【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)今年は7冊!

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81.大人になるのに一千年

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「まあ、結局のところ……大人になるのに一千年近くかかったんだ」

 美しく光を反射する銀鱗を日に当てながら、僕は懐かしく思う。妹のレラジェは結婚して、可愛い子を三匹も産んだ。全部青色の子だったよ。キマリスはまだ結婚していない。でも好きな子がいて、まだ伝えてなかった。少し臆病なんだよね。

「へぇ、伯父さんは魔王陛下の番なんでしょう?」

 にこにこと笑いながら無邪気に尋ねるのは、レラジェの子だ。確か末っ子だったかな。魔王陛下はベル様のことだ。僕は今もベル様のお名前をきちんと発音できない。でもベル様が強すぎるから仕方ないの。

「そうだね」

 番という単語は、大人になって覚えた。奥さんは今も僕達だけの特別な言葉だけど、外では番を使う。僕だけの旦那さんは、いまお魚を捕まえに出掛けていた。僕はお家でお留守番だ。

 ずっと同じ洞窟で暮らしてきたけれど、二百年くらい前に崩れてしまった。魔法で強化していたのに、大雨で縦穴が埋まったのだ。周囲の土砂が崩れて流れ込んだので諦めた。掘り返すのに数ヶ月かかりそうだったし。

 新しいお家は、過去に人間が作った建物だ。洞窟の中を掘ったらしく、奥は広い。入り口に屋根が付けられ、見た目も気に入った。大きな巣を作り、ベル様と一緒に寝転がるのが、一番の幸せかな。

「ふーん、えっちはできたの?」

 いろいろ話した内容を覚えているのは賢い。だけど、聞かれると照れてしまう質問だった。やや赤くなった頬を手で隠しながら、小さく頷く。えっちは……できた。

 大きくなりたかった僕だけど、実際に大きくなったら困ってしまった。えっちは大きさが違いすぎると出来ないと教えてもらったのだ。慌てる僕に、ベル様は「秘密だ」と魔法を使った。大きさが変わる魔法があるなら、僕が小さくて悩んでる時にも使ってほしかったな。

「帰ったぞ」

「お帰りなさい! ベル様」

 もう、ぺたぺた走ることはない。身を起こして一歩ずつ近づき、ベル様の前に鼻先を突き出した。ぽんぽんと叩いて撫でる手は温かい。もう抱っこしてもらえる大きさじゃないけれど、今でもベル様は僕を抱きしめてくれる。

「来ていたのか」

「もう帰る時間だから」

 またねと挨拶して、甥っ子をレラジェのところへ送る。魔法で一瞬だった。ベル様に教わって、僕は魔法を使える。ドラゴンの中で、きっと僕くらいだと思う。

「ウェパル、風呂に入ろう」

「うん!」

 洞窟の奥に、僕が掘った穴がある。そこへベル様が魔法でお湯を引いた。近くの山で湧いた温泉だ。お父さんの巣穴みたいな匂いがする。これは温泉の匂いだったんだって。

 一千年生きて、いろいろ覚えた。魔法もえっちも魔族についても。僕は魔王様の奥さんに相応しくなれたのかな。尻尾を揺らしながらお湯に浸り、ベル様を鱗の上に乗せた。

「ベル様、あのね……」

「なんだ? 今日は旦那さんと呼んでくれないのか」

 残念そうに言われ、僕は温泉の温度より熱くなる。顔が真っ赤になったかも。僕がベル様を「旦那さん」と呼ぶのは、えっちをする日の合図だ。二人きりの時しか呼べないし、特別な言葉だった。照れながら、僕はベル様に顔を近づける。

「旦那さん、今日も一緒に……寝てくれる?」

「ああ、もちろんだ。可愛い俺の奥さん」

 了承の合図である「奥さん」と呼ばれ、体の奥がむずむずする。僕はベル様と出会っていろいろ変わった。それを幸せだと思うんだ。
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