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13.どうしてこうなった!?
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「二人とも、遅くなってごめんよ」
「殿下、お待ちしておりました」
さっと立ち上がったら、殿下に制された。
「今日は四人だけの集まりなんだ。堅苦しいことは抜きにして、気楽にこの時間を楽しもうよ」
「ミラン嬢、先程は失礼なことを言って申し訳ありません。お詫びといってはなんですが、紅茶に合うクッキーを用意しました」
さっき会ったこの男子生徒は、ヴィオレッタとは割と近しい知り合いのようだ。
だけど記憶を探っても名前が出てこないので、あまり接点はなかったのだろう。ということは、殿下の護衛とか側近の一人かな。
「カイルさんのクッキーって、あのバタークッキーですよね?」
「もちろんマリアちゃんの分もあるから、期待しててね」
マリアのお陰で名前がわかった。グッジョブ。
勿論最初から知ってましたよ!という顔で、ごく自然に会話の輪に混ざる。完璧だ。
「お気遣いありがとうございます、カイル様。私は何も気にしておりませんから、今日はお互い楽しみましょう」
「……そう言ってくれると助かります」
「うちの護衛騎士が失礼なことをしたそうだね。コイツは僕のことになると、ちょっと過保護なんだ。試すような真似をしてすまなかった」
「いいえ、殿下に謝罪されるようなことは1つもありませんでしたわ。どうかお気になさらず」
「君は本当に優等生だね。この前みたいに腹を立ててもいいし、言いたい事は自由に言ってくれて構わないんだよ?もっと本音を聞かせてほしいな」
「ナンノコトカサッパリ……ホホホ」
先日のことを蒸し返され、つい喋りがカタコトになってしまった。いかんいかん。
◇◇◇
「あの、ヴィオレッタ様はモッコウバラ以外には、どんなお花が好きですか?」
「そうね、割となんでも好きだけれど……コデマリやキンモクセイ、藤の花のように小花が沢山咲くものが特に好きだわ。あと、バラはどんな品種でもそれぞれに個性があって素敵よね」
前世で母がせっせと育てていた植物や、休日に行った植物園の様子を思い出しながら、なんとかそれっぽく答える。あまりお嬢様っぽくない回答かもしれないと、咄嗟にバラも付け加えておいた。
実際バラは大好きで、前世では会社の近くにあった古い洋館の庭園が、春と秋に見事なバラでいっぱいになるのを、毎年楽しみにしていた。
「小さくて可憐な花も、大輪の花も、それぞれに違った魅力がありますよね」
「えぇ。みんな違って、みんないいわね」
「素敵な言葉ですね……!」
「あ、私の言葉ではなくて、昔の詩人の言葉なのよ」
「ヴィオレッタ様は、色んなことを知っているのですね。読書もお好きなのですか?」
「そんな、それほど詳しいわけじゃないわ。読書は好きだけれど、最近は生徒会の仕事が忙しくてあまり読めていないわね……」
堂々としている私だけど、この世界の物語本の記憶はほぼない。
どうかツッコまれませんように!神様仏様!助けて!!と内心で祈りながら話を続ける。昔の詩人の言葉も、この世界のものじゃないのにぽろっと口をついて出てしまった。
「君は勤勉で、博識なのにそれをひけらかすようなことはしないのだね。とても謙虚な人だ」
「過分な御言葉を賜り恐悦至極に存じますわ」
「うーん、どんどん警戒度が上がっていない?おかしくない?僕何かした?」
「ナンノコトデショウ……ホホホホ……」
「カイル、どうやら僕は彼女に嫌われているようだ」
「それはきっと、俺たちが生徒会の仕事に真面目に取り組んでこなかったからでしょう。挽回しなくてはなりませんね」
どうやらカイル様も生徒会の役員らしい。
そして殿下と同じでほとんど仕事をしていなかったようで、それではヴィオレッタの記憶にも残らないだろう。
「お二人が多忙なことは存じておりますわ。他にも生徒会の役員はおりますし、殿下方が生徒会の活動に参加できなくても、役員同士で助け合えば……」
「そんなに気を遣わなくても構わないよ。彼らが真面目に生徒会に顔を出すとは到底思えないから、まずは僕が率先して働く姿を見せないとね」
「その通りです。まぁ、殿下が働き始めたら焦ってやってくるでしょう。そうしたら今までミラン嬢がこなしていた雑務を全て彼らに割り振ればいい。新一年生にやらせてもいいかもしれませんねー」
カイル様は簡単に言うけど、人を育てるのはそんなに楽なことではない。
ましてや矜持が高そうな貴族のお坊ちゃんが、ハイよろこんでーと雑務をこなすとは思えない。
いっそ高位貴族が生徒会入りする慣例を廃して、真面目に働きそうな子を中心に生徒会に誘うのはどうだろうか。文官や研究職を目指している学生や、中小規模の領地の跡取りなら、生徒会活動が後々の役にも立つだろう。
そう思い提案してみたら、殿下もカイル様も難色を示した。
「悪くない発想だね。ただ、残念ながら高位者が不在だと、学生たちは生徒会を軽視するだろう」
「私や殿下の在学中は、我々が後ろで目を光らせておけばなんとかなるのではありません?」
「おやまぁ。ミラン嬢は、殿下の威光を我が物のようにお考えですか?」
今のはかなりトゲのある言い方だ。
王族の護衛の態度としてはそれで合ってると思うけど、同じ生徒会役員の言葉だと捉えるとムッとする。そんなこと言い出したら、殿下が生徒会長にならなきゃいいじゃないか。やりづらいったらない。
「カイル様からすればただの建前かもしれませんが、そもそも学園内では生徒はみな平等ということになっております。その上で申し上げますが、私は生徒会の一役員で殿下は生徒会長。いわば上司と部下の関係です。部下が仕事を円滑に進めるために差配するのは上司の務めですから、私のやり方は世間においてはごく一般的なやり方だと言えましょう」
「なるほど。王国第二王子の威光ではなく、皆の学園生活をより良くするために生徒会がなすべきことを、正しい形で実行しているだけ……と言いたいのだね?」
「恐れながら、その通りでございます」
私たちの話を聞いて、マリアが目をきらきらさせている。
「ヴィオレッタ様は、みんなの学園生活をより充実したものにするため、沢山働いているのですね!殿下とカイルさんも頑張らないと!!」
「まいったなぁ、マリアちゃんの言う通りだ」
「これからは僕らも、生徒会の運営に積極的に携わっていこうと思っている。今までろくに顔を出さなかったのに今更だと思われても仕方ないが、どうか挽回の機会を与えて欲しい」
なんだかよくわからないけど、二人のやる気が出てきたようだ。
この二人さえ真面目に活動してくれたら、他の役員も顔を出すようになるだろう。流石に第二王子とその護衛騎士と公爵令嬢だけを働かせて、生徒会サボる役員はいないでしょう。
今までは高位者二人が率先してサボっていたから、他の役員も来なかったのだろう。殿下を差し置いて勝手するより、殿下に倣った方がいいに決まっている。
(そう考えたら、ヴィオレッタって本当に真面目な子なんだなぁ。尊敬するわ……私も彼女に恥じないよう、やれることをやらなきゃだ)
「機会を与えるだなんて、とんでもないことでございます。私はそのような立場ではございませんわ」
「そんなに固くならないでくれ。僕たちは平等なのだから」
「そうですよ、ミラン嬢。いや、これからはヴィオレッタ嬢と呼んでもいいかな?同じ生徒会の仲間だしさ!」
「構いませんわ。どうぞお好きにお呼びください」
「……なら僕は、今日からヴィオと呼ぼう。いいかい?」
「殿下の望みを断るなんて、ありえませんわ」
「では、君も今日から僕の事をクリスと呼んでくれ。同じ生徒会の仲間だし、ね」
「………………では、クリス様と」
何故か親し気に振舞ってくる二人にたじろぎながら、お茶会の時間は表向き和やかに過ぎて行った。
「殿下、お待ちしておりました」
さっと立ち上がったら、殿下に制された。
「今日は四人だけの集まりなんだ。堅苦しいことは抜きにして、気楽にこの時間を楽しもうよ」
「ミラン嬢、先程は失礼なことを言って申し訳ありません。お詫びといってはなんですが、紅茶に合うクッキーを用意しました」
さっき会ったこの男子生徒は、ヴィオレッタとは割と近しい知り合いのようだ。
だけど記憶を探っても名前が出てこないので、あまり接点はなかったのだろう。ということは、殿下の護衛とか側近の一人かな。
「カイルさんのクッキーって、あのバタークッキーですよね?」
「もちろんマリアちゃんの分もあるから、期待しててね」
マリアのお陰で名前がわかった。グッジョブ。
勿論最初から知ってましたよ!という顔で、ごく自然に会話の輪に混ざる。完璧だ。
「お気遣いありがとうございます、カイル様。私は何も気にしておりませんから、今日はお互い楽しみましょう」
「……そう言ってくれると助かります」
「うちの護衛騎士が失礼なことをしたそうだね。コイツは僕のことになると、ちょっと過保護なんだ。試すような真似をしてすまなかった」
「いいえ、殿下に謝罪されるようなことは1つもありませんでしたわ。どうかお気になさらず」
「君は本当に優等生だね。この前みたいに腹を立ててもいいし、言いたい事は自由に言ってくれて構わないんだよ?もっと本音を聞かせてほしいな」
「ナンノコトカサッパリ……ホホホ」
先日のことを蒸し返され、つい喋りがカタコトになってしまった。いかんいかん。
◇◇◇
「あの、ヴィオレッタ様はモッコウバラ以外には、どんなお花が好きですか?」
「そうね、割となんでも好きだけれど……コデマリやキンモクセイ、藤の花のように小花が沢山咲くものが特に好きだわ。あと、バラはどんな品種でもそれぞれに個性があって素敵よね」
前世で母がせっせと育てていた植物や、休日に行った植物園の様子を思い出しながら、なんとかそれっぽく答える。あまりお嬢様っぽくない回答かもしれないと、咄嗟にバラも付け加えておいた。
実際バラは大好きで、前世では会社の近くにあった古い洋館の庭園が、春と秋に見事なバラでいっぱいになるのを、毎年楽しみにしていた。
「小さくて可憐な花も、大輪の花も、それぞれに違った魅力がありますよね」
「えぇ。みんな違って、みんないいわね」
「素敵な言葉ですね……!」
「あ、私の言葉ではなくて、昔の詩人の言葉なのよ」
「ヴィオレッタ様は、色んなことを知っているのですね。読書もお好きなのですか?」
「そんな、それほど詳しいわけじゃないわ。読書は好きだけれど、最近は生徒会の仕事が忙しくてあまり読めていないわね……」
堂々としている私だけど、この世界の物語本の記憶はほぼない。
どうかツッコまれませんように!神様仏様!助けて!!と内心で祈りながら話を続ける。昔の詩人の言葉も、この世界のものじゃないのにぽろっと口をついて出てしまった。
「君は勤勉で、博識なのにそれをひけらかすようなことはしないのだね。とても謙虚な人だ」
「過分な御言葉を賜り恐悦至極に存じますわ」
「うーん、どんどん警戒度が上がっていない?おかしくない?僕何かした?」
「ナンノコトデショウ……ホホホホ……」
「カイル、どうやら僕は彼女に嫌われているようだ」
「それはきっと、俺たちが生徒会の仕事に真面目に取り組んでこなかったからでしょう。挽回しなくてはなりませんね」
どうやらカイル様も生徒会の役員らしい。
そして殿下と同じでほとんど仕事をしていなかったようで、それではヴィオレッタの記憶にも残らないだろう。
「お二人が多忙なことは存じておりますわ。他にも生徒会の役員はおりますし、殿下方が生徒会の活動に参加できなくても、役員同士で助け合えば……」
「そんなに気を遣わなくても構わないよ。彼らが真面目に生徒会に顔を出すとは到底思えないから、まずは僕が率先して働く姿を見せないとね」
「その通りです。まぁ、殿下が働き始めたら焦ってやってくるでしょう。そうしたら今までミラン嬢がこなしていた雑務を全て彼らに割り振ればいい。新一年生にやらせてもいいかもしれませんねー」
カイル様は簡単に言うけど、人を育てるのはそんなに楽なことではない。
ましてや矜持が高そうな貴族のお坊ちゃんが、ハイよろこんでーと雑務をこなすとは思えない。
いっそ高位貴族が生徒会入りする慣例を廃して、真面目に働きそうな子を中心に生徒会に誘うのはどうだろうか。文官や研究職を目指している学生や、中小規模の領地の跡取りなら、生徒会活動が後々の役にも立つだろう。
そう思い提案してみたら、殿下もカイル様も難色を示した。
「悪くない発想だね。ただ、残念ながら高位者が不在だと、学生たちは生徒会を軽視するだろう」
「私や殿下の在学中は、我々が後ろで目を光らせておけばなんとかなるのではありません?」
「おやまぁ。ミラン嬢は、殿下の威光を我が物のようにお考えですか?」
今のはかなりトゲのある言い方だ。
王族の護衛の態度としてはそれで合ってると思うけど、同じ生徒会役員の言葉だと捉えるとムッとする。そんなこと言い出したら、殿下が生徒会長にならなきゃいいじゃないか。やりづらいったらない。
「カイル様からすればただの建前かもしれませんが、そもそも学園内では生徒はみな平等ということになっております。その上で申し上げますが、私は生徒会の一役員で殿下は生徒会長。いわば上司と部下の関係です。部下が仕事を円滑に進めるために差配するのは上司の務めですから、私のやり方は世間においてはごく一般的なやり方だと言えましょう」
「なるほど。王国第二王子の威光ではなく、皆の学園生活をより良くするために生徒会がなすべきことを、正しい形で実行しているだけ……と言いたいのだね?」
「恐れながら、その通りでございます」
私たちの話を聞いて、マリアが目をきらきらさせている。
「ヴィオレッタ様は、みんなの学園生活をより充実したものにするため、沢山働いているのですね!殿下とカイルさんも頑張らないと!!」
「まいったなぁ、マリアちゃんの言う通りだ」
「これからは僕らも、生徒会の運営に積極的に携わっていこうと思っている。今までろくに顔を出さなかったのに今更だと思われても仕方ないが、どうか挽回の機会を与えて欲しい」
なんだかよくわからないけど、二人のやる気が出てきたようだ。
この二人さえ真面目に活動してくれたら、他の役員も顔を出すようになるだろう。流石に第二王子とその護衛騎士と公爵令嬢だけを働かせて、生徒会サボる役員はいないでしょう。
今までは高位者二人が率先してサボっていたから、他の役員も来なかったのだろう。殿下を差し置いて勝手するより、殿下に倣った方がいいに決まっている。
(そう考えたら、ヴィオレッタって本当に真面目な子なんだなぁ。尊敬するわ……私も彼女に恥じないよう、やれることをやらなきゃだ)
「機会を与えるだなんて、とんでもないことでございます。私はそのような立場ではございませんわ」
「そんなに固くならないでくれ。僕たちは平等なのだから」
「そうですよ、ミラン嬢。いや、これからはヴィオレッタ嬢と呼んでもいいかな?同じ生徒会の仲間だしさ!」
「構いませんわ。どうぞお好きにお呼びください」
「……なら僕は、今日からヴィオと呼ぼう。いいかい?」
「殿下の望みを断るなんて、ありえませんわ」
「では、君も今日から僕の事をクリスと呼んでくれ。同じ生徒会の仲間だし、ね」
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