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第2章
ライオット
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「あ、あの! 大丈夫ですか!」
カイルは慌てて駆け寄り、倒れた男の体を支えた。
てっきり凶悪な魔物に襲われたのかと身構えたが、近くで見ると男の体に目立った外傷はない。ただ、頬はこけ、唇はカサカサに乾ききっている。
「…み…みず」
男が消え入るような声で漏らした。
「水ですね! すぐに!」
カイルは腰に下げた水筒を手に取り、男の口元へ運んだ。男は獣のような勢いでそれを飲み干すと、ふらふらと視線を彷徨わせ、焚き火で焼かれているシルキー・ラビットの肉を見つめた。
「お肉もどうぞ! 焼き立てです!」
カイルが串に刺さった肉を差し出すと、足元でシリウスが「グルル」と不満げな声を上げた。自分の取り分が減るのが気に入らないらしい。
「ごめんねシリウス。この人、すごくお腹が空いてるみたいなんだ。後でまた捕まえるからさ」
カイルがなだめると、シリウスは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
男は差し出された肉をひったくるように受け取り、一心不乱に食らいついた。
その瞬間、男の全身に衝撃が走る。
カイルがシリウスの魔力を無自覚に通して調理したその肉は、単なる栄養素を超え、極上の回復薬をも凌駕する生命力の塊へと変質していた。一口食べるごとに男の肌に血色が戻り、空っぽだった魔力回路が急速に満たされていく。
「ふぅ。生き返った」
男は座り直すと力強く頭を下げて、深く息を吐いた。
「恩にきるぜ、少年。俺はライオット。あんたがいなけりゃ、今頃は森の土になってたところだ」
「あ、いえ! お役に立ててよかったです。僕はカイル。こっちは相棒のシリウスです」
カイルが自己紹介をすると、ライオットは焚き火の脇に転がっているシルキー・ラビットの毛皮を見て、感心したように眉を上げた。
「シルキー・ラビットを仕留めるなんて、見かけによらず腕が立つんだな、カイル」
「あ、これは僕じゃなくて、シリウスが頑張ってくれたおかげなんです」
ライオットは少し意外そうな顔をしたが。
「ワーウルフの個体がシルキー・ラビットを倒すか。ワーウルフは群の統率によって真価を発揮するが、単体なら下級冒険者でも討伐可能なんだがな。珍しい毛色をしているが、特殊な個体なんだろうか」
「分からないですけど、シリウスは凄いんです!」
カイルがシリウスの頭を撫でる。
その光景を見ていたライオットは、すぐに真剣な表情に戻った。
「シリウスと言ったか?そのワーウルフが強いとしてもだ、こんな場所にその軽装で来るのは感心しないぜ。ここは上級者向けの森だ。もう暗くなるから、さっさと森を出たほうがいい」
ライオットに指摘され、カイルは彼の姿をまじまじと見た。
ライオットさんこそ、槍一本で、僕よりもずっと軽装に見えるけど……。
「ああ。俺もこの森を甘く見ていた」
カイルの視線に気づいたのか、ライオットが苦笑いしながら肩をすくめた。
「魔物はどうとでもなったんだが、道に迷って食料と水が尽きるとはな。そのうえ、食料にしようとも、魔物がとんと現れなくなってな。槍術じゃ腹は膨らまねえってわけだ。」
「そうだったんですね。でも、僕はまだ帰れないんです。もっとシルキー・ラビットを討伐しなきゃいけなくて」
ライオットは不思議そうに理由を尋ねた。カイルは正直に、王都のギルドの新人募集での入団を断られ、この森の獲物を持ってくるように条件を出されたことを話した。
それを聞いた瞬間、ライオットの表情が険しくなる。
「おいおい。新人募集でこんな場所に送り込むなんて、そのギルドは碌なもんじゃないぞ。いいか、夜の森はまた姿を変える。命がいくつあっても足りない。悪いことは言わない、今すぐ街へ戻れ。森の出口まで送ってやるからよ」
ライオットが槍を構えて立ち上がった。
「でも、どうしてもギルドに入る必要があるんです。だから、残ります」
カイルが頑なに答えると、ライオットは呆れたように頭を掻いた。だが、目の前の少年の瞳にある純粋な決意を見て、不敵に笑う。
「そんなにギルドに入りたいのか?」
カイルは力強く頷く。
「なあカイル、お前さえよければ、うちのギルドに来るか?」
カイルは慌てて駆け寄り、倒れた男の体を支えた。
てっきり凶悪な魔物に襲われたのかと身構えたが、近くで見ると男の体に目立った外傷はない。ただ、頬はこけ、唇はカサカサに乾ききっている。
「…み…みず」
男が消え入るような声で漏らした。
「水ですね! すぐに!」
カイルは腰に下げた水筒を手に取り、男の口元へ運んだ。男は獣のような勢いでそれを飲み干すと、ふらふらと視線を彷徨わせ、焚き火で焼かれているシルキー・ラビットの肉を見つめた。
「お肉もどうぞ! 焼き立てです!」
カイルが串に刺さった肉を差し出すと、足元でシリウスが「グルル」と不満げな声を上げた。自分の取り分が減るのが気に入らないらしい。
「ごめんねシリウス。この人、すごくお腹が空いてるみたいなんだ。後でまた捕まえるからさ」
カイルがなだめると、シリウスは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
男は差し出された肉をひったくるように受け取り、一心不乱に食らいついた。
その瞬間、男の全身に衝撃が走る。
カイルがシリウスの魔力を無自覚に通して調理したその肉は、単なる栄養素を超え、極上の回復薬をも凌駕する生命力の塊へと変質していた。一口食べるごとに男の肌に血色が戻り、空っぽだった魔力回路が急速に満たされていく。
「ふぅ。生き返った」
男は座り直すと力強く頭を下げて、深く息を吐いた。
「恩にきるぜ、少年。俺はライオット。あんたがいなけりゃ、今頃は森の土になってたところだ」
「あ、いえ! お役に立ててよかったです。僕はカイル。こっちは相棒のシリウスです」
カイルが自己紹介をすると、ライオットは焚き火の脇に転がっているシルキー・ラビットの毛皮を見て、感心したように眉を上げた。
「シルキー・ラビットを仕留めるなんて、見かけによらず腕が立つんだな、カイル」
「あ、これは僕じゃなくて、シリウスが頑張ってくれたおかげなんです」
ライオットは少し意外そうな顔をしたが。
「ワーウルフの個体がシルキー・ラビットを倒すか。ワーウルフは群の統率によって真価を発揮するが、単体なら下級冒険者でも討伐可能なんだがな。珍しい毛色をしているが、特殊な個体なんだろうか」
「分からないですけど、シリウスは凄いんです!」
カイルがシリウスの頭を撫でる。
その光景を見ていたライオットは、すぐに真剣な表情に戻った。
「シリウスと言ったか?そのワーウルフが強いとしてもだ、こんな場所にその軽装で来るのは感心しないぜ。ここは上級者向けの森だ。もう暗くなるから、さっさと森を出たほうがいい」
ライオットに指摘され、カイルは彼の姿をまじまじと見た。
ライオットさんこそ、槍一本で、僕よりもずっと軽装に見えるけど……。
「ああ。俺もこの森を甘く見ていた」
カイルの視線に気づいたのか、ライオットが苦笑いしながら肩をすくめた。
「魔物はどうとでもなったんだが、道に迷って食料と水が尽きるとはな。そのうえ、食料にしようとも、魔物がとんと現れなくなってな。槍術じゃ腹は膨らまねえってわけだ。」
「そうだったんですね。でも、僕はまだ帰れないんです。もっとシルキー・ラビットを討伐しなきゃいけなくて」
ライオットは不思議そうに理由を尋ねた。カイルは正直に、王都のギルドの新人募集での入団を断られ、この森の獲物を持ってくるように条件を出されたことを話した。
それを聞いた瞬間、ライオットの表情が険しくなる。
「おいおい。新人募集でこんな場所に送り込むなんて、そのギルドは碌なもんじゃないぞ。いいか、夜の森はまた姿を変える。命がいくつあっても足りない。悪いことは言わない、今すぐ街へ戻れ。森の出口まで送ってやるからよ」
ライオットが槍を構えて立ち上がった。
「でも、どうしてもギルドに入る必要があるんです。だから、残ります」
カイルが頑なに答えると、ライオットは呆れたように頭を掻いた。だが、目の前の少年の瞳にある純粋な決意を見て、不敵に笑う。
「そんなにギルドに入りたいのか?」
カイルは力強く頷く。
「なあカイル、お前さえよければ、うちのギルドに来るか?」
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