ。
とにかくこの態勢のままだと隙だらけ。
敵が怯んだ今のうちに距離を取るべき。
だけど――
「いっ……てぇじゃねぇか!」
相手は痛みを怒りに変えて即座に反撃してきた。
銃弾がかする。
屋根を転がりながら銃弾の雨をかいくぐる。
マズイなぁ。
この状況。相手は一度退くと思ったのに。
「おら、おらぁ!! 乱・乱・乱射だぁ!!」
銃弾の勢いはとどまることがない。
とにかく屋根の反対に出よう。
その思いが焦りとなって、足が滑った。
「ぐっ!」
刃物をねじ込まれたような痛み。そして熱さ。
右肩をやられた。
『キッド、2ポイント!』
「ひゃっはああ! 手ごたえありだ、この××××野郎が!」
痛みを堪えてとにかく逃げようとする。
けどその思い虚しく、左足に衝撃。そして痛みと熱。
『キッド、2ポイント! 合計4ポイント! これでリーチだ! てか腕と足をやられて逃げられないし弓も引けない、さぁどうなる!?』
なんとか屋根の向こうに転がり出たけど、うん、確かにどうしようかなぁ……。
「さぁ、これで逃げられもしねぇ、反撃できもしねぇ。弓はよえぇなぁ!」
悔しいけどあいつの言う通りだ。
もう逃げられない。弓も引けない。
こっちの負け、かな。
……いや、そんなわけにはいかない。
弓が鉄砲に負けるわけにはいかない。
それ以上に――隊長のため、ここで負けるわけにはいかないのだ。
隊長はどんな困難な状況でも諦めなかった。だからここに自分はいるのだ。
血の流れる左足をかばいながらも距離を取るために歩く。
その背後、気配がした。
咄嗟に建物の陰に隠れる。
銃弾が空間を切り裂いていった。
「おらおら、逃げろ逃げろ! 後悔しろ、懺悔しろ、絶望しろ! そんでションベンまき散らしながら命乞いしなぁ! そしてら最後はてめぇの脳天にヘッドショット決めてエクスタシーにイカせて月までぶっとばしてやんよ!」
とにかく距離だ。
距離を取って、そこから。
時間を稼ぐ。
右手をあげる。それだけで激痛が走る。
矢を取り、つがえる。再び激痛。涙で視界がゆがむ。
放った。空へ。
結果を見る前に移動。左足を引きずるようにして、けどその振動でまた右肩が痛む。
これは厳しいなぁ。
「はっ、大外れだ! だがその腕で撃ってきたのは大したもんだよなぁ!」
声。そして銃声。
そこに目掛けて、再び射る。
「まだやってやがんのか! とっとと逝っちまえよ!」
声。銃声。射る。痛い。
「逃げても無駄だっつってんだろうが! てめぇの血の跡が教えてくれんだよ! ヘンゼルとグレーテルかてめぇは!」
逃げる。ひたすらに逃げる。
距離。距離があれば、勝てる。
あまり稼げてない。
建物の隙間を抜けて、大通りに出た。
いた。
目指すもの。さっきちらっと見たもの。
近づくと、馬がいななく。
大丈夫だよ。別に危害は加えないから。
右足で跳躍して馬に乗る。鞍がない。けど問題ない。
「馬……てめぇ、逃げる気か!」
相手が飛び出してくる。
その時には走り出した。
馬体にしがみつくようにして。
銃声。当たらない。距離。あと数メートル。
瞬間、空中に放り出された。
受け身も取れず、ごろごろと転がる。
体を起こして見たのは、血を流して倒れる馬。ぶるんと小さくいなないて動かなくなった。
ごめんな。自分がいなければ死ななかったのに。
倒れた馬の奥に相手の男の姿が見える。
ゆっくりと近づいてくるその距離……80、いや、70メートル。
相手は撃ってこない。悠々と近づいてくる。
それは余裕か、それとも……射程外なのか。
「なら、外さないよ……」
右手。動かない。左手で矢を取り出す。最後の1本。
左足。動かない。右足で踏ん張りを利かせる。
左手。動く。弓を構える。
――なら矢は?
問題ない。口が使える。
引く。口で。キツイ。けど離したら負ける。その思いで耐える。
口の中に血の味。どうやら噛みしめすぎて血が出たようだ。
けど耐える。
なんでこんなに耐えているんだっけ。
あぁ、そうだ。
隊長を助けるためだ。
そして、皆で帰るためだ。
なんだかんだで楽しかったこの旅。
笑顔で終わらせたいから。
だから今、頑張らなきゃ。
未来を、勝ち取るために。
引ききった。
「はっ、くそったれ……」
男の声が、聞こえた気がした。
射た。
まっすぐ飛ぶ。
それが命中する前に、自分が倒れた。
青く、本当の空みたいな天井が見える。
結果は見なくても分かる。渾身の一矢。外すわけがない。
『胴体にヒットォォォ! これにてジャンヌ・ダルク奪還チーム、3ポイント! 合計5ポイント獲得でジャンヌ・ダルク奪還チームの勝利ぃぃぃ! いやー、いいもの見せてもらったよ、お兄さんは感動した!』
別にあなたに褒めてもらいたくてやったわけじゃないけどねー。
声が聞こえる。
あぁ、皆の声だ。
よかった。それを守れたなら、それでいい。
そう思った。
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