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第4章 ジャンヌの西進
第15話 城塞突入作戦
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遠くで鉄砲と大砲の音が聞こえる。
日があけて翌日。
カルゥム城塞の戦いは、敵味方共に弾を放つだけの消耗戦となっていた。
こちらはまだしも、城の方もかなり銃弾があるようで弾切れの様子はない。もしかしたら帝国が援助したのかもしれない。今さらそれを知ったところでどうしようもないが。
消極的ともいえる遠距離戦を強いたのは、敵味方の被害を抑えるため。
そして俺たちの動きを敵に気取られないようにするためだ。
そう、俺は今。攻城戦に参加していない。
俺とクロエを始めとする俺の部隊100人と竜胆。それにシータ軍から足の速い100人を預かった合計200。この人数で城壁を抜く。
他人から見れば、ありえないと笑われるだろう。
だがいける。
そう確信したからこそ、夜のうちに移動して北の山裾にある木々の間に潜んでいるのだ。
そのキーマンが、若干危うそうだけど……。
「大丈夫か、竜胆?」
「ひゃ、ひゃい!」
いや、駄目そうだな。
顔が青ざめ、がくがく震えている。
「いえ、やってやりゅましゅ! きょ、きょれが死者の少にゃい、チャ、正義なやり方なのでしゅよね!?」
盛大に噛みまくってる竜胆を見ると、ちょっとかわいそうになって来た。
ご自慢の正義を噛むなよ。
てかチャチュチィチュ。字面で書くと面白いけど、よく発音できるな。
「隊長殿、一発気合、入れときます?」
クロエが平手打ちの素振りを始めた。
いや、なんでお前そんな体育会系だよ。
だから俺はクロエを制して、小さく呼吸。罪深いと思っても、今の俺には竜胆にやらせるしかない。
「大丈夫だ。竜胆ならできる。自分のためじゃない、俺のためでもない。皆を守る、その正義のため、頑張ってくれ」
竜胆の肩に手を当ててはっきりとそう言った。
そして背中に手を回して、ギュッと力強く抱きしめる。
「しぇ、先輩……」
一瞬の抱擁。
若干、里奈に後ろめたい気持ちがあるけど割り切れ。
「安心しろよ。俺たちが守るから」
「そうよ。だからいつも通りにね、リンドー」
「隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた」
ウィット、マール、クロエと帝都で共に戦った面子からも励まし(約1名違うが)の言葉がかけられる。
ちなみにルックは弓部隊と共に西門で攻城戦に加わっていて今はいない。
「分かりました! 正義のため! 玖門竜胆! 全力で正義執行します!」
よし。竜胆が腹をくくった。
あとはタイミングを見て待つ。
そして陽が中天に差し掛かるころ、遠くから鉦の音が聞こえてきた。
東、南、西で全軍が鉦を鳴らす。
それがまず第一の合図。
そして本当の目的を悟らせないため、一段と砲撃が激しくなる。敵としては総攻撃の合図に聞こえただろう。その対応に追われて、ますます俺たちへの注意が行かなくなる。
「よし、そろそろ行くぞ。全員、やることは分かってるな」
部下100名とシータ軍100名に向き直り、最後に作戦を確認する。
この人数であの城塞を落とそうというのだから無謀極まりない、賭けのような作戦に思える。
けど、これが成功すれば、犠牲は限りなく少なくなる。
そう信じて、あとはやるだけだ。
「あ、あれは!」
鉦が鳴って5分ほど経った後。
部下の1人が空を見上げて叫んだ。
振り返りそちらを見る。
昼空に輝く太陽。その一部に影。
それはみるみる大きくなり――つまり落下しているということで、目的地はカルゥム城塞のど真ん中。
その正体を、俺は知っている。
巨大な水の塊。
もちろん水鏡がスキルで作り出したものだ。それは一直線にカルゥム城塞へと落下していき、そして地面に着弾して破裂した。
水が洪水のように城内に降り注ぐ。
その水しぶきが外からも見えた。
よし。これで敵の鉄砲の威力は落ちた。それに内部には少なからずの混乱が起きているはずだ。
そして、これこそが俺たちへの合図。
「行くぞ!」
俺の言葉に、200が応えて走る。
木々の間から飛び出る。城壁には走れば5分とかからずに到達する。
先日のトレーニングが功を奏したのだろう。5分の距離を、競歩並みのスピードとはいえついていけた。
これは人類にとっては小さいが、俺にとっては大きな一歩だ。
「て、敵襲!」
城壁の上から声が上がった。だが降りそそいだ水で城内は混乱しているらしい。
敵が鉄砲を用意する時には、俺たちは城壁に取り付いていた。
「盾構え!」
鉄盾を上に構えるよう指示。
ここまで取り付けば、鉄砲や矢の死角になる。鉄砲は前装式だから下に向けると込めた弾が落ちてしまうのだ。後装式なら問題はないが、やはり射角には問題があるし、敵が来ない北門には配備されないと賭けた。
だから相手にできるのは石を落とすか熱湯をかけるかくらいで、それは鉄盾を構えていればほとんど防げる。
その間に、城壁を壊す。
もちろん、今日の主役はこいつ。
「竜胆!」
「正義! スキル『九紋竜』!」
竜胆が両手を前にかざして、右手をゆっくりと横へ動かす。
そして出すのはもちろん――
「第五紋! 地竜!」
茶色の木刀。
それを構えた竜胆は大きく振りかぶり、
「正義!」
城壁にたたきつけた。
爆弾が爆発したのかと思うほどの地鳴りと轟音が轟き、砂ぼこりが舞う。
いった。
結果を見ずとも確信した。
お風呂場の壁を壊すだけじゃない。
あの大帝国のほこる関所すらも破壊する威力を持った力だ。正直チートレベルの破壊力。
だからこの城壁も――
「空きました、隊長殿!」
「よし、突撃!」
城壁にぽっかりと空いた穴から、200人が突入する。
カルゥム城塞の城内。
内部の構造は、オムカ軍がいた去年とほぼ変わっていないようだ。
兵や一般人が寝起きする住宅地を外周に、中央に城塞の中心部とも言える本丸の城がそびえ立っている。時雨はおそらくそこだろう。
シータ軍の100が俺たちから離れた。
彼らは各所に火を放ちながら、中央にある城の本丸へと向かった。
といっても敵の本陣に突っ込むには兵力が足りない。彼らの目的は囚われた反対派の解放。それと一般市民を解放すれば大きな兵力になる。
それだけで十分な混乱が生まれるだろうけど、俺たちは自分の手で勝負を決めるために動く。
すなわち、城門の解放だ。
外に鉄壁の防御を強いている敵も、中から攻撃されると弱い。
「西門、行くぞ!」
少し走れば西門。
まだ息は続く。行ける。
門が近づく。
敵が俺たちに気づいた。
外か中か。
どちらに相手するか迷う。
その迷いが致命的。
「九紋竜形態変化、第三紋! 風竜!」
竜胆が一歩前に出て、木刀を振るった。
すると突風が巻き起こり、崩れた城門で防衛戦を張っていた敵が吹き飛んだ。
そこへクロエを始めとする一隊が突っ込んだ。
敵を蹴散らし、そのまま西門を解放する。
その開いた門からは、オムカの旗がこちらに近づいてくるのが見えた。
さすがジルだ。城門が開くと同時、本隊を動かしてくれた。あの兵が中に入ればあとは決まりだ。
勝った。
そこで俺の気が緩んだ。
体力の限界だったこともある。
ほっと一息入れて、立ち止まったのがいけなかった。
「先輩!」
体を突き飛ばされた。
そして銃声。
突き飛ばされた俺は、しりもちをついた。
その上に何かが乗っかっててくる。
「り、竜胆!」
ぐったりと俺に寄り掛かった竜胆。
その背中が、溢れだす液体で濡れている。
「お、おい! 竜胆!?」
まさか、俺をかばって……。
いや、馬鹿な。
そんなこと。
さっきまで元気にいたのに。
「だ、大丈夫……です、か。先輩……」
「馬鹿! お前がなんで……」
慌てて竜胆の体を抱きかかえる。
その体は重い。
「いい、んです……先輩、守れて」
脳裏にフラッシュバックする。
独立の時、俺を守ってくれたサリナ。
南郡での戦いで、俺を助けてくれたグライス。
暗殺者から、俺をかばってくれたハワードの爺さん。
そこに、竜胆の名前が加わる。
それだけで恐ろしい気分になった。
「竜胆! ダメだ、死ぬな!」
言っても仕方ないことだと分かってる。
でも叫ばずにはいられない。
涙が出てきた。
上手く彼女の最期の顔が見れない。
俺のせいだ。
俺が彼女を巻き込んだ。
こんな危険なことを頼まなければ、俺にもっと体力があれば、竜胆は……。
「先輩……ありがとうございました……がくっ」
竜胆の体から力が抜ける。
まさか……嘘だろ。
こんな簡単に……こんな呆気なく。
「くそ、竜胆! 竜胆ぉぉ!」
叫ぶ。
ありったけの声で、
だが――
「はい、なんでしょう?」
「へ?」
竜胆がいた。いや、いるのは分かってる。
でも、あれ?
死んだんじゃなかったのか?
笑顔?
なんか余裕っぽい?
「え、なんで?」
「いや、当たった、と思ったら肩っぽかったんで。それでなんか先輩が必死だったんで、ちょっとノリで」
「の、ノリ?」
「はい! 一度やってみたかったんです! 相棒をかばって殉職っていう刑事ものの鉄板! やっぱ正義ですよね!」
えっと、それってつまり。
俺を騙したってこと?
こんな鉄火場で?
しかもノリで?
そんな馬鹿な。
そんな……そんな……。
「んな正義があるか!」
「あははー、でも本当に痛いんで。ちょっと気絶します」
と、言うや否や、ガクッと竜胆の首が折れる。
気を失ったらしい。大丈夫だ。呼吸は聞こえる。
結局なんなんだ……もしかして、結構強がりしてたんじゃないか?
あぁ、もう!
心配して損したと思ったら、やっぱり心配させるじゃねぇか。
最初から最後までお騒がせしやがって!
「救護班! 怪我人だ! 早く!」
なんてことをしている間にも、俺たちの横をジルたちが突入してくる。
そのまま南門を解放し、さらに東門を解放したことで勝負は決まっていた。
カルゥム城塞は本丸を残して、ここに陥落したのだ。
日があけて翌日。
カルゥム城塞の戦いは、敵味方共に弾を放つだけの消耗戦となっていた。
こちらはまだしも、城の方もかなり銃弾があるようで弾切れの様子はない。もしかしたら帝国が援助したのかもしれない。今さらそれを知ったところでどうしようもないが。
消極的ともいえる遠距離戦を強いたのは、敵味方の被害を抑えるため。
そして俺たちの動きを敵に気取られないようにするためだ。
そう、俺は今。攻城戦に参加していない。
俺とクロエを始めとする俺の部隊100人と竜胆。それにシータ軍から足の速い100人を預かった合計200。この人数で城壁を抜く。
他人から見れば、ありえないと笑われるだろう。
だがいける。
そう確信したからこそ、夜のうちに移動して北の山裾にある木々の間に潜んでいるのだ。
そのキーマンが、若干危うそうだけど……。
「大丈夫か、竜胆?」
「ひゃ、ひゃい!」
いや、駄目そうだな。
顔が青ざめ、がくがく震えている。
「いえ、やってやりゅましゅ! きょ、きょれが死者の少にゃい、チャ、正義なやり方なのでしゅよね!?」
盛大に噛みまくってる竜胆を見ると、ちょっとかわいそうになって来た。
ご自慢の正義を噛むなよ。
てかチャチュチィチュ。字面で書くと面白いけど、よく発音できるな。
「隊長殿、一発気合、入れときます?」
クロエが平手打ちの素振りを始めた。
いや、なんでお前そんな体育会系だよ。
だから俺はクロエを制して、小さく呼吸。罪深いと思っても、今の俺には竜胆にやらせるしかない。
「大丈夫だ。竜胆ならできる。自分のためじゃない、俺のためでもない。皆を守る、その正義のため、頑張ってくれ」
竜胆の肩に手を当ててはっきりとそう言った。
そして背中に手を回して、ギュッと力強く抱きしめる。
「しぇ、先輩……」
一瞬の抱擁。
若干、里奈に後ろめたい気持ちがあるけど割り切れ。
「安心しろよ。俺たちが守るから」
「そうよ。だからいつも通りにね、リンドー」
「隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた隊長殿に抱きしめられた」
ウィット、マール、クロエと帝都で共に戦った面子からも励まし(約1名違うが)の言葉がかけられる。
ちなみにルックは弓部隊と共に西門で攻城戦に加わっていて今はいない。
「分かりました! 正義のため! 玖門竜胆! 全力で正義執行します!」
よし。竜胆が腹をくくった。
あとはタイミングを見て待つ。
そして陽が中天に差し掛かるころ、遠くから鉦の音が聞こえてきた。
東、南、西で全軍が鉦を鳴らす。
それがまず第一の合図。
そして本当の目的を悟らせないため、一段と砲撃が激しくなる。敵としては総攻撃の合図に聞こえただろう。その対応に追われて、ますます俺たちへの注意が行かなくなる。
「よし、そろそろ行くぞ。全員、やることは分かってるな」
部下100名とシータ軍100名に向き直り、最後に作戦を確認する。
この人数であの城塞を落とそうというのだから無謀極まりない、賭けのような作戦に思える。
けど、これが成功すれば、犠牲は限りなく少なくなる。
そう信じて、あとはやるだけだ。
「あ、あれは!」
鉦が鳴って5分ほど経った後。
部下の1人が空を見上げて叫んだ。
振り返りそちらを見る。
昼空に輝く太陽。その一部に影。
それはみるみる大きくなり――つまり落下しているということで、目的地はカルゥム城塞のど真ん中。
その正体を、俺は知っている。
巨大な水の塊。
もちろん水鏡がスキルで作り出したものだ。それは一直線にカルゥム城塞へと落下していき、そして地面に着弾して破裂した。
水が洪水のように城内に降り注ぐ。
その水しぶきが外からも見えた。
よし。これで敵の鉄砲の威力は落ちた。それに内部には少なからずの混乱が起きているはずだ。
そして、これこそが俺たちへの合図。
「行くぞ!」
俺の言葉に、200が応えて走る。
木々の間から飛び出る。城壁には走れば5分とかからずに到達する。
先日のトレーニングが功を奏したのだろう。5分の距離を、競歩並みのスピードとはいえついていけた。
これは人類にとっては小さいが、俺にとっては大きな一歩だ。
「て、敵襲!」
城壁の上から声が上がった。だが降りそそいだ水で城内は混乱しているらしい。
敵が鉄砲を用意する時には、俺たちは城壁に取り付いていた。
「盾構え!」
鉄盾を上に構えるよう指示。
ここまで取り付けば、鉄砲や矢の死角になる。鉄砲は前装式だから下に向けると込めた弾が落ちてしまうのだ。後装式なら問題はないが、やはり射角には問題があるし、敵が来ない北門には配備されないと賭けた。
だから相手にできるのは石を落とすか熱湯をかけるかくらいで、それは鉄盾を構えていればほとんど防げる。
その間に、城壁を壊す。
もちろん、今日の主役はこいつ。
「竜胆!」
「正義! スキル『九紋竜』!」
竜胆が両手を前にかざして、右手をゆっくりと横へ動かす。
そして出すのはもちろん――
「第五紋! 地竜!」
茶色の木刀。
それを構えた竜胆は大きく振りかぶり、
「正義!」
城壁にたたきつけた。
爆弾が爆発したのかと思うほどの地鳴りと轟音が轟き、砂ぼこりが舞う。
いった。
結果を見ずとも確信した。
お風呂場の壁を壊すだけじゃない。
あの大帝国のほこる関所すらも破壊する威力を持った力だ。正直チートレベルの破壊力。
だからこの城壁も――
「空きました、隊長殿!」
「よし、突撃!」
城壁にぽっかりと空いた穴から、200人が突入する。
カルゥム城塞の城内。
内部の構造は、オムカ軍がいた去年とほぼ変わっていないようだ。
兵や一般人が寝起きする住宅地を外周に、中央に城塞の中心部とも言える本丸の城がそびえ立っている。時雨はおそらくそこだろう。
シータ軍の100が俺たちから離れた。
彼らは各所に火を放ちながら、中央にある城の本丸へと向かった。
といっても敵の本陣に突っ込むには兵力が足りない。彼らの目的は囚われた反対派の解放。それと一般市民を解放すれば大きな兵力になる。
それだけで十分な混乱が生まれるだろうけど、俺たちは自分の手で勝負を決めるために動く。
すなわち、城門の解放だ。
外に鉄壁の防御を強いている敵も、中から攻撃されると弱い。
「西門、行くぞ!」
少し走れば西門。
まだ息は続く。行ける。
門が近づく。
敵が俺たちに気づいた。
外か中か。
どちらに相手するか迷う。
その迷いが致命的。
「九紋竜形態変化、第三紋! 風竜!」
竜胆が一歩前に出て、木刀を振るった。
すると突風が巻き起こり、崩れた城門で防衛戦を張っていた敵が吹き飛んだ。
そこへクロエを始めとする一隊が突っ込んだ。
敵を蹴散らし、そのまま西門を解放する。
その開いた門からは、オムカの旗がこちらに近づいてくるのが見えた。
さすがジルだ。城門が開くと同時、本隊を動かしてくれた。あの兵が中に入ればあとは決まりだ。
勝った。
そこで俺の気が緩んだ。
体力の限界だったこともある。
ほっと一息入れて、立ち止まったのがいけなかった。
「先輩!」
体を突き飛ばされた。
そして銃声。
突き飛ばされた俺は、しりもちをついた。
その上に何かが乗っかっててくる。
「り、竜胆!」
ぐったりと俺に寄り掛かった竜胆。
その背中が、溢れだす液体で濡れている。
「お、おい! 竜胆!?」
まさか、俺をかばって……。
いや、馬鹿な。
そんなこと。
さっきまで元気にいたのに。
「だ、大丈夫……です、か。先輩……」
「馬鹿! お前がなんで……」
慌てて竜胆の体を抱きかかえる。
その体は重い。
「いい、んです……先輩、守れて」
脳裏にフラッシュバックする。
独立の時、俺を守ってくれたサリナ。
南郡での戦いで、俺を助けてくれたグライス。
暗殺者から、俺をかばってくれたハワードの爺さん。
そこに、竜胆の名前が加わる。
それだけで恐ろしい気分になった。
「竜胆! ダメだ、死ぬな!」
言っても仕方ないことだと分かってる。
でも叫ばずにはいられない。
涙が出てきた。
上手く彼女の最期の顔が見れない。
俺のせいだ。
俺が彼女を巻き込んだ。
こんな危険なことを頼まなければ、俺にもっと体力があれば、竜胆は……。
「先輩……ありがとうございました……がくっ」
竜胆の体から力が抜ける。
まさか……嘘だろ。
こんな簡単に……こんな呆気なく。
「くそ、竜胆! 竜胆ぉぉ!」
叫ぶ。
ありったけの声で、
だが――
「はい、なんでしょう?」
「へ?」
竜胆がいた。いや、いるのは分かってる。
でも、あれ?
死んだんじゃなかったのか?
笑顔?
なんか余裕っぽい?
「え、なんで?」
「いや、当たった、と思ったら肩っぽかったんで。それでなんか先輩が必死だったんで、ちょっとノリで」
「の、ノリ?」
「はい! 一度やってみたかったんです! 相棒をかばって殉職っていう刑事ものの鉄板! やっぱ正義ですよね!」
えっと、それってつまり。
俺を騙したってこと?
こんな鉄火場で?
しかもノリで?
そんな馬鹿な。
そんな……そんな……。
「んな正義があるか!」
「あははー、でも本当に痛いんで。ちょっと気絶します」
と、言うや否や、ガクッと竜胆の首が折れる。
気を失ったらしい。大丈夫だ。呼吸は聞こえる。
結局なんなんだ……もしかして、結構強がりしてたんじゃないか?
あぁ、もう!
心配して損したと思ったら、やっぱり心配させるじゃねぇか。
最初から最後までお騒がせしやがって!
「救護班! 怪我人だ! 早く!」
なんてことをしている間にも、俺たちの横をジルたちが突入してくる。
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