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本編
206.来たるべき未来が楽しみだわ
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ガブリエラ様やマルグリット達を加えて、後日、お茶会を開くと聞いた。企画したのはマルグリットで、ガブリエラ様が賛同している。私も呼ばれると聞いて、嬉しく感じた。
「あら、ヴィクトーリアを省く必要はありませんわ。義理でも母親なのですから。それに家族の集まりと考えております」
丁寧な口調で、マルグリットが言い切った「家族」という単語。私も好きなの。
「トリアと呼んで」
「これはこれは。私のライバルですか?」
ヤキモチのようにクラウスが口を挟む。くすくすと笑い合う皇族に声を掛ける勇者はいなくて、私達はゆったりと話し込んだ。誰に聞かれてもいい、小さな話ばかり。不思議とこの会話が心地よくて……逃げ込んだフォルト兄様とアデリナを加えて、さらに盛り上がった。
しばらくするとルヴィ兄様がマルグリットを連れに来て、貴族の挨拶を受け始める。お気の毒だわ、皇妃殿下ともなれば逃げられない。そういえば、マルグリットは政に関わるのかしら? そうなら、皇妃陛下とお呼びする必要があるわ。あとで確認しておきましょう。
エック兄様とコルネリアは、優雅に人の間をすり抜けた。挨拶しながら顔を売り、社交する姿はさすがライフアイゼン公爵の孫娘ね。祖父であるライフアイゼン公爵も、この結婚式を見届けたら隠居すると言い出したの。
ルヴィ兄様に合わせて、周囲が徐々に世代交代を始める。脱皮するようにリヒター帝国は生まれ変わり、新しい人材が中核を成すわ。他国からの賓客と他愛ない探り合いをしながら、私も自分の役目を果たしましょう。
皇族として最後の仕事よ。お披露目のあとはクラウスの妻、ローヴァイン公爵夫人になる。そしてマルグリットの補佐官を務めることが決まった。未来は思っていた方向に進まず、予想外の落とし穴を用意することもあるけれど……。
隣の男を見上げる。とろりと甘い視線を向けるクラウスは、私に首ったけなのだと周囲に知らしめていた。柔らかな微笑みを湛えた優男に見えて、実はかなりの策略家なのよ。そう自慢したいけれど、我慢しないといけないわ。
神官服を脱いだ叔父様が、何食わぬ顔でワインを呷っていた。他国の来賓と話しているのに、後ろで意味ありげに微笑まないで。何も知らない若い令嬢が頬を染めているわ。罪作りな方だこと。
結婚届が出ていないと知ったあの日、私は大きく失望した。夫の振りをしていたモーリスではなく、元アディソン国王でもない。自分自身の驕りに気づいて、落胆したのよ。あれからまだ数えるほどの年月を経ていないのに、私は現状を受け入れて馴染んでいる。
「ねえ、クラウス……私を愛している?」
来賓の言葉を遮って、突然尋ねた。目を見開くような仕草はなく、甘やかす笑みを深めてクラウスが口を開く。
「もちろんです、我が姫。あなたを手に入れるためなら、どこぞの国も滅ぼして捧げて見せましょう」
どこぞの国と揶揄されたアルホフ王国の大使が、顔色を変える。直接名指しされたわけでなくても、意味は伝わった。挨拶をしてそそくさと逃げ出す。
「あと二晩も我慢しなくてはならない。俺を煽るとあとが怖いぞ?」
「あら、怖いのも嫌いじゃなくてよ?」
くすくすと笑い合う後ろから、空気を読まないアデリナが飛びつく。
「なんだ、なんだ? 怖い物があるなら排除するぞ」
「アデリナ、勝手に約束するな。それと……たぶん違う話だ」
途中まで聞いていなかったアデリナと違い、フォルト兄様は夜会慣れしている。当然、私達にも聞き耳を立てていたのね。たぶんと誤魔化しながらも、アデリナを引き離そうと試みた。
「来年が楽しみだわ」
誰のところに新しい命が授かるか。国はどう変わるか。帝国が一つの大陸となるのはいつの日か。
侍従を手招き受け取ったグラスを掲げて、わざと音をさせる。チンと軽い音で当てたグラスを呷った。クラウス、アデリナ、フォルト兄様。
「私達も交ぜてもらおうか」
ルヴィ兄様がマルグリットとグラスを掲げ、エック兄様やコルネリアも戻って来る。当たり前のようにお父様が「乾杯」と音頭を取り、ガブリエラ様や叔父様が思い思いに酒を流し込む。この幸せがずっと続きますように。心の底からそう願った。
「あら、ヴィクトーリアを省く必要はありませんわ。義理でも母親なのですから。それに家族の集まりと考えております」
丁寧な口調で、マルグリットが言い切った「家族」という単語。私も好きなの。
「トリアと呼んで」
「これはこれは。私のライバルですか?」
ヤキモチのようにクラウスが口を挟む。くすくすと笑い合う皇族に声を掛ける勇者はいなくて、私達はゆったりと話し込んだ。誰に聞かれてもいい、小さな話ばかり。不思議とこの会話が心地よくて……逃げ込んだフォルト兄様とアデリナを加えて、さらに盛り上がった。
しばらくするとルヴィ兄様がマルグリットを連れに来て、貴族の挨拶を受け始める。お気の毒だわ、皇妃殿下ともなれば逃げられない。そういえば、マルグリットは政に関わるのかしら? そうなら、皇妃陛下とお呼びする必要があるわ。あとで確認しておきましょう。
エック兄様とコルネリアは、優雅に人の間をすり抜けた。挨拶しながら顔を売り、社交する姿はさすがライフアイゼン公爵の孫娘ね。祖父であるライフアイゼン公爵も、この結婚式を見届けたら隠居すると言い出したの。
ルヴィ兄様に合わせて、周囲が徐々に世代交代を始める。脱皮するようにリヒター帝国は生まれ変わり、新しい人材が中核を成すわ。他国からの賓客と他愛ない探り合いをしながら、私も自分の役目を果たしましょう。
皇族として最後の仕事よ。お披露目のあとはクラウスの妻、ローヴァイン公爵夫人になる。そしてマルグリットの補佐官を務めることが決まった。未来は思っていた方向に進まず、予想外の落とし穴を用意することもあるけれど……。
隣の男を見上げる。とろりと甘い視線を向けるクラウスは、私に首ったけなのだと周囲に知らしめていた。柔らかな微笑みを湛えた優男に見えて、実はかなりの策略家なのよ。そう自慢したいけれど、我慢しないといけないわ。
神官服を脱いだ叔父様が、何食わぬ顔でワインを呷っていた。他国の来賓と話しているのに、後ろで意味ありげに微笑まないで。何も知らない若い令嬢が頬を染めているわ。罪作りな方だこと。
結婚届が出ていないと知ったあの日、私は大きく失望した。夫の振りをしていたモーリスではなく、元アディソン国王でもない。自分自身の驕りに気づいて、落胆したのよ。あれからまだ数えるほどの年月を経ていないのに、私は現状を受け入れて馴染んでいる。
「ねえ、クラウス……私を愛している?」
来賓の言葉を遮って、突然尋ねた。目を見開くような仕草はなく、甘やかす笑みを深めてクラウスが口を開く。
「もちろんです、我が姫。あなたを手に入れるためなら、どこぞの国も滅ぼして捧げて見せましょう」
どこぞの国と揶揄されたアルホフ王国の大使が、顔色を変える。直接名指しされたわけでなくても、意味は伝わった。挨拶をしてそそくさと逃げ出す。
「あと二晩も我慢しなくてはならない。俺を煽るとあとが怖いぞ?」
「あら、怖いのも嫌いじゃなくてよ?」
くすくすと笑い合う後ろから、空気を読まないアデリナが飛びつく。
「なんだ、なんだ? 怖い物があるなら排除するぞ」
「アデリナ、勝手に約束するな。それと……たぶん違う話だ」
途中まで聞いていなかったアデリナと違い、フォルト兄様は夜会慣れしている。当然、私達にも聞き耳を立てていたのね。たぶんと誤魔化しながらも、アデリナを引き離そうと試みた。
「来年が楽しみだわ」
誰のところに新しい命が授かるか。国はどう変わるか。帝国が一つの大陸となるのはいつの日か。
侍従を手招き受け取ったグラスを掲げて、わざと音をさせる。チンと軽い音で当てたグラスを呷った。クラウス、アデリナ、フォルト兄様。
「私達も交ぜてもらおうか」
ルヴィ兄様がマルグリットとグラスを掲げ、エック兄様やコルネリアも戻って来る。当たり前のようにお父様が「乾杯」と音頭を取り、ガブリエラ様や叔父様が思い思いに酒を流し込む。この幸せがずっと続きますように。心の底からそう願った。
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