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本編
207.大きな変貌を遂げた世界で(最終話)
盛大な皇族四組の結婚式から十五年あまり、世界は大きく変貌した。元王国であったアディソン領とブリュート領は完全に併合され、一領地として侯爵家や伯爵家が治めている。十年程前にイエンチュ王国は解体され、各部族が伯爵位を授かって変わらぬ生活を続けた。
遅れること一年、シュナイト王国の代替わりした新王は同化政策を受け入れ、穏やかにリヒター帝国の公爵家となって存続を図る。この時点で、大陸の半分以上がリヒター帝国となった。
シュナイトに遅れること三年、アルホフ王国は雪による大規模災害で国の制度が破綻。助けの手を求められたリヒター帝国の支援を受け、王族はリヒター帝国への従属を誓った。アルホフ王国は解体され、新たな領地として開拓が続いている。
孤立したデーンズ王国は危機感を高め、戦いを挑んだ。元帥エーデルシュタイン大公の活躍で、国境が大きく変動した。妻となったアデリナ大公妃の功績は多大であり、褒美として元デーンズ王国を与えられる。半島の先まで逃げた王族は追い詰められて投降、すべて大公領になった。
意外だったのが、プロイス王国だ。かつてリヒター帝国に皇妃候補を立てたが、諸事情により取り消された。その恨みを募らせた王国は、大陸制覇まで秒読みの帝国へ宣戦布告……これがつい先日のこと。
記した紙を確認し、抜けがないか確認する。多少あったとしても、あとでトリアお母様が直してくれるわ。お任せしましょう。
私はジルヴィア・クリスティーネ・リヒテンシュタイン。広大な大陸を統治したリヒテンシュタット帝国の末裔であり、正統なるリヒター帝国の後継者よ。実母譲りの銀髪はさらりと柔らかく背を流れ、帝国の青を宿した瞳は皇族の証として輝く。
つんと上を向いた鼻、ほんのりと色をのせた頬、やや額が狭い。美しいトリアお母様に似た顔立ちは幸いね。ややブラウンがかった肌は艶があり、銀髪との相性が最高なのよ。つまり、鏡の中で毎日出会う美少女が私自身ね。
マルグリットお母様は厳しく優しく、私に必要な知識と教養を与えてくれる。皇帝陛下であるお父様は、いつも穏やかでお手本にしているわ。弟と妹が一人ずついるけれど、仲良く過ごしている。私だけ二人もお母様がいるのは狡い、と妹に文句を言われた。返答に困るわ。
弟は絵を描くのが好きで、いずれは画家になりたいと口にした。妹はお嫁に行って楽をして過ごすのよ、と笑った。どちらも皇位継承に興味はなさそう。私が継ぐ道は確定している。
歴史書の一部に加える文章を書いたけれど、短くまとめすぎたかしら? もう少し内容を詳しく書くべきよね。エックおじ様は宰相を続けていて、大公妃のコルネリア様はよくお茶会に招いてくれる。社交界で発言権が強いの。有力なお友達を作る方法を教えてもらっているわ。
マルグリットお母様は政関係の情報だったり、外交の対応方法だったり。得難い話をしてくれるの。お陰で難しいお話も理解できるようになったわ。宰相のエックおじ様と大臣の侯爵が話している内容に、新しい提案をしたら驚かれた。
考え方の基本はトリアお母様ね。策略家という単語がぴったりな方で、人の裏をかくのがお好きみたい。ローヴァイン公爵クラウスおじ様は情報集めが得意で、他国の珍しい話を聞かせてくれるから大好きなの。
珍しい話と言えば、アデリナおば様も凄いわね。フォルトおじ様と一緒に、大陸中を移動しているとか。大きな動物の革を使ったテントがあって、それが屋敷だと笑うのよ。驚いてしまったわ。一度でいいから一緒に旅をして、そのテントに泊まってみたい。
おじい様とおばあ様は、二年前に遠くへ越してしまったの。それまでは一緒にお食事もしたし、私の勉強のサポートもしてくれた。老いた姿をいつまでも晒すのは忍びないと、納得できない理由で海辺へ越したけれど……絶対に魚介類が美味しいからだと思うわ。
大神官のウルリヒ大おじ様は、もうすぐ代替わりするみたい。思い留まってほしい神殿から、私に「何とかしてくれ」と手紙が来たの。その話をしたら、トリアお母様も受け取っていた。私とトリアお母様に甘いんですって。
付け足して書いた文面を前に、私は首を傾げた。思っていた内容と違ってしまったわ。まとめて書き直しましょう。ひとまずこれは私の日記に挟んで、大切に保管しなきゃ。
大好きな家族のことを記した文章ですもの。半分に畳んだ紙を手に、私は与えられた勉強部屋を出る。廊下でマルグリットお母様と会って、妹に抱き着かれて……笑いながら扉を閉めた。
私の幸せな日々は、きっとこのまま続く。
終わり
*********************
完結になります。お付き合いいただき、ありがとうございました。モーリスのその後とか、他国のあれこれとか、併合に関する事件など。番外編で書いてUPしたいなと思っています。最後を娘の手記で終わるのは決めていたので、ようやくここまで書けてほっとしました。
明日から番外編です。もう少しお付き合いくださいませ_( _*´ ꒳ `*)_
遅れること一年、シュナイト王国の代替わりした新王は同化政策を受け入れ、穏やかにリヒター帝国の公爵家となって存続を図る。この時点で、大陸の半分以上がリヒター帝国となった。
シュナイトに遅れること三年、アルホフ王国は雪による大規模災害で国の制度が破綻。助けの手を求められたリヒター帝国の支援を受け、王族はリヒター帝国への従属を誓った。アルホフ王国は解体され、新たな領地として開拓が続いている。
孤立したデーンズ王国は危機感を高め、戦いを挑んだ。元帥エーデルシュタイン大公の活躍で、国境が大きく変動した。妻となったアデリナ大公妃の功績は多大であり、褒美として元デーンズ王国を与えられる。半島の先まで逃げた王族は追い詰められて投降、すべて大公領になった。
意外だったのが、プロイス王国だ。かつてリヒター帝国に皇妃候補を立てたが、諸事情により取り消された。その恨みを募らせた王国は、大陸制覇まで秒読みの帝国へ宣戦布告……これがつい先日のこと。
記した紙を確認し、抜けがないか確認する。多少あったとしても、あとでトリアお母様が直してくれるわ。お任せしましょう。
私はジルヴィア・クリスティーネ・リヒテンシュタイン。広大な大陸を統治したリヒテンシュタット帝国の末裔であり、正統なるリヒター帝国の後継者よ。実母譲りの銀髪はさらりと柔らかく背を流れ、帝国の青を宿した瞳は皇族の証として輝く。
つんと上を向いた鼻、ほんのりと色をのせた頬、やや額が狭い。美しいトリアお母様に似た顔立ちは幸いね。ややブラウンがかった肌は艶があり、銀髪との相性が最高なのよ。つまり、鏡の中で毎日出会う美少女が私自身ね。
マルグリットお母様は厳しく優しく、私に必要な知識と教養を与えてくれる。皇帝陛下であるお父様は、いつも穏やかでお手本にしているわ。弟と妹が一人ずついるけれど、仲良く過ごしている。私だけ二人もお母様がいるのは狡い、と妹に文句を言われた。返答に困るわ。
弟は絵を描くのが好きで、いずれは画家になりたいと口にした。妹はお嫁に行って楽をして過ごすのよ、と笑った。どちらも皇位継承に興味はなさそう。私が継ぐ道は確定している。
歴史書の一部に加える文章を書いたけれど、短くまとめすぎたかしら? もう少し内容を詳しく書くべきよね。エックおじ様は宰相を続けていて、大公妃のコルネリア様はよくお茶会に招いてくれる。社交界で発言権が強いの。有力なお友達を作る方法を教えてもらっているわ。
マルグリットお母様は政関係の情報だったり、外交の対応方法だったり。得難い話をしてくれるの。お陰で難しいお話も理解できるようになったわ。宰相のエックおじ様と大臣の侯爵が話している内容に、新しい提案をしたら驚かれた。
考え方の基本はトリアお母様ね。策略家という単語がぴったりな方で、人の裏をかくのがお好きみたい。ローヴァイン公爵クラウスおじ様は情報集めが得意で、他国の珍しい話を聞かせてくれるから大好きなの。
珍しい話と言えば、アデリナおば様も凄いわね。フォルトおじ様と一緒に、大陸中を移動しているとか。大きな動物の革を使ったテントがあって、それが屋敷だと笑うのよ。驚いてしまったわ。一度でいいから一緒に旅をして、そのテントに泊まってみたい。
おじい様とおばあ様は、二年前に遠くへ越してしまったの。それまでは一緒にお食事もしたし、私の勉強のサポートもしてくれた。老いた姿をいつまでも晒すのは忍びないと、納得できない理由で海辺へ越したけれど……絶対に魚介類が美味しいからだと思うわ。
大神官のウルリヒ大おじ様は、もうすぐ代替わりするみたい。思い留まってほしい神殿から、私に「何とかしてくれ」と手紙が来たの。その話をしたら、トリアお母様も受け取っていた。私とトリアお母様に甘いんですって。
付け足して書いた文面を前に、私は首を傾げた。思っていた内容と違ってしまったわ。まとめて書き直しましょう。ひとまずこれは私の日記に挟んで、大切に保管しなきゃ。
大好きな家族のことを記した文章ですもの。半分に畳んだ紙を手に、私は与えられた勉強部屋を出る。廊下でマルグリットお母様と会って、妹に抱き着かれて……笑いながら扉を閉めた。
私の幸せな日々は、きっとこのまま続く。
終わり
*********************
完結になります。お付き合いいただき、ありがとうございました。モーリスのその後とか、他国のあれこれとか、併合に関する事件など。番外編で書いてUPしたいなと思っています。最後を娘の手記で終わるのは決めていたので、ようやくここまで書けてほっとしました。
明日から番外編です。もう少しお付き合いくださいませ_( _*´ ꒳ `*)_
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