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外伝
第8話 え、まだなの?!
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魔王城の廊下は緊迫していた。
「そこをどけ」
「まだ会わせられん」
竜殺しの剣を抜いて威嚇する義父、第二形態で応じる姿勢を見せる魔王。授乳中だと言えばいいものを略し過ぎて収集がつかない。その横を平然と通り抜けたのは、カサンドラだった。
「通るわよ、失礼」
何もなかったようにイヴリースの横をすり抜け、ノックして入室した。中から「可愛いわ」と悲鳴に似た賛辞が聞こえてくる。
「なぜ俺は通れんのだ」
「我が愛しのアゼリアの胸を、義父とはいえ異性には見せられん……と言えばいいのですよ」
見ていられないと溜め息を吐いたメフィストが、助太刀をする。元々口数が少ない上、アゼリア以外とはまともに会話が成り立たない主君を擁護するのは、部下として側近として当然の義務だ。そう考えるメフィストの言葉に、アウグストも剣先を収めた。
「なんだ、そういえばいいものを」
ややこしくしおって。文句を言いながらも引くようになったのは、結婚式後のことだ。以前の関係のままなら、話を聞いても引かなかっただろう。
「もういいわよ」
カサンドラが顔を見せて手招くと、そそくさと部屋に戻ったのはイヴリースが早かった。出遅れたアウグストはムッとしながらも大人しく続く。アゼリアに抱き抱えられた孫を見るなり、アウグストの不満顔は蕩けた。
「お、おじいちゃんだぞぉ」
知能が下がったか、ボケたか。思わずメフィストが心配するほど、顔も言葉も崩れた竜殺しの英雄はベッド脇で膝をついた。覗き込んだ赤子の髪色や目の色を確認して、健康そうだと喜んでいる。
「国王ベルンハルト様は、留守番ですか」
よく引き受けたものです。そんなニュアンスの言葉に、カサンドラはからりと笑った。
「あの子が我慢する筈ないでしょう。すぐに追いかけてきますわ。私が近くにいたので、アウグストの動きが早かっただけよ」
ヴィルヘルミーナ王妃は屋敷の奥にいた。というのも、彼女も妊娠して身重なのだ。そのため無理して強引に移動は出来ないし、ベルンハルトに彼女を置いて出かける気はない。少し待てば追いかけてくる。その言葉に肩を竦めたメフィストは、ゴエティアを数人配置した。
転移してくる同盟国の国王を出迎えないわけにいかない。いくら魔王妃の親族であっても、礼を失して困るのは主君イヴリースなのだ。
準備を整えたと思った矢先、飛び込んできたのはルベウス国の元国王夫妻だった。こちらも息子夫婦に国を預けて、姪の子供を見にきたらしい。
「あら、カサンドラ様。お久しぶりですわ」
「先日のお茶会以来ね、ブリュンヒルデ様」
女性達は優雅に挨拶を交わし、赤子を眺めて穏やかに微笑む。男達は感涙しながら肩を叩き合う。苦笑いしたアゼリアが、困ったように切り出した。
「イヴリース、早く名前を決めなくちゃ」
「「「「え? まだなの(か)」」」」
魔王の姫君は生後3日目、まだ名無しのままだった。
「そこをどけ」
「まだ会わせられん」
竜殺しの剣を抜いて威嚇する義父、第二形態で応じる姿勢を見せる魔王。授乳中だと言えばいいものを略し過ぎて収集がつかない。その横を平然と通り抜けたのは、カサンドラだった。
「通るわよ、失礼」
何もなかったようにイヴリースの横をすり抜け、ノックして入室した。中から「可愛いわ」と悲鳴に似た賛辞が聞こえてくる。
「なぜ俺は通れんのだ」
「我が愛しのアゼリアの胸を、義父とはいえ異性には見せられん……と言えばいいのですよ」
見ていられないと溜め息を吐いたメフィストが、助太刀をする。元々口数が少ない上、アゼリア以外とはまともに会話が成り立たない主君を擁護するのは、部下として側近として当然の義務だ。そう考えるメフィストの言葉に、アウグストも剣先を収めた。
「なんだ、そういえばいいものを」
ややこしくしおって。文句を言いながらも引くようになったのは、結婚式後のことだ。以前の関係のままなら、話を聞いても引かなかっただろう。
「もういいわよ」
カサンドラが顔を見せて手招くと、そそくさと部屋に戻ったのはイヴリースが早かった。出遅れたアウグストはムッとしながらも大人しく続く。アゼリアに抱き抱えられた孫を見るなり、アウグストの不満顔は蕩けた。
「お、おじいちゃんだぞぉ」
知能が下がったか、ボケたか。思わずメフィストが心配するほど、顔も言葉も崩れた竜殺しの英雄はベッド脇で膝をついた。覗き込んだ赤子の髪色や目の色を確認して、健康そうだと喜んでいる。
「国王ベルンハルト様は、留守番ですか」
よく引き受けたものです。そんなニュアンスの言葉に、カサンドラはからりと笑った。
「あの子が我慢する筈ないでしょう。すぐに追いかけてきますわ。私が近くにいたので、アウグストの動きが早かっただけよ」
ヴィルヘルミーナ王妃は屋敷の奥にいた。というのも、彼女も妊娠して身重なのだ。そのため無理して強引に移動は出来ないし、ベルンハルトに彼女を置いて出かける気はない。少し待てば追いかけてくる。その言葉に肩を竦めたメフィストは、ゴエティアを数人配置した。
転移してくる同盟国の国王を出迎えないわけにいかない。いくら魔王妃の親族であっても、礼を失して困るのは主君イヴリースなのだ。
準備を整えたと思った矢先、飛び込んできたのはルベウス国の元国王夫妻だった。こちらも息子夫婦に国を預けて、姪の子供を見にきたらしい。
「あら、カサンドラ様。お久しぶりですわ」
「先日のお茶会以来ね、ブリュンヒルデ様」
女性達は優雅に挨拶を交わし、赤子を眺めて穏やかに微笑む。男達は感涙しながら肩を叩き合う。苦笑いしたアゼリアが、困ったように切り出した。
「イヴリース、早く名前を決めなくちゃ」
「「「「え? まだなの(か)」」」」
魔王の姫君は生後3日目、まだ名無しのままだった。
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