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14.大体わかった!
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美味しいお茶菓子をいただきながら、表面上は和やかに。
頭の中では必死になって思い出そうとしていた。
(ヒロインの名前はマリアで、生徒会長は第二王子クリストファー。その護衛騎士のカイル。白金やなぎ先生がイラストを担当している作品でこのキャラ設定となると、乙女ゲームの可能性が高い。ここまでは絞り込めたけど、まだはっきりとはわからないんだよなぁ)
クリストファーとカイルは攻略対象だろうけど、二人とも私の好みのタイプではない。伏し目がちでクールなキャラが好きなのだ。
もちろん二人ともただのゲームのキャラじゃなくて、今や同じ世界を生きる同級生で上位者。あまり失礼なことは考えたらいけないし、これはあくまでゲームキャラだった際の好みの問題だ。
ヴィオレッタとして将来を見据えてお相手を考えるなら、釣り合いの取れる身分でコミュニケーションがしっかり取れて、しっかりした性格の男性が良いだろう。
(ここが乙女ゲームの世界だとしたら、私の事だからフルコンプせずに好みのキャラだけ攻略して、そのまま放置してた可能性がある……ごめんなさい……ゲーム開発者の皆様に失礼なプレイをしてごめんなさい!反省します!!)
とりあえず今わかっていることをまとめると、マリアは元平民っぽくて何故か第二王子と親しい。
彼女もクラスには馴染めておらず、女友達は居なさそうだ。
(乙女ゲームの定石として、親友キャラが一人くらい居てもよさそうなものだけど)
攻略対象全員と顔を合わせてから出てくるパターンかもしれない。
まだ春先だし、夏になるまでの過程で全キャラが出てくるものと推測する。
(その過程で、悪役令嬢ヴィオレッタがマリアを虐めるのだろう。すなわち、それさえしなければ破滅回避は成功だ!私にはわかる……!!)
「ヴィオレッタ様、どうなさいましたか?お口に合いませんでしたか……?」
「え、あ、いいえ?ごめんなさいね、ちょっとぼんやりしてしまったわ」
「君は病み上がりなのだから、無理してはいけないよ」
「……ご病気だったのですか……?」
殿下が余計なことを言ってマリアを落ち込ませてしまったので、すぐさまフォローする。
「大袈裟ですわ、クリス様。マリアさんも気にしないでちょうだい。貴女の所作が美しいので、思わず見とれていたのよ」
マリアに病み上がりの令嬢認定されてしまい、距離を置かれでもしたら破滅回避計画が水の泡だ。すっかり元気だとアピールしつつ、マリアをそれとなく褒めてみる。
実際、マリアの言動はちぐはぐなのだ。
貴族社会に馴染んでいないことがまるわかりの発言を連発する割には、マナーは完璧でヴィオレッタのと遜色ない。
口を開かなければ、立派な貴族令嬢で通るだろう。
「美しいだなんて、それこそ大袈裟です!ヴィオレッタ様にはとてもじゃないけど敵いません」
「いいえ、そんなことないわ。背筋がしっかり伸びていて、動作も滑らかだわ」
ヴィオレッタの身体にはあらゆるマナーが沁みついているから、私自身もなんとかなっているし、若さのお陰かいい姿勢を長時間キープできる。疲れていると背筋を伸ばすだけで異様に疲れるのに、それも感じない。
(これが若さと馴れってやつだよねぇ。ヴィオレッタ様様だわ)
転生の素晴らしさを感じつつ、そんなヴィオレッタと並んでも見劣りしないマリアもなかなかのものだ。迂闊な発言さえなければ、何の疑いもなく生粋の貴族令嬢だと思っただろう。
「ありがとうございます。マナーは母が教えてくれたのですけど、今まで披露する機会がなかったので、ヴィオレッタ様みたいな生粋のお嬢様に褒めてもらえるとすっごく自信がつきます!」
「あら、こんなに優雅なのに勿体ないわね」
「同級生の皆とは、まだお茶会に誘われるほど親しくないですし、私もたぶん緊張しちゃって上手くできないと思うので……」
それであれば、場数を踏んで慣れるのがよいだろう。習うより慣れろだ。
「ではマリアさんがよければ、次のお茶会は我が家でどうかしら」
「ヴィオレッタ様のお屋敷、ですか?」
「他の人は呼ばないから、今日みたいに楽に過ごしてくれて構わないわ。庭師が丁寧に整えてくれた自慢の庭を、是非あなたに見て欲しいの。もちろんマリアさんが今日を楽しんでくれて、次の約束をしてもいいと思ってくれたらですけど……」
「楽しいです!またヴィオレッタ様とお茶会がしたいです!!あ、あと、よろしければ私の事はマリアとお呼びください!!!」
それまでは美しい姿勢で座っていたのに、気合が入りすぎたのかガタッと音を立てて椅子から立ち上がるマリア。
子供の頃実家の近所の老夫婦が飼っていた、愛犬タローを彷彿とさせる。マリアにしっぽが生えていたら全力でぶんぶんしてるだろう。
「なら決まりね。お友達を屋敷に招くのは初めてだから、楽しみだわ」
ヴィオレッタの学園生活は生徒会の仕事に忙殺されているし、交友関係がかなり残念な感じだ。友人を連れてきたら両親も喜ぶだろう。
「いいなぁ、マリアだけ。僕もミラン公爵邸にはお邪魔したことないのに」
「そりゃ俺たちは無理ですよ、諦めましょう。もっとも、今後ヴィオレッタ嬢と殿下が親しくなれば、そういった機会があるかもしれませんけど」
「もしいつか機会がございましたら、殿下方も我が家自慢の庭園をご覧ください」
ニッコリ微笑んで社交辞令で返す。
もちろん今のところそんな予定はない。生徒会で顔を合わせるだけで充分だ。
◇◇◇
長い休み時間もそろそろ終盤となり、マリアが手ずから淹れてくれたハーブティーを最後に一杯いただいて、解散の流れとなった。
「今日はありがとう、凄く楽しかったわ。次は我が家で精一杯おもてなしするわね」
「こちらこそ、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします……!」
「にゃにゃっ!」
「クロ!どこに居たの?」
「いつもの黒猫さんね。マリアと一緒にご挨拶しているみたいだわ」
マリアと猫のやり取りを横目にそっと席を立つと、さっきまであった足の痛みが消えていることに気付いた。行きに慌てて走って来たせいで捻った箇所だ。お茶会の最中も痛みが気になっていたのに、いつの間にかすっかりなくなっている。
(もしかして、回復効果のあるものがこの中に?)
この世界では、神に愛されて神聖力を分け与えられて生まれてくる人間が存在する。
その人たちは聖女や聖人と呼ばれており、癒しや浄化、豊穣などの力を持つ。能力が発現したら、身分を問わず国に手厚く保護されるほどの貴重な存在だ。
神話の時代から遠ざかった現代では、ほとんど伝説の存在として扱われている。この国に最後に聖女・聖人がいたのは何百年も前のことらしい。教科書にそう書いてあった。
(なるほど……よし、大体わかった。マリアの正体は聖女なんだ!日本人が考える聖女っぽい名前ナンバーワンだしね!私調べ!!)
平民から貴族になったのは、能力が発現したからだろう。この国には王女様が居ないので、同年代の第二王子がお目付け役としてマリアの貴族社会での暮らしを支えているに違いない。
(きっと卒業後に2人は婚約するんだ……!)
そうとわかれば、私は二人の仲を全力で応援するまでだ。決して邪魔をせず、なんなら取り持ったり恋のアドバイスをしたり、出来ることは色々ある。
(まぁ、前世では恋人居なかったけど!最後の彼氏と別れたのが三十路手前だからピーーー年間居なかったけど、それでもこの子達より経験値はあるはずだから!!)
「殿下!」
「ど、どうしたの、ヴィオ?」
「マリアは得難く唯一無二の存在で、この王国にとって重要な人物だと思うのです。ですのでどうか殿下がお守りくださいますよう!」
「へ……?」
「それでは私は教室に戻り次の授業の予習をいたします。あ、放課後は急用が出来ましたので生徒会活動は欠席させていただきますね。みなさまごきげんよう!」
この先のシナリオが見えてきたので、あとは生き残るために対策を立てていくとしよう。
逸る気持ちを抑えて3人に挨拶をし、お茶会の席を後にした。
頭の中では必死になって思い出そうとしていた。
(ヒロインの名前はマリアで、生徒会長は第二王子クリストファー。その護衛騎士のカイル。白金やなぎ先生がイラストを担当している作品でこのキャラ設定となると、乙女ゲームの可能性が高い。ここまでは絞り込めたけど、まだはっきりとはわからないんだよなぁ)
クリストファーとカイルは攻略対象だろうけど、二人とも私の好みのタイプではない。伏し目がちでクールなキャラが好きなのだ。
もちろん二人ともただのゲームのキャラじゃなくて、今や同じ世界を生きる同級生で上位者。あまり失礼なことは考えたらいけないし、これはあくまでゲームキャラだった際の好みの問題だ。
ヴィオレッタとして将来を見据えてお相手を考えるなら、釣り合いの取れる身分でコミュニケーションがしっかり取れて、しっかりした性格の男性が良いだろう。
(ここが乙女ゲームの世界だとしたら、私の事だからフルコンプせずに好みのキャラだけ攻略して、そのまま放置してた可能性がある……ごめんなさい……ゲーム開発者の皆様に失礼なプレイをしてごめんなさい!反省します!!)
とりあえず今わかっていることをまとめると、マリアは元平民っぽくて何故か第二王子と親しい。
彼女もクラスには馴染めておらず、女友達は居なさそうだ。
(乙女ゲームの定石として、親友キャラが一人くらい居てもよさそうなものだけど)
攻略対象全員と顔を合わせてから出てくるパターンかもしれない。
まだ春先だし、夏になるまでの過程で全キャラが出てくるものと推測する。
(その過程で、悪役令嬢ヴィオレッタがマリアを虐めるのだろう。すなわち、それさえしなければ破滅回避は成功だ!私にはわかる……!!)
「ヴィオレッタ様、どうなさいましたか?お口に合いませんでしたか……?」
「え、あ、いいえ?ごめんなさいね、ちょっとぼんやりしてしまったわ」
「君は病み上がりなのだから、無理してはいけないよ」
「……ご病気だったのですか……?」
殿下が余計なことを言ってマリアを落ち込ませてしまったので、すぐさまフォローする。
「大袈裟ですわ、クリス様。マリアさんも気にしないでちょうだい。貴女の所作が美しいので、思わず見とれていたのよ」
マリアに病み上がりの令嬢認定されてしまい、距離を置かれでもしたら破滅回避計画が水の泡だ。すっかり元気だとアピールしつつ、マリアをそれとなく褒めてみる。
実際、マリアの言動はちぐはぐなのだ。
貴族社会に馴染んでいないことがまるわかりの発言を連発する割には、マナーは完璧でヴィオレッタのと遜色ない。
口を開かなければ、立派な貴族令嬢で通るだろう。
「美しいだなんて、それこそ大袈裟です!ヴィオレッタ様にはとてもじゃないけど敵いません」
「いいえ、そんなことないわ。背筋がしっかり伸びていて、動作も滑らかだわ」
ヴィオレッタの身体にはあらゆるマナーが沁みついているから、私自身もなんとかなっているし、若さのお陰かいい姿勢を長時間キープできる。疲れていると背筋を伸ばすだけで異様に疲れるのに、それも感じない。
(これが若さと馴れってやつだよねぇ。ヴィオレッタ様様だわ)
転生の素晴らしさを感じつつ、そんなヴィオレッタと並んでも見劣りしないマリアもなかなかのものだ。迂闊な発言さえなければ、何の疑いもなく生粋の貴族令嬢だと思っただろう。
「ありがとうございます。マナーは母が教えてくれたのですけど、今まで披露する機会がなかったので、ヴィオレッタ様みたいな生粋のお嬢様に褒めてもらえるとすっごく自信がつきます!」
「あら、こんなに優雅なのに勿体ないわね」
「同級生の皆とは、まだお茶会に誘われるほど親しくないですし、私もたぶん緊張しちゃって上手くできないと思うので……」
それであれば、場数を踏んで慣れるのがよいだろう。習うより慣れろだ。
「ではマリアさんがよければ、次のお茶会は我が家でどうかしら」
「ヴィオレッタ様のお屋敷、ですか?」
「他の人は呼ばないから、今日みたいに楽に過ごしてくれて構わないわ。庭師が丁寧に整えてくれた自慢の庭を、是非あなたに見て欲しいの。もちろんマリアさんが今日を楽しんでくれて、次の約束をしてもいいと思ってくれたらですけど……」
「楽しいです!またヴィオレッタ様とお茶会がしたいです!!あ、あと、よろしければ私の事はマリアとお呼びください!!!」
それまでは美しい姿勢で座っていたのに、気合が入りすぎたのかガタッと音を立てて椅子から立ち上がるマリア。
子供の頃実家の近所の老夫婦が飼っていた、愛犬タローを彷彿とさせる。マリアにしっぽが生えていたら全力でぶんぶんしてるだろう。
「なら決まりね。お友達を屋敷に招くのは初めてだから、楽しみだわ」
ヴィオレッタの学園生活は生徒会の仕事に忙殺されているし、交友関係がかなり残念な感じだ。友人を連れてきたら両親も喜ぶだろう。
「いいなぁ、マリアだけ。僕もミラン公爵邸にはお邪魔したことないのに」
「そりゃ俺たちは無理ですよ、諦めましょう。もっとも、今後ヴィオレッタ嬢と殿下が親しくなれば、そういった機会があるかもしれませんけど」
「もしいつか機会がございましたら、殿下方も我が家自慢の庭園をご覧ください」
ニッコリ微笑んで社交辞令で返す。
もちろん今のところそんな予定はない。生徒会で顔を合わせるだけで充分だ。
◇◇◇
長い休み時間もそろそろ終盤となり、マリアが手ずから淹れてくれたハーブティーを最後に一杯いただいて、解散の流れとなった。
「今日はありがとう、凄く楽しかったわ。次は我が家で精一杯おもてなしするわね」
「こちらこそ、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします……!」
「にゃにゃっ!」
「クロ!どこに居たの?」
「いつもの黒猫さんね。マリアと一緒にご挨拶しているみたいだわ」
マリアと猫のやり取りを横目にそっと席を立つと、さっきまであった足の痛みが消えていることに気付いた。行きに慌てて走って来たせいで捻った箇所だ。お茶会の最中も痛みが気になっていたのに、いつの間にかすっかりなくなっている。
(もしかして、回復効果のあるものがこの中に?)
この世界では、神に愛されて神聖力を分け与えられて生まれてくる人間が存在する。
その人たちは聖女や聖人と呼ばれており、癒しや浄化、豊穣などの力を持つ。能力が発現したら、身分を問わず国に手厚く保護されるほどの貴重な存在だ。
神話の時代から遠ざかった現代では、ほとんど伝説の存在として扱われている。この国に最後に聖女・聖人がいたのは何百年も前のことらしい。教科書にそう書いてあった。
(なるほど……よし、大体わかった。マリアの正体は聖女なんだ!日本人が考える聖女っぽい名前ナンバーワンだしね!私調べ!!)
平民から貴族になったのは、能力が発現したからだろう。この国には王女様が居ないので、同年代の第二王子がお目付け役としてマリアの貴族社会での暮らしを支えているに違いない。
(きっと卒業後に2人は婚約するんだ……!)
そうとわかれば、私は二人の仲を全力で応援するまでだ。決して邪魔をせず、なんなら取り持ったり恋のアドバイスをしたり、出来ることは色々ある。
(まぁ、前世では恋人居なかったけど!最後の彼氏と別れたのが三十路手前だからピーーー年間居なかったけど、それでもこの子達より経験値はあるはずだから!!)
「殿下!」
「ど、どうしたの、ヴィオ?」
「マリアは得難く唯一無二の存在で、この王国にとって重要な人物だと思うのです。ですのでどうか殿下がお守りくださいますよう!」
「へ……?」
「それでは私は教室に戻り次の授業の予習をいたします。あ、放課後は急用が出来ましたので生徒会活動は欠席させていただきますね。みなさまごきげんよう!」
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