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82.永遠に魂を縛る(ベルSIDE)最終話
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早く大きくなって、大人扱いされたい。幼い伴侶はそう願うが、実際に大きくなって困惑しているのが分かった。成長速度の遅いウェパルは、一千年近くかけて大人になった。この調子なら、俺の魔力量を考えても同時期に寿命が尽きそうだ。
寂しがり屋のウェパルを置いていく気はないので、寿命を分かち合う魔術を使おうと考えていた。ミスが起きないよう魔法陣を調べていると、ぺたりと背中に鼻先を押し付けてくる。巣の上で振り返った俺にすり寄り、もじもじと体を揺らす。大きな体になっても、仕草や言動は幼いままだった。
何とも愛らしい。このまま伴侶として彼を独占できる幸運のため、俺は前の世界で苦労したのだ。そう信じてしまうほど、今が幸せだった。
「あのね、ベル様」
「どうした?」
確認途中の魔法陣を片付けた。今のウェパルは立派な成竜だ。うっかり触って発動させても困る。俺との間で共鳴する分にはいいが、近くの昆虫や動物と分かち合われたら目も当てられない。いつも小さなドジを繰り返すウェパルのため、俺の危険を回避する能力は上がっていた。
「僕、えっちしたい」
「は?」
時が止まるとはこのことか。何を言われたのか理解できず……いや、理解したが故に固まってしまった。えっち……何とも可愛い表現だが、内容は大人だ。もじもじする仕草や頬を染めた感じから、知らずに口にした可能性はなさそうだが?
「突然どうした」
「僕はベル様のお嫁さんで、奥さんでしょ?」
「ああ」
「だったら、えっちしたい」
思考が子どものままなのか、大人とイコールになった結論が極端すぎる。だが「まだ早い」と遠ざける時期が過ぎたのも事実だった。大切にこのまま守りたい気持ちと、奪い尽くしたい本音がせめぎ合う。俺を見下ろす大きさに成長したのに、必ず目線を合わせようと屈むウェパル。
今もぺたりと伏せて腹を床に付けていた。巨大な体は竜の長であった祖父ラウムを越え、竜族最大だ。耳をぺたりと倒し、お伺いを立てる姿は小さい頃と変わらなかった。その耳の脇を掻いてやり、頭を撫でる。簡単に背中の棘を撫でてやれた時期は過ぎたが……。
「大きさが違うのはわかるか?」
「うん」
「人化はまだ出来ないのだろう?」
「う、ん」
歯切れが悪くなる返事に、断られると思った様子が窺える。ゆらゆらと高い位置で揺れていた尻尾が、地上すれすれを撫でていた。意地悪が過ぎたか。反省しながら、ウェパルの眉間へ魔法陣をひとつ貼り付けた。魔力を流す。
「これで俺と同じ大きさになれる。本当にいいんだな?」
「うん!」
嬉しそうな大声と逆に、体はするすると小さくなった。干し草を敷いた巣の外、地面にぺたんと座ったウェパルは大きな目を瞬く。銀の鱗が透ける皮膚を不思議そうに撫で、二本足で立とうとして転びかけた。支えるより前に、尻尾がウェパルの転倒を防ぐ。驚異のバランス感覚だった。
「どこか痛くないか」
「平気、ベル様……人間みたい、くなった?」
人間みたいと言いかけて、途中で人間っぽくなった? と問い直したのか。混じって奇妙な言葉を作り出す。それもまた可愛いと手を伸ばし、巣の上に引き上げた。今まではウェパルにぴったりだった巨大な巣が、広いベッドに変わる。
「足、ふしぎ」
歩けないと困惑した顔ながら、手のひらで体の形を確かめている。好きにさせていると、少しして今度は俺を触り始めた。それから目を輝かせ「同じ形だ!」と笑う。ぎざぎざの鋭い牙を覗かせ、無邪気に無防備に抱き着いた。咄嗟に抱き締め返す。すっぽりと腕に収まるウェパルが愛おしかった。
「さあ、抱くぞ」
「うん、えっちは?」
……そこからか。いや、ここは実践あるのみ! 一千年も我慢したのだ、これ以上は暴発しかねない。切実な本音を込めて、深く口付けた。必死で呼吸するその僅かな隙間さえ塞ぎたくなる。何も洩らさず、すべて俺に差し出せ。傲慢にそう思いながらも、手は優しくウェパルを撫でた。
甲高い鳴き声も、愛らしい喘ぎも、ほんのり色づいた銀鱗の肌や汗の匂いまで。すべて奪って与えてひとつになり、最後に寿命を分かち合った。
死ぬまでではなく、死んでからも魂を縛る――俺は強欲な魔王だからな。解放する選択肢は最初からない。覚悟しろよ、ウェパル。
終わり
*********************
完結です_( _*´ ꒳ `*)_お読みいただきありがとうございました。
幼い竜、世界をまたいで召喚された魔王。こういうカップルが好きです(*ノωノ)圧倒的強者と保護される立場……溺愛。おいしい。ヤンデレはもっと好物です←
もう一作「私だけが知らない」も本日、本編完結します。番外編を挟み、新作を準備しております。今後ともお付き合頂ければ幸いです。
寂しがり屋のウェパルを置いていく気はないので、寿命を分かち合う魔術を使おうと考えていた。ミスが起きないよう魔法陣を調べていると、ぺたりと背中に鼻先を押し付けてくる。巣の上で振り返った俺にすり寄り、もじもじと体を揺らす。大きな体になっても、仕草や言動は幼いままだった。
何とも愛らしい。このまま伴侶として彼を独占できる幸運のため、俺は前の世界で苦労したのだ。そう信じてしまうほど、今が幸せだった。
「あのね、ベル様」
「どうした?」
確認途中の魔法陣を片付けた。今のウェパルは立派な成竜だ。うっかり触って発動させても困る。俺との間で共鳴する分にはいいが、近くの昆虫や動物と分かち合われたら目も当てられない。いつも小さなドジを繰り返すウェパルのため、俺の危険を回避する能力は上がっていた。
「僕、えっちしたい」
「は?」
時が止まるとはこのことか。何を言われたのか理解できず……いや、理解したが故に固まってしまった。えっち……何とも可愛い表現だが、内容は大人だ。もじもじする仕草や頬を染めた感じから、知らずに口にした可能性はなさそうだが?
「突然どうした」
「僕はベル様のお嫁さんで、奥さんでしょ?」
「ああ」
「だったら、えっちしたい」
思考が子どものままなのか、大人とイコールになった結論が極端すぎる。だが「まだ早い」と遠ざける時期が過ぎたのも事実だった。大切にこのまま守りたい気持ちと、奪い尽くしたい本音がせめぎ合う。俺を見下ろす大きさに成長したのに、必ず目線を合わせようと屈むウェパル。
今もぺたりと伏せて腹を床に付けていた。巨大な体は竜の長であった祖父ラウムを越え、竜族最大だ。耳をぺたりと倒し、お伺いを立てる姿は小さい頃と変わらなかった。その耳の脇を掻いてやり、頭を撫でる。簡単に背中の棘を撫でてやれた時期は過ぎたが……。
「大きさが違うのはわかるか?」
「うん」
「人化はまだ出来ないのだろう?」
「う、ん」
歯切れが悪くなる返事に、断られると思った様子が窺える。ゆらゆらと高い位置で揺れていた尻尾が、地上すれすれを撫でていた。意地悪が過ぎたか。反省しながら、ウェパルの眉間へ魔法陣をひとつ貼り付けた。魔力を流す。
「これで俺と同じ大きさになれる。本当にいいんだな?」
「うん!」
嬉しそうな大声と逆に、体はするすると小さくなった。干し草を敷いた巣の外、地面にぺたんと座ったウェパルは大きな目を瞬く。銀の鱗が透ける皮膚を不思議そうに撫で、二本足で立とうとして転びかけた。支えるより前に、尻尾がウェパルの転倒を防ぐ。驚異のバランス感覚だった。
「どこか痛くないか」
「平気、ベル様……人間みたい、くなった?」
人間みたいと言いかけて、途中で人間っぽくなった? と問い直したのか。混じって奇妙な言葉を作り出す。それもまた可愛いと手を伸ばし、巣の上に引き上げた。今まではウェパルにぴったりだった巨大な巣が、広いベッドに変わる。
「足、ふしぎ」
歩けないと困惑した顔ながら、手のひらで体の形を確かめている。好きにさせていると、少しして今度は俺を触り始めた。それから目を輝かせ「同じ形だ!」と笑う。ぎざぎざの鋭い牙を覗かせ、無邪気に無防備に抱き着いた。咄嗟に抱き締め返す。すっぽりと腕に収まるウェパルが愛おしかった。
「さあ、抱くぞ」
「うん、えっちは?」
……そこからか。いや、ここは実践あるのみ! 一千年も我慢したのだ、これ以上は暴発しかねない。切実な本音を込めて、深く口付けた。必死で呼吸するその僅かな隙間さえ塞ぎたくなる。何も洩らさず、すべて俺に差し出せ。傲慢にそう思いながらも、手は優しくウェパルを撫でた。
甲高い鳴き声も、愛らしい喘ぎも、ほんのり色づいた銀鱗の肌や汗の匂いまで。すべて奪って与えてひとつになり、最後に寿命を分かち合った。
死ぬまでではなく、死んでからも魂を縛る――俺は強欲な魔王だからな。解放する選択肢は最初からない。覚悟しろよ、ウェパル。
終わり
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完結です_( _*´ ꒳ `*)_お読みいただきありがとうございました。
幼い竜、世界をまたいで召喚された魔王。こういうカップルが好きです(*ノωノ)圧倒的強者と保護される立場……溺愛。おいしい。ヤンデレはもっと好物です←
もう一作「私だけが知らない」も本日、本編完結します。番外編を挟み、新作を準備しております。今後ともお付き合頂ければ幸いです。
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⸜(*´꒳`*)⸝センネン!スゴイ!!
ありがとうございます(´▽`*)ゞヶィレィッッ!! 魔王様、かなり頑張りましたね!