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外伝
第9話 名付けの候補リスト
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「リストの中から選べば良いのだが」
イヴリースが言い訳がましく呟く。呆れ顔のアゼリアが返した。
「だってリストが長くて、まだ読み終わってないんだもの」
候補リストと呼ばれる名前一覧表は、筒状に巻かれていた。片手で持てる太さを超えた紙が、ころりと転がる。予想外に細かい文字でびっしりと候補が並んでいた。というか、呪文にしか見えない。細かいが綺麗な文字だった。
確かにこの量は、読み物と言える。下手な小説本より文字数が多いだろう。
「どうしてこうなっちゃったの」
カサンドラが苦笑いしながら、紙筒を拾って巻き始めた。ついでに読んでいくが、名前には細かに由来や古代語での意味が追記されていて、なかなかに興味深い。思わず読み始めた母をよそに、アゼリアが苦笑いする。
「直感で決めてよ、イヴリース」
番からのご指名とあれば応えるのが魔王だが、今回ばかりは初めての優柔不断だった。普段はすぱっと決めて、悩まない。しかし可愛い我が子だ。それも美しく愛しいアゼリアが生んだ子となれば、適当な名は選べなかった。
「明日、までに……」
「任せるわ。やっぱり名付け親は父親がいいと思うの」
「……俺じゃだめか」
「お父様はセンスがないもの。私達の名前だってお母様が決めたじゃない」
孫の名付けを名乗り出る前に、切り捨てられるアウグスト。孫の顔を覗きながら、ベッドの端に撃沈した。竜殺しを言葉ひとつで潰した魔王妃は、小さく欠伸をする。親しい人の顔を見たら、気が緩んでしまった。
「この子は見ているから、少し休みなさい」
母カサンドラに姫を預け、アゼリアは言われた通りに横になる。1時間ほどで授乳に起こされるが、貴重な睡眠時間だった。目を閉じるとすぐに寝息が漏れ、アウグストは乱暴にベッド脇から引き剥がされた。
「我が妃の寝顔を見る権利はない」
「俺の娘だぞ」
「もう余の妃だ」
口喧嘩を小声でするあたり、2人も気を使った。だがカサンドラに蹴り出される。そのまま姫も一緒に客間に移動となった。
「可愛いわね」
「目元が姉上に似ているぞ」
ブリュンヒルデやノアールも、姫を褒めるため魔王はご機嫌だ。メフィストは賑やかな客間にお茶の手配をし、知らせに走ったゴエティアの一員に頷いた。
「クリスタの国王陛下ならびに王妃殿下が到着なさいました」
「っ、この子がアゼリアの?」
「すっごい可愛いじゃない」
駆け込んだ妹溺愛の兄は感涙し、その妻である兎獣人は長い耳を使って赤子の気を引く。後ろに従うアウエンミュラー侯爵が、そっと記録を撮り続けていた。
「何をしているのですか?」
「戦いに勝って護衛の任をいただきましたので、敗者となった方々に姫のご尊顔を、と」
クリスタ国宰相の奇妙な行動に納得がいったメフィストが頷く。あの国は英雄や強者が多く集まるが、こういった勝ち抜きだと頭のいい者が抜きん出ることがある。今回もその口だろう。ある意味、現場にいたような察しの良さでメフィストは頷いた。
イヴリースは候補の名前をぶつぶつと呟き、姫を覗き込んでいる。その姿は呪術師のようで、魔王という肩書きに相応しいおどろおどろしさを醸し出していた。
イヴリースが言い訳がましく呟く。呆れ顔のアゼリアが返した。
「だってリストが長くて、まだ読み終わってないんだもの」
候補リストと呼ばれる名前一覧表は、筒状に巻かれていた。片手で持てる太さを超えた紙が、ころりと転がる。予想外に細かい文字でびっしりと候補が並んでいた。というか、呪文にしか見えない。細かいが綺麗な文字だった。
確かにこの量は、読み物と言える。下手な小説本より文字数が多いだろう。
「どうしてこうなっちゃったの」
カサンドラが苦笑いしながら、紙筒を拾って巻き始めた。ついでに読んでいくが、名前には細かに由来や古代語での意味が追記されていて、なかなかに興味深い。思わず読み始めた母をよそに、アゼリアが苦笑いする。
「直感で決めてよ、イヴリース」
番からのご指名とあれば応えるのが魔王だが、今回ばかりは初めての優柔不断だった。普段はすぱっと決めて、悩まない。しかし可愛い我が子だ。それも美しく愛しいアゼリアが生んだ子となれば、適当な名は選べなかった。
「明日、までに……」
「任せるわ。やっぱり名付け親は父親がいいと思うの」
「……俺じゃだめか」
「お父様はセンスがないもの。私達の名前だってお母様が決めたじゃない」
孫の名付けを名乗り出る前に、切り捨てられるアウグスト。孫の顔を覗きながら、ベッドの端に撃沈した。竜殺しを言葉ひとつで潰した魔王妃は、小さく欠伸をする。親しい人の顔を見たら、気が緩んでしまった。
「この子は見ているから、少し休みなさい」
母カサンドラに姫を預け、アゼリアは言われた通りに横になる。1時間ほどで授乳に起こされるが、貴重な睡眠時間だった。目を閉じるとすぐに寝息が漏れ、アウグストは乱暴にベッド脇から引き剥がされた。
「我が妃の寝顔を見る権利はない」
「俺の娘だぞ」
「もう余の妃だ」
口喧嘩を小声でするあたり、2人も気を使った。だがカサンドラに蹴り出される。そのまま姫も一緒に客間に移動となった。
「可愛いわね」
「目元が姉上に似ているぞ」
ブリュンヒルデやノアールも、姫を褒めるため魔王はご機嫌だ。メフィストは賑やかな客間にお茶の手配をし、知らせに走ったゴエティアの一員に頷いた。
「クリスタの国王陛下ならびに王妃殿下が到着なさいました」
「っ、この子がアゼリアの?」
「すっごい可愛いじゃない」
駆け込んだ妹溺愛の兄は感涙し、その妻である兎獣人は長い耳を使って赤子の気を引く。後ろに従うアウエンミュラー侯爵が、そっと記録を撮り続けていた。
「何をしているのですか?」
「戦いに勝って護衛の任をいただきましたので、敗者となった方々に姫のご尊顔を、と」
クリスタ国宰相の奇妙な行動に納得がいったメフィストが頷く。あの国は英雄や強者が多く集まるが、こういった勝ち抜きだと頭のいい者が抜きん出ることがある。今回もその口だろう。ある意味、現場にいたような察しの良さでメフィストは頷いた。
イヴリースは候補の名前をぶつぶつと呟き、姫を覗き込んでいる。その姿は呪術師のようで、魔王という肩書きに相応しいおどろおどろしさを醸し出していた。
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