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外伝
外伝・第2話 夜に焦がれる
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「お茶にしましょう。今日はレモングラスをたくさん見つけたの」
ライラがハーブを取り出しながら話を逸らす。白い羽を外に出したルリアージェが、いそいそとテーブルに向かった。肩に飛び乗るチビドラゴンが、翡翠色の鱗を揺らして頬ずりする。
「ああ、ギョクはお茶より菓子が好きだったな」
笑いながらルリアージェが翡翠の竜を腕に抱く。魔物が跋扈する大陸でドラゴンは強い種族に分類されるが、魔性に勝てる程ではない。連れてきた当初は怯えたが、今では「食べたことがない甘いお菓子をくれる人たち」と好意的な解釈をしていた。
「リア、いい買い物できた?」
ライラが話を向けると、ジルが真剣な顔でルリアージェの反応を窺う。僅かでも別の男の匂いがしたら、暴走しそうだった。
白いテーブルに緑と淡い黄色のクロスをかけ、美しい白磁のポットを並べる。花模様があしらわれた食器は揃いで、ハーブティを入れたカップがそれぞれの前に用意された。ポットをテーブルの中央より手元に近い位置へ置いたリオネルは、向かい側の主人達の様子を見つめる。
仲はいい。肩を抱いたり接吻けたり、これで最後まで押し倒せていないのが不思議なくらいだ。ルリアージェが天然なのもあるが、魔性相手なら手が早かったジルが本命にタジタジなのも原因だった。嫌われるのが怖くて、手が出せないとリシュアに愚痴っていた。
「ああ」
短い返事の後、照れてしまう。どうやら満足いく可愛い下着が見つかったらしい。一緒についていきたかったジルは、そわそわしている。可愛い下着を見せる相手が誰なのか。
「夜着も買ったんでしょう?」
「私が一緒に選んだんですもの、すごくセクシーよ」
パウリーネが意味ありげに笑う。さらに落ち着きが失われるジルが口を開こうとした時、ルリアージェが緊張した面持ちで口を開いた。
「ジル、夜に話がある……から、部屋に……その……来て欲しい」
「もちろん行くよ」
満面の笑みで応えるジルだが、内心は混乱していた。どこまでもお似合いの鈍いカップルである。彼らの状態をヤキモキして見ていた側近達も、いまは放置気味だった。
外から騒いでも悪い結果に繋がるだけというライラの言葉もあるが、長く生きて寿命の感覚がないため、魔性には焦る感覚がない。くっつくべき運命なら、時間はかかってもくっつくはず。それが1年なのか100年単位なのか。どちらにしてもルリアージェに寿命がなくなった今、関係ない話だった。
「お茶のお菓子、ミモーネの実を使ったタルトよ。リアは好きでしょう?」
酸っぱい柑橘系の果物をふんだんに使ったタルトを並べる。ライラの言葉に、真っ赤になった頬を押さえるルリアージェが頷いた。慣れた手つきでリオネルが切り分け、リシュア経由で目の前に置かれる。
使われた皿は有名な作家の手書きで、王族のコレクションでもおかしくない逸品揃いだ。連作の絵皿はパウリーネのコレクションのひとつだった。魔性の感覚では高額品であろうと気に入れば手元に置き、当たり前のように日常で使用する。
高額だからと仕舞いこんだり、壁や棚に並べる習性はなかった。新しいカップが用意され、今度は甘い香りのする紅茶が注がれる。豪華なカップや食器に最初は物おじしていたルリアージェも、10年経てば慣れてしまう。
お気に入りの茶器と香りのいい紅茶、美味しいお菓子――食事の必要がないからこそ、大切にされるお茶の時間を気分よく過ごし、ルリアージェは暮れていく太陽を見送った。訪れる夜に胸を高鳴らせながら……。
ライラがハーブを取り出しながら話を逸らす。白い羽を外に出したルリアージェが、いそいそとテーブルに向かった。肩に飛び乗るチビドラゴンが、翡翠色の鱗を揺らして頬ずりする。
「ああ、ギョクはお茶より菓子が好きだったな」
笑いながらルリアージェが翡翠の竜を腕に抱く。魔物が跋扈する大陸でドラゴンは強い種族に分類されるが、魔性に勝てる程ではない。連れてきた当初は怯えたが、今では「食べたことがない甘いお菓子をくれる人たち」と好意的な解釈をしていた。
「リア、いい買い物できた?」
ライラが話を向けると、ジルが真剣な顔でルリアージェの反応を窺う。僅かでも別の男の匂いがしたら、暴走しそうだった。
白いテーブルに緑と淡い黄色のクロスをかけ、美しい白磁のポットを並べる。花模様があしらわれた食器は揃いで、ハーブティを入れたカップがそれぞれの前に用意された。ポットをテーブルの中央より手元に近い位置へ置いたリオネルは、向かい側の主人達の様子を見つめる。
仲はいい。肩を抱いたり接吻けたり、これで最後まで押し倒せていないのが不思議なくらいだ。ルリアージェが天然なのもあるが、魔性相手なら手が早かったジルが本命にタジタジなのも原因だった。嫌われるのが怖くて、手が出せないとリシュアに愚痴っていた。
「ああ」
短い返事の後、照れてしまう。どうやら満足いく可愛い下着が見つかったらしい。一緒についていきたかったジルは、そわそわしている。可愛い下着を見せる相手が誰なのか。
「夜着も買ったんでしょう?」
「私が一緒に選んだんですもの、すごくセクシーよ」
パウリーネが意味ありげに笑う。さらに落ち着きが失われるジルが口を開こうとした時、ルリアージェが緊張した面持ちで口を開いた。
「ジル、夜に話がある……から、部屋に……その……来て欲しい」
「もちろん行くよ」
満面の笑みで応えるジルだが、内心は混乱していた。どこまでもお似合いの鈍いカップルである。彼らの状態をヤキモキして見ていた側近達も、いまは放置気味だった。
外から騒いでも悪い結果に繋がるだけというライラの言葉もあるが、長く生きて寿命の感覚がないため、魔性には焦る感覚がない。くっつくべき運命なら、時間はかかってもくっつくはず。それが1年なのか100年単位なのか。どちらにしてもルリアージェに寿命がなくなった今、関係ない話だった。
「お茶のお菓子、ミモーネの実を使ったタルトよ。リアは好きでしょう?」
酸っぱい柑橘系の果物をふんだんに使ったタルトを並べる。ライラの言葉に、真っ赤になった頬を押さえるルリアージェが頷いた。慣れた手つきでリオネルが切り分け、リシュア経由で目の前に置かれる。
使われた皿は有名な作家の手書きで、王族のコレクションでもおかしくない逸品揃いだ。連作の絵皿はパウリーネのコレクションのひとつだった。魔性の感覚では高額品であろうと気に入れば手元に置き、当たり前のように日常で使用する。
高額だからと仕舞いこんだり、壁や棚に並べる習性はなかった。新しいカップが用意され、今度は甘い香りのする紅茶が注がれる。豪華なカップや食器に最初は物おじしていたルリアージェも、10年経てば慣れてしまう。
お気に入りの茶器と香りのいい紅茶、美味しいお菓子――食事の必要がないからこそ、大切にされるお茶の時間を気分よく過ごし、ルリアージェは暮れていく太陽を見送った。訪れる夜に胸を高鳴らせながら……。
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