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10.問題が増える休み時間
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この学園は、とにかく休み時間が長い。
日本だと午前中に四時間授業をこなして昼休みを挟み、午後にもう二時間授業があるのが普通だったけど、ここでは午前に三時間、午後に一時間しか授業がない。
その上授業の合間の小休止がめちゃくちゃ長い。
(昨日はやることがなくて時間を持て余したけど、今日は有効活用しよう!)
一時間目の授業を終えた私は、まず担任の元へ向かった。
ヴィオレッタの記憶に不都合が生じていることを知る数少ない一人だ。
日常生活に支障をきたさないよう全学年の生徒名簿を貸して欲しいと頼み込み、自習室に持ち込む。生徒会役員や王族関係者の名前には印が付いているのでとても助かる。
「えーっと、マリアは……あった。一年生のマリア・クラウトさん、か」
フルネームを見ても、パッと一致するキャラは思い出せない。
そもそもゲームだと名前変更可能なことがほとんどだ。私は自分の名前に変える派だったので、尚更探り当てるのは難しい。
彼女は高位貴族でも王族でもないようで、特に印は付いていなかった。その割には第二王子と親しくしていたし、何か大きな秘密があるのだろう。ヒロインらしく。
「生徒会の役員は、ヴィオレッタも入れて6人か。男子しかいないなぁ」
ヴィオレッタ以外の生徒会役員は、全員男子生徒だった。クリストファー殿下の側近か、その候補なのだろう。
だとしたら、何故ヴィオレッタはここに潜り込めたのか。
(冷静に考えたら、同い年の公爵令嬢なんて婚約者の有力候補に挙がってもおかしくないよね)
よし。だんだんシナリオが見えてきた。
「ヴィオレッタはクリストファー殿下の婚約者の筆頭候補だったのに、マリアが現れたことでその座を奪われて、自分を押しのけたマリアに嫉妬した挙句いじめまくって断罪されるんだ……!自分と真逆で愛らしい外見のマリアに醜い嫉妬心を向けてしまうんだ!私にはわかる!!」
ただ、この手の作品は一見すると似たような設定の作品ばかりだけど、思いもよらない方向に話が展開したり、大きなどんでん返しが起こったりする。
だからこそ面白いし、最後まで油断できない。
つまり、ここで「もうわかったぞ~!」と油断して思わぬところでで足を取られる可能性も大いにある。
それに、大抵の物語は悪役令嬢に優しくない。だって悪役だから。
(せっかくマリアと仲良くなってもゲームの強制力が働いて、虐めてないのに虐めたことにされる可能性もある。ここがもしゲームの世界だとしたら、一番警戒しなきゃいけないポイントだ)
私とマリアの当事者からしたらなんてことないお喋りでも、他者に聞かれて深読みされて悪評を立てられる、なんてこともあり得る。
それに、記憶が無いせいでこの世界の貴族の常識がよくわからないため、何気なく言ったことを大袈裟に捉えられたり、言っちゃいけないことをそうと知らずに言ってしまう可能性もある。
「ヴィオレッタも、この手の社交は苦手だったっぽいもんなぁ」
王家の血を引く公爵家の令嬢で、第二王子と同い年。第一王子とも三歳差なので、どちらの婚約者になってもおかしくない。
そんな将来有望な令嬢なのに、ヴィオレッタには友人がほぼいない。お茶会やパーティに顔を出すことはごく稀で、ヴィオレッタの記憶を頑張って探っても、自宅で勉強に励む記憶ばかりを思い出す。
リラにも聞いたけど、この認識で間違いなかった。
(公爵家に生まれたからって、必ずしも社交が得意とは限らないか。親の育て方と本人の素質や嗜好って、あんまり関係ないもんね)
前世の私も、両親は全然オタク趣味じゃないのに娘は立派なオタクに育った。これはもう生まれつき背負った業みたいなものだ。
「……よし、なんとなく方針が定まった!」
差し当たり、お昼のお茶会には自分なりの禁則事項を設けて、マリアと殿下が触れてほしくなさそうな話題は徹底的避けることにした。
◇◇◇
「ミラン公爵令嬢じゃないですか。いつもうちの殿下がお世話になってます」
自習室を出ると、長い赤毛を後ろで一本の三つ編みにまとめた背の高い男子生徒と遭遇した。
相手は私のことを知ってるようだし、うちの殿下というのは恐らくクリストファー殿下のことだろう。顔を見ても名前が出てこないのでなんと返していいかわからず、曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。
ヴィオレッタの記憶が欠けていることを知ってるのは、一部の教師と公爵家の者だけなのだ。殿下の関係者だから知っている可能性もあるけど、断言できないので黙っておいた方がいいだろう。
「いいえ、お世話だなんてとんでもないことでございます。ではごきげんよう!」
なるべく相手の顔を見ないように意識しながら丁寧に礼を執り、ギリギリ自然に見えるスピードの早歩きで立ち去ろうと試みる。
「あ、待ってください!昼のお茶会は俺も同席するんで、どうぞお手柔らかにお願いします」
「さ、さようでございますか……」
(逃げ切れなかった上に、悩みの種が増えた……)
「マリアちゃんとはほぼ初対面ですよね?あの子はちょっと特殊な事情があってあんまり友達が居ないもんで、よければ仲良くしてあげてください……その方がメリットがあったり?なーんてね」
その軽薄な言い方に引っ掛かるものを感じたので、思わず言い返す。
「私が自ら望んで、マリアさんとお近付きになりたくて行動しているのです。事情は存じませんが、マリアさんに何かあるのだとしても、それは他人から聞いていいことではありません。あなたがマリアさんにとってどういう存在なのかもわからない以上、発言を真に受けるつもりはございません」
実際のところ、ヒロイン(推定)と仲良くすれば悪役令嬢(推定)の私は断罪を回避できるだろうという下心があったけど、そもそもマリアを見付けた時点では彼女がヒロインとは知らなかった。
その上で友達になりたいと思ったのだ。
そこには嘘偽りも打算もない。
「それは……」
「あっもう次の授業が始まってしまいますわね!では、また後程お会いしましょう!!」
今後の対策を練るつもりが、問題を増やして休み時間を終える私だった。
日本だと午前中に四時間授業をこなして昼休みを挟み、午後にもう二時間授業があるのが普通だったけど、ここでは午前に三時間、午後に一時間しか授業がない。
その上授業の合間の小休止がめちゃくちゃ長い。
(昨日はやることがなくて時間を持て余したけど、今日は有効活用しよう!)
一時間目の授業を終えた私は、まず担任の元へ向かった。
ヴィオレッタの記憶に不都合が生じていることを知る数少ない一人だ。
日常生活に支障をきたさないよう全学年の生徒名簿を貸して欲しいと頼み込み、自習室に持ち込む。生徒会役員や王族関係者の名前には印が付いているのでとても助かる。
「えーっと、マリアは……あった。一年生のマリア・クラウトさん、か」
フルネームを見ても、パッと一致するキャラは思い出せない。
そもそもゲームだと名前変更可能なことがほとんどだ。私は自分の名前に変える派だったので、尚更探り当てるのは難しい。
彼女は高位貴族でも王族でもないようで、特に印は付いていなかった。その割には第二王子と親しくしていたし、何か大きな秘密があるのだろう。ヒロインらしく。
「生徒会の役員は、ヴィオレッタも入れて6人か。男子しかいないなぁ」
ヴィオレッタ以外の生徒会役員は、全員男子生徒だった。クリストファー殿下の側近か、その候補なのだろう。
だとしたら、何故ヴィオレッタはここに潜り込めたのか。
(冷静に考えたら、同い年の公爵令嬢なんて婚約者の有力候補に挙がってもおかしくないよね)
よし。だんだんシナリオが見えてきた。
「ヴィオレッタはクリストファー殿下の婚約者の筆頭候補だったのに、マリアが現れたことでその座を奪われて、自分を押しのけたマリアに嫉妬した挙句いじめまくって断罪されるんだ……!自分と真逆で愛らしい外見のマリアに醜い嫉妬心を向けてしまうんだ!私にはわかる!!」
ただ、この手の作品は一見すると似たような設定の作品ばかりだけど、思いもよらない方向に話が展開したり、大きなどんでん返しが起こったりする。
だからこそ面白いし、最後まで油断できない。
つまり、ここで「もうわかったぞ~!」と油断して思わぬところでで足を取られる可能性も大いにある。
それに、大抵の物語は悪役令嬢に優しくない。だって悪役だから。
(せっかくマリアと仲良くなってもゲームの強制力が働いて、虐めてないのに虐めたことにされる可能性もある。ここがもしゲームの世界だとしたら、一番警戒しなきゃいけないポイントだ)
私とマリアの当事者からしたらなんてことないお喋りでも、他者に聞かれて深読みされて悪評を立てられる、なんてこともあり得る。
それに、記憶が無いせいでこの世界の貴族の常識がよくわからないため、何気なく言ったことを大袈裟に捉えられたり、言っちゃいけないことをそうと知らずに言ってしまう可能性もある。
「ヴィオレッタも、この手の社交は苦手だったっぽいもんなぁ」
王家の血を引く公爵家の令嬢で、第二王子と同い年。第一王子とも三歳差なので、どちらの婚約者になってもおかしくない。
そんな将来有望な令嬢なのに、ヴィオレッタには友人がほぼいない。お茶会やパーティに顔を出すことはごく稀で、ヴィオレッタの記憶を頑張って探っても、自宅で勉強に励む記憶ばかりを思い出す。
リラにも聞いたけど、この認識で間違いなかった。
(公爵家に生まれたからって、必ずしも社交が得意とは限らないか。親の育て方と本人の素質や嗜好って、あんまり関係ないもんね)
前世の私も、両親は全然オタク趣味じゃないのに娘は立派なオタクに育った。これはもう生まれつき背負った業みたいなものだ。
「……よし、なんとなく方針が定まった!」
差し当たり、お昼のお茶会には自分なりの禁則事項を設けて、マリアと殿下が触れてほしくなさそうな話題は徹底的避けることにした。
◇◇◇
「ミラン公爵令嬢じゃないですか。いつもうちの殿下がお世話になってます」
自習室を出ると、長い赤毛を後ろで一本の三つ編みにまとめた背の高い男子生徒と遭遇した。
相手は私のことを知ってるようだし、うちの殿下というのは恐らくクリストファー殿下のことだろう。顔を見ても名前が出てこないのでなんと返していいかわからず、曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。
ヴィオレッタの記憶が欠けていることを知ってるのは、一部の教師と公爵家の者だけなのだ。殿下の関係者だから知っている可能性もあるけど、断言できないので黙っておいた方がいいだろう。
「いいえ、お世話だなんてとんでもないことでございます。ではごきげんよう!」
なるべく相手の顔を見ないように意識しながら丁寧に礼を執り、ギリギリ自然に見えるスピードの早歩きで立ち去ろうと試みる。
「あ、待ってください!昼のお茶会は俺も同席するんで、どうぞお手柔らかにお願いします」
「さ、さようでございますか……」
(逃げ切れなかった上に、悩みの種が増えた……)
「マリアちゃんとはほぼ初対面ですよね?あの子はちょっと特殊な事情があってあんまり友達が居ないもんで、よければ仲良くしてあげてください……その方がメリットがあったり?なーんてね」
その軽薄な言い方に引っ掛かるものを感じたので、思わず言い返す。
「私が自ら望んで、マリアさんとお近付きになりたくて行動しているのです。事情は存じませんが、マリアさんに何かあるのだとしても、それは他人から聞いていいことではありません。あなたがマリアさんにとってどういう存在なのかもわからない以上、発言を真に受けるつもりはございません」
実際のところ、ヒロイン(推定)と仲良くすれば悪役令嬢(推定)の私は断罪を回避できるだろうという下心があったけど、そもそもマリアを見付けた時点では彼女がヒロインとは知らなかった。
その上で友達になりたいと思ったのだ。
そこには嘘偽りも打算もない。
「それは……」
「あっもう次の授業が始まってしまいますわね!では、また後程お会いしましょう!!」
今後の対策を練るつもりが、問題を増やして休み時間を終える私だった。
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