知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
345 / 627
第4章 ジャンヌの西進

第45話 憂慮

しおりを挟む
 結果だけ言うと、俺の作戦は失敗だった。
 川は渡ったものの、砦に向かう途中に敵の伏兵に遭い、ヴィレスたちは命からがらに逃げてきたのだ。

「申し訳ありません……敵に作戦を見破られました」

 本陣に集まったみんなの前で恐縮して言うヴィレスだったが、川の水と汗と血でぐしょぐしょになった傷だらけの彼を前にして、誰も言葉がなかった。
 そもそも俺の作戦も結構アバウトなところもあったのだから、責任がどこにあるかとかの話じゃない。

「いや、こちらこそ無理させて済まなかった。犠牲は200も出たか……すまん。ゆっくり休んでくれ」

 しかし、こちらの動きを知っているがごとき采配。
 それほど敵の指揮官プレイヤーは優秀なのか。
 あるいは……こちらの内通者がいるのか。

 いや、それは考えるな。

 とにかく、この奇襲の失敗で再び膠着状態に入った。

 川を挟んでいるため言葉も届かないから悪口を言っておびき出せないし、砦を空にして空城の計みたいなことをやってみたけど無駄だった。

 くそ、晩年の諸葛亮もこんな気分だったのか。
 劉備りゅうびの死後、諸葛亮は北の大国・魏に対して進撃を繰り返した。
 だがライバルである司馬懿仲達しばいちゅうたつに持久作戦を取られ、補給に苦慮し、寿命によって諸葛亮は五丈原に散った。

 もちろん寿命なんて気にしてたら何もできないし、兵糧も潤沢ではないが足りないことはないから諸葛亮よりはまだマシな状態だとは思う。
 しかし、この膠着状態はいただけない。

「こちらから攻撃。やはり難しいのでは」

 グロスが不安そうにつぶやく。

「いや、でもこのまま睨みっこしてたらいつまで経っても状況はよくならねーぜ? どれだけ犠牲が出ても打って出るしかねーんだよ」

 この強気意見はサカキ。

「しかし、相手もさるものです。渡河したとしてもそれで勝てるかは……」

 ヴィレスが負けたばかりのことを負い目に思っているのか、控えめに反論する。

「いっそこのままここをビンゴ王国の領土にしちゃえばいいんじゃないです?」

「馬鹿か、貴様。こんな中途半端な領土があっても、帝国には勝てないだろうが!」

 クロエの無責任にも聞こえる発言にウィットが反論したところで、

「いえ、それはありかもしれません。そうキシダ将軍はおっしゃっていました」

 黙っていたセンドがクロエに賛同した。

 センドは今、諜報部隊の統括をしている。
 たまに村に戻って喜志田に情報を伝えつつ、彼の知恵を借りているようだった。

「おわ!? まさか適当に言った言葉が大正解です!?」

「うん、クロエ。もうちょっと考えて発言しようか」

 あまりに無責任なクロエに嘆息せざるを得ない。
 とはいえ、確かに考えてみれば悪くはないのかもしれない。

 ビンゴ王国を地図で描いた時、首都のスィート・スィトンを中心として、北と南、そして東に領土が広がっている。
 その東部は俺たちが今いる辺りが大部分を占めているから、旧ビンゴ王国の領土、その約4分の1は支配しているのだ。

 それに南部では旧国王の息子――元ビンゴ王国の王子が反帝国の旗を掲げて抵抗しているという。
 合わせても元の国力の半分に満たない勢力だが、東と南で首都を挟み撃ちにしている構図は悪くない。

 今は戦乱で荒廃している東部だが、じっくり立て直しを図りつつ相手の隙を伺うのも1つの戦略だろう。

 相手に時を与えないという当初の予定とは反するが、それは帝国が反対勢力を併呑へいどんして旧ビンゴ領を統一していた場合のこと。
 こうも内乱が続いていれば国力は高まるどころか減衰の一途をたどるわけだから、こちらとしては申し分ない。
 業を煮やした帝国が、大軍をこちらに向ければ、俺たちオムカ王国とシータ王国がわき腹を突くチャンスも出てくるだろう。

 うん、整理して考えてもやっぱり悪くない。

「喜志田はそれでいいって言ってたんだな、センド?」

 一応、他国の事情だからセンド経由で喜志田の言ったことで言質げんちを取ろうと聞いてみる。

「はぁ……。あの、ジャンヌ様がそう言った時はこう言えと言われたので言いますが、『へぇー、アッキーはそんな戦果で満足なんだ。帝国を追っ払うって約束はどこに行ったのかなー? それでオムカの軍師とか名乗って恥ずかしくない?』とのことです」

「あいつ、今度会ったらしばく……」

 てかセンド、お前も丁寧に覚えてなくていいんだよ。

「分かったよ。それは最終手段だ。とにかく、相手を動かさないことにはどうしようもない」

「うぅ、クロエ渾身の策が……」

 いや、いいところ突いてたんだけどな。
 まぁこういうのも経験ということで。

 それから議論は百出したが、どうもまとまらない。
 一旦、休憩もかねて散会にしようかと思ったその時だ。

「で、伝令! 敵が動きました!」

「どこだ!」

 伝令を本陣に入れて、机に乗った地図を示す。

「この2つの砦から、敵軍が北へ向かっております! その数、合計4千!」

「4千、微妙な数だな……」

「先日のジャンヌ殿の策をまねるとか?」

「まさか! 隊長殿の策は隊長殿だけのものです! 真似するなんて許せません!」

「いや、待て。あれは真似しようと思えば真似出来る。なんせ貴様のような猿頭でもできたんだからな」

「にゃ、にゃにおー、ウィットのくせにー!」

 あぁ、クロエとウィットは本当に平常運転。
 だが俺は数よりもっと気になることがあった。

「この2つの砦から出たんだな?」

 伝令が示したのはここから一番近い敵の本陣があるだろう砦――北にある2つの小さな砦だ。
 多くて2千の兵が入れるかくらいの砦で、本陣のある砦の付城つけじろのようなもので、戦略的な価値は薄い場所くらいにしか思っていなかったが……。

 そもそも北上するなら、もっと北にそれなりの規模の砦があるし、隠れて兵を動かすならもっと川から離れた場所から出撃するべきだ。

 それなのに、こんな中途半端な位置から4千が出る。
 そこに何かくさいものを感じた。

「その4千、どの門から出た?」

「はぁ……それは東門かと」

「何でそれが分かった? 直接見たのか?」

「は、はい。こちら側で見張っていた私にも見えました。急に東門が開いて中から軍が出てきましたので、慌てて報告に参りました」

 やはり、きなくさい。
 まるでわざとこちらに見せるように出てきてやしないか?

「兵の装備は? 歩兵が多かったとか、土木作業のための道具を持っているとか」

「いえ、ごく普通の騎馬が500に歩兵が1千500ほどの軍が2つでした。あ、そういえば騎馬兵も含め軽装だった気がします。あまり厚い鎧は来ている感じではありませんでした。それが悠々と北へ向かっていったのです」

 軽装?
 となると川を渡るためか?
 それにしては北に向かっているという。わざわざ東門を出てそこから北へ向かう。

 俺たちがやったみたいに奇襲をかけてくるのか。
 だがその割には悠々となんて表現が使われているように、さして急ぐ様子もない。
 それから何度も言うが、こちらに見せつけるように東門から出ているのだ。

 理に合わない行軍だ。

 だが、もしそれが理にかなっているのだとしたら?
 装備からして嚢沙之計のうしゃのけいではない。
 速度からして奇襲ではない。
 では残るは?
 北に何がある?
 北に………………まさか!?

「全軍出動準備!」

「え、ちょ、ジャンヌちゃん!?」

「あー、いや。違う。サカキ、クロエ、ウィット、クルレーン、オムカは全軍出る。ビンゴ軍は……ヴィレス。できれば最初からいる兵を急ぎ集めて欲しい。可能な限り軽装で。集まり次第出撃する!」

「ちょ、ちょっと待っていただきたいジャンヌ殿。その2千は今しがたの奇襲で疲れております」

「なら喜志田が連れてきた方でいい。2千、いや3千は欲しい。そっちはグロスに率いてもらった方がいいか?」

「いえ、ヴィレスでも問題ありません。彼にも汚名返上の機会は早い方が良いでしょう。行けますね、ヴィレス」

「はい、当然」

「よし、準備を急げ。すぐに出るぞ!」

「申し訳ない。その前にどうしたのですか。急にこのような……正直、出撃は構いませんが我々には何がなんだか……」

 センドが混乱したように皆の気持ちを代弁する。
 くそ、そりゃそうか。急にこんなことを言われても混乱するだけだ。

 だが時間がない。だから簡潔に説明することにした。

「敵がこちらに見せかけるようにしてゆっくり出撃した。これは川に堤を築くわけでも、上流で渡河してこちらを攻撃するものでもない。ならその部隊を出した意味は? そう考えた時、あの部隊の目的地が分かった」

「目的地?」

 センドが首をかしげる。
 ここまで言っても分からないか。
 いや、そもそもが思慮外のことなのだ。
 あそこが攻められるなんて、ここにいる誰もが思っていないだろう。

 だから俺は言ってやる。
 最悪の想定を、形にする。

 里奈!

「俺たち……いや、ビンゴ王国の反乱の拠点となっている村。奴らはそこを攻撃する気だ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...