地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

文字の大きさ
64 / 137
61~70

純白の黒い噂

しおりを挟む
 ある日のこと、夜の酒場でこんな噂話が飛び交っていた。

「……おい、聞いたか?」
 木製のジョッキを傾ける冒険者が、隣に座る仲間に声を潜めた。

「何をだ?」

「王都の地下牢にいたはずの、あの『純白の剣』の三人が――消えたらしい」

 仲間が思わず息を呑む。
「ああ、聞いた聞いた……牢から逃げたってな。あいつら、リンカを売った裏切り者だろう」

 リンカが純白の剣の元メンバーだという事は既に周知の事実となっている。
 未だに銀狐族であることは知られていないものの、仲間に裏切られてセージに救われた一連の流れは、一つの美談として広まっていた。

「違ぇんだよ。牢の中から、忽然と姿が消えたって話だ。看守は殺されたそうだ」

 酒場のざわめきが一瞬やむ。
 誰もが眉をひそめ、重苦しい空気が広がった。

「……教団か」
 ぽつりと呟く声がした。だが、その言葉を口にした冒険者はすぐに口を噤み、周囲を気にするように目を泳がせる。





 その数日後、同じ酒場ではこんな話がされていた。

「なあ、知ってるか?」
「王都から黒い馬車を見たって。真夜中に、荷馬車も馬も影みたいに黒かったってさ」
「行き先は……こっちの方向だって?」

「縁起でもねえな」
「ったく、教団絡みじゃねえといいんだが……」

 広場のあちこちで、不吉な噂が囁かれていた。



 砂塵を巻き上げて進む三つの影。
 鎧に身を包んだハーカルが先頭に立ち、背後には盾を構えるベガルト、虚ろな瞳のシェリル。

 彼らの纏う気配は、かつて冒険者だった頃の面影を完全に失っていた。
 ――ただの「教団の尖兵」。
 町を破壊するための兵器に過ぎなかった。


「なんだか最近、冒険者が妙に減ってない?」
「依頼を受けても戻ってこない者もいるって……」
「まさか、町まで巻き込まれるんじゃ……」

 広場の人々が小声で噂を交わす。
 市場の喧騒は、どこか落ち着かない。
 冒険者達も、妙に神経を尖らせていた。


 ◇◇◇

 僕らはトトルムさんから緊急の呼び出しを受けていた。
 この頃ダータルカーン周辺で出没する奇妙な一団いるという噂が流れていたのだ。

「――以上が、町に流れている噂です」
 トトルムさんが報告を締めくくると、重苦しい沈黙が室内を支配した。

 王都の牢獄から忽然と姿を消した「純白の剣」の三人。
 それがただの失踪でなく、闇に連れ去られた末に「尖兵」と化した――そんな不穏な情報が、冒険者達の間で囁かれていた。

「……彼らは、間違いなくこちらに向かっています」
 トトルムさんの声は硬い。

「このダータルカーンを標的にする理由は不明です。教団の影が関わっている可能性は高いでしょう」

 リンカが拳を握る。
「やっぱり……あの三人なのね。ハーカル達が……」
 声が震えた。幼馴染みだった過去を思えば、無理もない。

「リンカ……」

 僕はそっと肩に手を置いた。

「今は感情より現実だ。もし本当に尖兵として現れるなら……僕らが立ちはだかるしかない」

 ルミナスは頷き、低く呟く。
「セージ、戦う。ルミナス、手加減しない」

 セレスは唇を噛みしめ、両手を胸に当てていた。
「わたくし……彼らを直接知っているわけではありません。けれど、教団に利用され、人としての心を失っているのなら……救いは、剣の先にしかないのですね」

「正式に依頼を出しましょう。ギルドとしても放置はできません。尖兵の襲来は町にとって重大な脅威となるでしょう。討伐か、せめて足止めをする必要がある」

 受付嬢も不安げに口を開く。
「もし戦うことになるなら、セージさん達の力が必要です。……正直、他の冒険者じゃ太刀打ちできません」

 室内に視線が集まる。
 僕は深く息を吐き、静かに頷いた。

 元の純白の剣の力であれば大した事はない。だが、教団や闇ギルドが関わっている以上、普通の状態ではないはずだ。

「受けます。仲間と一緒に」

 リンカが決意を示す。
「ええ、やりましょう」
 ルミナスは炎を指先に揺らす。
「ルミナス、燃やす。敵、消す」
 セレスも強い眼差しを向け、胸に手を添えた。
「わたくしも……癒しの力で、皆さまを支えます」

 トトルムさんが地図を広げる。
「奴らが来るとすれば、北の街道でしょう。ギルド長、迎撃の準備を整えておきなさい」
「分かりました。報酬に関しては」
「惜しみなく出せ」

「はい。ではすぐに通達を」

「僕らもすぐに準備します」
 僕は短く答えた。

「よろしくお願いします。噂が本当であれば、元の彼らとは比べものにならない強さとなっているでしょう」

 外では、夜風が窓を叩く。
 嵐の前の静けさのように、町全体が不気味に沈黙していた。

 その時、突如としてギルド職員が僕らが会議をしている室長室へと乱入してくる。

「何事だっ。会議中だぞ」

 ギルド長が怒鳴る事にもひるまず、青ざめた男性職員が全身に汗を掻きながら驚愕の事実を口にする。

「大変ですっ! 北の街道から突如としてモンスター軍団が出現ッ! 数が多すぎて全体数が分からないほどだと報告がっ」

「な、なんだとっ!」

「現在ダータルカーン全ての冒険者ギルドに国家よりの緊急討伐招集が掛けられています」

「なんと言うことだ。こうなっては仕方が無い。ギルド長、他のギルドと連携して全ての冒険者に武器や防具の貸し出しも無償で行なってよい。ネコババする者も出てくるだろうが、責任は問わぬと伝えろ」

「わ、分かりました」

「こうなっては四の五の言ってはおられん。ダータルカーンにある全てのギルドに連絡を入れて協力を仰げ。商会で扱う鍛冶屋を総動員して武器を調達するんだ。途轍もなくイヤな予感がする」


 トトルムさんの見たことがないほどの厳しい口調と険しい顔に僕らの気も引き締まる。

「セージさん、こうなってはあなた方に頼るより他はありません。どうか、このダータルカーンをお守りください」

「ええ、分かってます。僕らにとっても因縁の相手です。死力を尽くします」

 敵勢が街に到達するまではあとひと晩あるとのことだ。

 僕らは急いで戦いの準備をすることにした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

社畜だった俺、最弱のダンジョンマスターに転生したので、冒険者を癒やす喫茶店ダンジョンを経営します

☆ほしい
ファンタジー
過労死した俺が目を覚ますと、そこは異世界のダンジョンコアの前だった。 どうやら俺は、ダンジョンマスターとして転生したらしい。 だが、与えられた俺のダンジョンは最低ランクのF級。魔力を生み出す力は弱く、生み出せる魔物もスライムやゴブリンといった最弱クラスばかり。これでは、冒険者を呼び込んで魔力を得るなんて夢のまた夢だ。 絶望する俺だったが、ダンジョンの創造機能を使えば、内装を自由にデザインできることに気づく。 「……そうだ、喫茶店を開こう」 前世で叶えられなかった夢。俺は戦闘を放棄し、ダンジョンの入り口に木造の喫茶店『やすらぎの隠れ家』を作り上げた。メニューは、前世の知識を活かしたコーヒーと手作りケーキだけ。 ところが、そのコーヒーには異常なまでの疲労回復効果が、ケーキには一時的な能力向上効果が付与されていることが判明。噂を聞きつけた訳ありの冒険者たちが、俺のダンジョンに癒やしを求めて集い始めるのだった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

処理中です...