乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~

天木奏音

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7.初めてのお友達(候補)

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「いいですか、お嬢様。今日はちゃんと時間を守ってくださいね」

「わかってるわ。今日は何があろうと、誰に話し掛けられようと、時間を守って下校します!」

「良い心掛けです。お嬢様の時間をいたずらに奪おうとする輩が居たら、どこの誰なのか教えてくださいね?」

「…………善処します!」





(誰だか教えたらその相手はどうなっちゃうんだ……怖いぞこのメイドさん!)



 登校初日に早速リラと約束した下校時間を守れなかった私は、ばっちり叱られたしもはや信用度がマイナスだ。



 どうやらヴィオレッタは、日頃から生徒会の仕事に打ち込むあまり下校時刻を破ってしまうこと度々あり、リラを始めとする公爵家の面々は心配しているようだ。私も皆に心配を掛けるのは不本意なので、重々気を付けなくては。



「でも、生徒会のお仕事を持ち帰らなかったのは良いことですね。この調子でどんどんお仕事を減らしていきましょう」

「そうね。これからは全部抱え込まないで、他の役員に仕事を振り分けていくわ」

「それがいいです。というより、最初からそうであるべきです。ですが、他の役員の方は来るのでしょうか?」

「……なんとかなるよう、祈っていてちょうだい」



 ◇◇◇



 あっという間に午前の授業が終わり、昼休みになった。この時間がなかなか難儀なのだ。



「昼休みが二時間もあるの、どう考えても長すぎじゃない?」



 これから本格的に社交界デビューする年頃の貴族が集っているので、生徒同士が交流するために休み時間が長めに設定されている。



 令嬢たちはちょっとしたお茶会を開いたり、令息たちはチェスや剣の手合わせで仲を深めたりと、時間の使い方は自由だ。



 ヴィオレッタもお茶会に招かれる日がたまにあるようだけど、病み上がりなせいか誰からも誘われず、時間を持て余してしまう。お茶会に誘われたところでボロを出すのが怖くて断ってたと思うけど、誘われないのもちょっと寂しい。



「図書館にでも行ってみようかな。あそこなら、一人で居ても変に思われないよね」



 ここがどの作品の世界か特定するための手掛かりもありそうだし、早速図書館へ足を運ぶことにした。



◇◇◇



「広い……広すぎる……レンタサイクルとかないのか……ないよなぁ……」



 元から図書館が好きなこともあってうきうきで出発したけど、いくら歩いても辿り着けない。



 今ようやく気付いたけど、この学園ってめちゃくちゃ敷地が広い。流石貴族は一味違う。



(他の生徒たちはどうやって移動してるのかな。全然見掛けない……)



 図書館は学生にとって非常に便利な施設なので、こうも人気がないことを疑問に思う。



 私が知らないだけで、昼休みを使った全校集会でも行われてるのだろうか?そんなレベルでハブられてたら泣いて両親に訴えるけど、校舎を出るときにお茶会の準備に取り掛かっているご令嬢をちらほら見掛けたので、それはないと勿論わかっている。



『うにゃー』



 そんなことを考えながら黙々と歩いていると、足元を小さな黒猫が横切った。



(可愛い!……けど、黒猫が横切るのって不吉……!?でもいっか、可愛いから!!)



 黒猫が駆けていった先を見てみると、少し離れたところに東屋があった。見事にモッコウバラが咲き誇っている。



 近付いてみると一人の女生徒が花の手入れをしていて、その子の足元にはさっきの黒猫がじゃれついていた。



(おー、貴族のお嬢様もお花の手入れとかするんだ)



 焦げ茶の長い髪を可愛らしいピンクのリボンで一つに結んだ女生徒は、制服の上にポケットがたくさんついたガーデニング用のエプロンを着用し手袋をはめている。なかなか本格的な装いだ。



 私自身は植物を育てるのはへたくそだけど、前世の母が実家で色んな植物を育てていたので、どことなく馴染み深い。モッコウバラも毎年春になると実家の庭で綺麗に咲いていて、私にとっては桜の時期を終えた後の春の風物詩だった。



 なんだか嬉しくなってそのまま鑑賞していると、女生徒がこちらに気付いて驚いているようなので、思い切って声を掛けることにした。



「ごきげんよう。ここのお花は貴女が育てているの?」

「あ、いえ、庭師の方にお願いして、ちょこっと関わらせていただいてるだけです……!」



 あれ、にこやかに接したハズなのに、怖がられているような……?

 とはいえ会話は成立しているので、ここは臆さずグイグイいってみるとしよう。



「今の季節はモッコウバラが美しいわね。この花を見ると、春が来たのねって思うわ」

「……ミラン様も、そうなのですか?」



 私の事を家名で呼んだので、この子はヴィオレッタを知っているらしい。同級生かな。



「貴女もそうなのね!ふふ、お揃いだわ」

「あ、ありがとうございます。大変恐縮です……!」

「ねぇ、そんなに畏まらないで。この学園に通う以上は、私たちは対等な学生同士なのよ?」

「でも、他の皆様はそれは建前だって……いずれ貴族社会に出るのだから、今のうちから身分はわきまえなさいと」

「困ったさんね、誰がそんなことを言ったのかしら?私はそうは思わないわ」



 この子を逃したら、一日中クラスの誰からも遠巻きにされてさっぱり会話に入れない日々がただ続くだけだ。貴重な話し相手、絶対に逃がしてなるものか。



「貴女が嫌でなければ、またここに来てもいい?」

「ミラン様がよければ、いつでも……!私は授業中以外の時間は、大抵ここにいますので」



 少し躊躇っていたけど、緊張しつつもそう返してくれたので、笑顔で手を振って別れた。



 黒猫が通らなかったら東屋の存在に気付かなかったかもしれないので、あの子が幸運を運んできてくれたに違いない。明日も行ってみよう。



「あ……名前聞き忘れた」



 肝心なところが抜けていた。

 見た目は10代、中身はアラフォー。

 やはり記憶力はポンコツだ。
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