知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第20話 ジャンヌの護衛

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 色々脱線はしたものの、とりあえずマリアに出発の件と編成についてを伝えた。
 内容についてはすでにジルと話は済んでいるから、最終承認を得るだけのようなものだ。

 だから話自体は5分くらいで済んだので、そのまま退室しようとした時。

「あ、ジャンヌ……」

 マリアが何かを言おうとして、黙り込む。

「女王様、後はお任せを」

「う、うむ。頼むのじゃ」

 なにやら思い詰めた様子のマリアに、ニーアが優しく語りかける。
 そしてニーアはこちらにいかめしい顔を向けた。

「ジャンヌ、ちょっと時間ある?」

「ああ。ただ時間はないから手短にな」

「…………。その準備にかかわることだから。来て」

 なんだよ、強引だな。
 てかその前の沈黙。怖いぞ。

 ニーアの先導で廊下を歩く。
 後ろにはクロエが続いた。

「一応言っておくけど、あたしは行けないから」

「ああ、分かってる。そっちはよろしく頼む」

 ニーアが王都を離れられない理由。
 もちろんマリアのことだ。

 ノーネームとかいう暗殺者が狙っているのは俺だが、マリアが狙われない可能性を無視できるほど楽観的にはなれない。
 一応、『古の魔導書エンシェントマジックブック』で王宮にいる全員は調べたが、俺が出かけた後になり変わられたらどうしようもない。
 かといって俺が年がら年中ついているわけにもいかないから、ニーアの出番というわけだ。

「女王様はあたしが命に代えても守る。けどあんたは?」

「俺?」

 急に振られて何を言っているのか分からない。
 それでニーアは立ち止まり大きくため息をつくと、

「あんたも少しは自分の立場を自覚して? ここで女王様とジャンヌを失うわけにはいかないんだから」

 そういうものか。
 そういやあの女神もそんなことを言ってたな。過大評価だろうけど。

「ふん、私がいる以上、隊長殿に手出しはさせませんよ」

 クロエが自信満々に言い放つが、それに対するニーアの言葉は辛らつだ。

「あんたは部隊の副隊長としての自覚を持ちなさいよ。嫌なら副隊長をやめてジャンヌの護衛に専念しなさい」

「うっ……それは」

「だったらつべこべ言わない。護衛が多すぎるのは動きにくくなる欠点があるけど、ジャンヌを失うよりマシよ」

「それは、そうだけどぉ……」

「いいわよね、ジャンヌ?」

 睨むようにこちらを向くニーア。
 だから何を怒ってるんだよ。

 とはいえこの提案は断る理由はない。

「ああ。クロエには色々動いてもらう必要が出てくると思う。護衛専門の人がいるなら、そっちの方がありがたいよ」

 俺が死んでも代わりはいる。
 それでもビンゴの問題にケリをつけたいとは思うし、里奈と出会った以上、死にたくないと思うのは人情だ。

「隊長殿がそういうなら……」

「んじゃあ決まりね。じゃあ……」

 ニーアがある部屋の前で止まり、そのまま無遠慮にドアを開け放った。
 そこには2人の人物がいた。

 軍服の上に青い羽織を着た痩身の男性と、赤い羽織を着た長身の女性。
 ズボンとスカートという服装の違いがなければ、同一人物と勘違いしてしまうほど顔立ちはよく似ていた。

「この兄妹をつけるわ。自己紹介は自分でして」

「はっ、自分は近衛騎士団のフレールといいます。こちらは妹の……その――ぐっ!」

「サールです。よろしくお願いいたします」

「あ、ああ……よろしく」

 真面目そうな兄フレールとは違って無表情にお辞儀をするサール。
 兄妹だけあって顔だけじゃなく声質も似ている。てか今、妹さんの方。兄にボディブロー入れなかった?

「ちょっち、くせがあるけど腕は確かだから」

 くせ、ねぇ……。
 一番のくせ者に言われるとはどれほどだ。

 まぁニーアが推すんだから期待はしていいんだろう。

「あ、それからジャンヌ」

「なんだよ」

「あっちで浮気したらダメよ。そんなことしたら……ジャンヌを殺してあたしも死ぬ」

 なんでお前にそんな心配されなきゃいかん。
 てか怖ぇよ。心配して護衛をつけてきた人間の言葉とは思えない。

「あと出発まで時間あるでしょ?」

「ああ。出発は2日後だ」

「じゃあ今夜女王様のとこ行って。ご飯用意しとくから、泊ってって」

「それは……」

「嫌なの?」

 ニーアの視線に殺気が混じる。
 さっきから不機嫌の理由。これか。

 嫌、なわけはない。
 けど、残りの日数は準備をしながら里奈と一緒に過ごそうと思っていた。

 とはいえ、それはよく考えたら酷い話だ。

 理由はどうあれ、これまでのマリアとの付き合いを放棄して、里奈に乗り換えたと見られても仕方ない。
 俺が男だったら確実に刺されるパターンだ。……って、俺。男じゃん。

「分かったよ。今日行く」

「ん、待ってる。それから――」

 と、ニーアは何かを言おうとして、そこで止まった。

「なんだよ? ずけずけと物言うお前にしては珍しい」

「うっさいわね。これでもちょっとは気を遣ったのよ。とにかく、また後で言うから。それまで気にしないで」

 と言われてもなぁ。
 まぁ、こいつも色々考えてるってことか。

 そんなわけでこの後の予定としては、本宅でクロエと出発の準備を進め、里奈のいる別宅に顔を出して、もう1つの別宅でマリアと夕食を共にすることになった。

 思えば、かなりカオスな状況になっている気がする。
 うん。てゆうかこの現状を整理して思ったことが1つ。

 ……政治家か!

 妻がいるのに愛人を囲って本宅と別宅を行き来する悪徳政治家かよ!?
 てか本宅とか別宅とか考えている時点でもう色々アウトだった。

 てかなんでこんな展開になったんだっけ。

 一番最初に会ったのはマリアだ。
 この世界に来てすぐ、俺を庇護してくれた人物。
 何より、里奈の面影があって、どこか放っておけない存在として俺の心の大部分を占めていた。

 そこに加わったのがクロエだ。
 最初は俺に対して悪感情を持っており、正直生意気だと思ったことも一切ではない。
 けどある一線を越えてから、なぜか俺の家に居候することになり、家事全般で腕を振るってくれている。なんだかんだで一番、共にいる時間が長く、それが不快ではない。
 ……あの行き過ぎた感情は辟易へきえきすることはあるけど、ある意味、遠慮せずに付き合える出来の悪い妹という感じか。

 そして最後。
 ほんの数か月前に出会った里奈。
 時間こそ短いが、前の2人以上に特別な存在だと思ってしまうのは、やはり元の世界という共通項があり、何より俺が男だという秘密を隠し立てしないでいいのが大きい。
 そして元の世界では、友達以上の存在ではあったともそれに拍車をかける。

 誰が一番だということはないが、それでもやはり里奈に比重を置いてしまうのは仕方のないことだろう。

 ……いや、本当は優劣なんてない。
 彼女たち全員、俺の大切な人たち。ニーアもジルもサカキもブリーダもリンも竜胆も、このオムカに住む皆は俺が守りたいと思っている人たちだ。

 だからなんとしてもこのビンゴ侵攻は成功させないといけない。
 そう、だから変なことに思考を費やしている暇はないんだ。

 なんてことを考えて、自分を納得させる。
 現実逃避の責任逃れの問題の先送りで事なかれ主義の最低の発想だった。
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