【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
78 / 321

77.マナーも覚えるね

しおりを挟む
「はぁ? 猫用の籠だと? なんで俺がそんなの……っ、くそ。わかったよ」

 今日もゲリュオンはご飯を運んできてくれた。いつも思うんだけど、ゲリュオンは扉から入ってこないよね。いつの間にかお部屋にいるの。今日はセティが何か頼んだみたい。猫用の籠って、どんなのだろう。

「イシス、ご飯だぞ」

「うん! ゲリュオンも一緒?」

 たくさんあるから、一緒に食べよう。お礼と一緒にそう伝えたら、セティが変な顔をした。ゲリュオンがセティに苦笑いして、両手を挙げる。あれは何もしないよ、って示す仕草だよね。あとごめんなさいの時も使うみたい。

「……ああ、一緒……なんだよ、いいだろ」

 僕に話しかけてたのに、途中からむっとした口調でセティに突っかかる。セティとつないだ手に力を入れてしまった。僕を見たセティが肩を竦める。

「構わん。イシスのマナーの勉強中だ。行儀よく食べろよ」

「げっ……努力する」

 ゲリュオンもマナー苦手なの? 僕と一緒だ。右手のナイフと左手のフォークを使うのって、結構大変だよ。こないだもお肉が落ちそうになったし。面倒だから大きいまま齧れば楽だけど、それもダメだった。お行儀よい子になるのは、まだ時間かかりそう。

 並んだご飯を前に両手の指をからめてお祈りする。神様にお礼を言って、並んだ食べ物を眺めた。普通の椅子に座るとテーブルが高すぎるから、僕はセティのお膝だ。マナーも後ろから手を握って直してくれるし、この位置がいいんだって。

 果物と大きなお肉の塊、それから野菜とお鍋があった。

「果物は後だな。肉を切り分けてみろ」

 僕の前のお皿に、スライスしたお肉が置かれた。厚くて中が赤い。魔獣のお肉と説明されて、慌てて振り返った。もしかしてセティの狼じゃないよね?

「安心しろ、狼じゃない」

「うん。それなら食べる」

 フォンと同じ灰色の毛皮の狼だったら食べられないよ。子猫のトムが足元でじっと見上げてくる。でも猫のご飯は人間の後に決まってるの。主人とペットの順位と聞いたけど、まだよく分からなかった。お行儀よく座るトムと目が合うと、にゃーと小さな声で鳴く。

「欲しがるから、食事中は構ったらだめだ」

「……気を付けるね」

 そうだよね。ご飯の匂いするから、欲しいと思う。まだ赤ちゃん猫だけどお肉好きみたいだし、早く食べてトムにもご飯あげなくちゃ。

 昨日までに覚えた注意事項をまず復唱する。

「音をさせない、強く押し付けない。引いて切る……えっと」

「楽しく食べろ」

 ゲリュオンが笑いながら付け足した。僕が覚えたのと違う気がするけど、それも正しいマナーなのかな。

「間違ってないな」

 笑ったセティが付け加えて教えてくれた。

「マナーは面倒だが、誰かと食事をするときに相手を不愉快にさせないためだ。オレとイシスだけならいいが、こうやって別の人とご飯食べるときに知らないと困るだろ?」

 ゲリュオンを見ると、綺麗に肉を切っていた。前に食堂でお酒飲みながら食べてた時とは違う。動きが柔らかくて綺麗だった。目を見開いてじっくり眺めて、同じように肉の上に置いたナイフを引く。すっと切れた肉だけど、まだ半分くらい切れてない。

「もう少し力を入れて切ってみろ」

 セティが手を掴んで力の具合を教えてくれた。今日はギコギコした音もなくて、上手に食べられたと思う。果物を剥き始めたゲリュオンが褒めてくれて、セティが撫でる手に頬ずりした。足元でトムが鳴いて、慌てたけど。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

この契約結婚は君を幸せにしないから、破棄して、逃げて、忘れます。

箱根ハコ
BL
誰もが羨む将来の騎士団長候補であるルーヴェルは、怪物を倒したところ、呪われてしまい世にも恐ろしい魔獣へと姿を変えられてしまった。 これまで彼に尊敬の目を向けてきたというのに、人々は恐れ、恋人も家族も彼を遠ざける中、彼に片思いをしていたエルンは言ってしまった。 「僕が彼を預かります!」 僕だけは、彼の味方でいるんだ。その決意とともに告げた言葉がきっかけで、彼らは思いがけず戸籍上の夫婦となり、郊外の寂れた家で新婚生活を始めることになってしまった。 五年後、ルーヴェルは元の姿に戻り、再び多くの人が彼の周りに集まるようになっていた。 もとに戻ったのだから、いつまでも自分が隣にいてはいけない。 この気持ちはきっと彼の幸せを邪魔してしまう。 そう考えたエルンは離婚届を置いて、そっと彼の元から去ったのだったが……。 呪いのせいで魔獣になり、周囲の人々に見捨てられてしまった騎士団長候補✕少し変わり者だけど一途な植物学者 ムーンライトノベルス、pixivにも投稿しています。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。 自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。 番外編はおまけです。 特に番外編2はある意味蛇足です。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...