荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第173話【帰郷への準備】

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「いいだろう。
 他ならぬ君の頼み事だ協力させてもらうよ。
 まあ、そのついでにうちも儲けさせてもらうがな。
 すまないがトトルを呼んでくれないか、あとガラムも都合がつけば一緒に頼む」

 ハーベスは近くにいた従業員にそう言ってふたりを呼びに行かせた。

「まあ、ふたりが揃うまでに少し話をしようじゃないか」

 ハーベスはそう言って紅茶に手をつけてから話をはじめた。

「君の出身はアランガスタよりも先の国、グラリアン王国だったね。
 私の知っている情報では最近になって大手の運送商会のテンマ運送がかなり落ちぶれているとの話がギルド経由で聞こえてきている。
 これには君が関係しているのではないのか?」

 ハーベスの問に僕は特に隠すほどのことではないと思ったが全てを話す必要もないと全体を客観視して説明をした。

「この最近は国に戻ってませんのでテンマ運送の状態は知りませんでした。
 ただ、国を出る前にギルドの後押しを得て高速運送の実用化を実現しましたのでその影響が少なからずあったかもしれません」

「それは興味のある話ですね。
 詳しく聞いても問題ない話ならばお聞かせ願えますか?」

「王国でもギルドが普通に運用していましたので秘匿技術ではないと思いますから話しても良いですが詳細は割愛させてください」

 その後、ハーベスがうなずくのを見て僕は王国で始まったゴーレム伝書鳩による高速輸送について大まかな説明をした。

「なるほど、そのような方法があれば物を運ぶだけを生業にする商会はかなりの痛手になるでしょうね」

「まあ、それは否定しませんが送れるものには限界がありますし、国が運営しているギルドがやることですので僕だけがどうこうした訳ではありませんから」

「……まあ、そういうことにしておこう。
 ん? そろそろふたりが来る頃だろうし運ぶ荷物の話でもしていようか」

 ハーベスがそう言って僕にカード化させたいものの選定を進めているとドアをノックする音が聞こえ見知った顔がふたり部屋に入ってきた。

「お呼びでしょうか旦那様」

 先に入ってきたトトルがハーベスに対して呼びつけた理由を問う。

「おお、来てくれたか。
 実は彼がアランガスタまで商隊の馬車に同乗させて欲しいと言ってきてね。
 代わりに提示してきた条件が破格に良かったから引き受けてしまったのだよ。
 だからすまないがちょっとばかりアランガスタまで往復してきてはくれないか?」

 ハーベスは『ちょっとそこまで買い物を頼むよ』的な軽い口調でトトルに頼み事をする。

「わかりました。
 出発はいつですか?
 運ぶ荷物の準備はいつ完了しますか?」

 トトルはその言葉に全く動揺もせずに了承するとすぐに必要な物資と出発の時間を確認してきた。

「今、話がまとまったばかりたからね。
 早くても2日はかかるだろうからそれまでに準備を頼んだ。
 そうそう、護衛はいつものメンバーでいいか?」

 ハーベスは後から入ってきたガラムにそう問いかける。

「また、アランガスタまでの往復ですか?
 もう少し休みたかったんだが……まあ仕方ないですね。
 それに、ミナト殿との旅はいろいろと面白い経験が出来ますからね」

 ガラムも同行を承認したことにより出発は3日後の朝に決まりそれぞれの準備をすることを確認してから解散となった。

「ミナト殿には明後日の昼前に店まで来てくれたまえ。
 その時までに荷物を揃えておくようにしておく」

 帰り際にハーベスが僕にそう言って握手を求めてきたのでそれに応じると「任せてください」と言ってノエルと共に宿へと戻った。

   *   *   *

「とりあえずアランガスタまでの足の目処はついたけどその先をどうするかは向こうに着くまでに決めなくてはならない。
 国を渡る時には出来るだけ目立たないようにしなければならないからもしもの時はカ……」

 僕はそう言いかけてからその選択肢を頭からはずした。

「よし! 分からない先を悩んでも仕方ないから明日は今までにお世話になった人たちにお礼を言ってまわろうか」

「それ、良いですね。
 あまり高いものは渡せないですけど役にたつものが良いですよね」

「役にたつものか……それこそいま作れるようになったアレがいいんじゃないか?」

一番簡単なやつコレでいいですよね?」

 アレと言ってコレと分かる間柄にはなれたのかと僕はちょっと嬉しくなりながらも必要な個数の確保に意識を向けた。

「……30本もあれば大丈夫ですか?」

「おそらく大丈夫だと思うけど余裕があるならもう少し作って置いてもいいよ。
 どうせカード化して仕舞っておくだけだからね」

「じゃあ私は素材の準備をしますのでミナトさんは魔道具の操作をお願いしますね」

 結局その後、僕たちは50もの初級回復薬を作り、収納スキルでカード化してその日は眠りについた。
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