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第172話【帰郷の決断と交渉】
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結局その後、僕たちは多くの調薬に成功していた。
「とりあえず素材さえあればきちんとした薬は作れる事が証明されたな」
目の前に並べられた薬のカードを眺めながら僕たちは一息ついてお茶を飲みながら今後のことを話し合っている。
「それでどうするのですか?
まだ少し不安がありますけどロギナスに戻る準備を始めますか?」
正直なところ僕はまだ向こうに戻るのは早いのではないかと考えていた。
「まだ、ここの生徒たちのレベルが全員3に達していないからねもう少しだけ留まろうと思ってるよ」
正直、そろそろそれも終わろうとしていたがノエルの安全を考えた時、まだロギナスに戻る決心かつかないだけだった。
「――よし。これで全員レベル3になったな。これからも修練を怠らなければ近い将来レベル4となり本当に使えるレベル5にも届くだろう」
初めて魔道具で調薬をしてからさらに一月ほど経った頃、当初の目標としていたカード収納スキルの修練が一段落した。
(さすがにそろそろ次の行動を決めなければいけないだろうな)
その日の夕食を共に摂りながら僕たちは先に進むかロギナスに戻るかを真剣に話し合った。
「やっぱり残してきたお店の事も気になるし、そろそろ戻るのも良いかもしれないですね。
でも、ミナトさんがまだ不安ならばもうちょっと後でも良いですけど……」
ノエルは本音と僕への気遣いで曖昧な返事をする。
(本当はすぐにでも戻りたいだろうに)
「いいよ。
ロギナスに戻る準備をしようか。
ただし、少し情報収集をしてからだけどね」
(とは言ったけどこの町のギルドじゃあ隣国でもないグラリアン王国のさらに端にあたるロギナスの情報なんてほとんど入るわけがないし、せめてアランガスタまで戻るしかないのか?)
僕は情報取得の難しさに頭をひねるがどうやっても打開策は思いつかなかった。
「仕方ない、ギルドで辺りの情勢だけ確認してアランガスタまで戻ろう」
僕は悩んだ末にそう判断をしてノエルに伝える。
「ごめんなさい。
私がお店のことが気になるなんて言ったから……」
「いや、どちらにしてもいつまでもこっちに居るわけにもいかないんだから良い機会かもしれないし、もし何かあればその時点で判断すればいいだけだよ」
僕は彼女にそう優しく声をかけると商業ギルドへと向かった。
「――そうか、帰ってしまうのか……。あの3人もとりあえず形になったようだがもう少し居て欲しかったな」
ギルドではロロシエル商会のハーベスが僕たちの動向を聞きつけてわざわざ挨拶に来てくれた。
「あの3人はやる気もありますし、これからの修練に必要な事はすべて教えてありますので僕が居なくてもサボりさえしなければ1年もあれば5レベルに到達出来ると思いますよ」
「そうか。
お前さんたちには世話になったな、国は違えど商売人は国境を越えるからな。
また何処かで会うこともあるだろう」
ハーベスはそう言って僕と握手を交わして笑った。
* * *
「――では、特に大きな問題は起こっていないのですね?」
ハーベスと挨拶を交わした後で僕たちはギルドの職員からアランガスタやグラリアンで大きなトラブルの噂が無いかを確認したが、ギルドには特にそういった情報は入っていないとの回答があっただけだった。
「まあ、予想どおりとしか言えないよな。それこそ国同士の戦争でも起こっていない限り小さなトラブルや人探しなんて情報は他国までは届かないだろうからね」
「それで帰路はどういった形を予定してますか?」
「これも来た時と同じく乗り合い馬車を使うか個人で馬車を手配するか商会の馬車に荷物運搬で同行させてもらうかになるかな」
「ミナトさんはどれが良いと思ってますか?」
「理想を言えばロロシエル商会のトトルさんがアランガスタへ向かう便があれば同行させてもらうのが一番安心出来ると思ってるけどそうタイミング良く馬車を出すわけがないからなぁ。
それこそハーベスさんに頼んでみれば良かったな」
「今からでも話してみたら良いではないですか?」
「さっき別れの挨拶をしたばかりなのにか?」
僕はなんとなくバツが悪い気もしたが交渉のタネを持ってハーベスに会いに行った。
「おや、どうしました?
その顔はわたしに頼み事がある顔ですね。
良いでしょう、儲け話であれば乗るのが商人ですからお話を聞かせてもらいましょうか」
ハーベスは先ほどの別れの挨拶の事など全く気にした様子もなく、僕の表情と態度ですぐに商人モードとなり応接室へと案内してくれた。
「それで、どのような提案ですかな?」
「今回、僕たちはアランガスタ経由でグラリアンへ戻ろうと思ってるのだけどその手段がまだ決まっていないんです。
それでロロシエル商会の方でアランガスタへ行商へ出る予定があれば同行させてもらえないかと思いまして」
「ふむ。
確かに君のスキルを使えば通常の何倍も荷物を運ぶことが出来るだろうが……。
しかし、それだけではないだろう?
君のことだ、もっと魅力的な交渉内容を用意しているのだろう?」
「さすがロロシエル商会の長ですね。
これはあまり多くの人に口外してないことなので信用ある人だけにして欲しいのですが僕のカード収集スキルには劣化防止の効果があります。
そして特定の人にのみ開放する効果をつけることも出来ます。
つまり簡単に説明すると劣化させたくない又は破損が気になるなどの物品をカード化して必要になったらハーベスさん自身が開放することが出来ると言うことです。
これを出来る限りですがカード化しましょう」
僕は交渉のカードを出してハーベスの回答を待った。
「とりあえず素材さえあればきちんとした薬は作れる事が証明されたな」
目の前に並べられた薬のカードを眺めながら僕たちは一息ついてお茶を飲みながら今後のことを話し合っている。
「それでどうするのですか?
まだ少し不安がありますけどロギナスに戻る準備を始めますか?」
正直なところ僕はまだ向こうに戻るのは早いのではないかと考えていた。
「まだ、ここの生徒たちのレベルが全員3に達していないからねもう少しだけ留まろうと思ってるよ」
正直、そろそろそれも終わろうとしていたがノエルの安全を考えた時、まだロギナスに戻る決心かつかないだけだった。
「――よし。これで全員レベル3になったな。これからも修練を怠らなければ近い将来レベル4となり本当に使えるレベル5にも届くだろう」
初めて魔道具で調薬をしてからさらに一月ほど経った頃、当初の目標としていたカード収納スキルの修練が一段落した。
(さすがにそろそろ次の行動を決めなければいけないだろうな)
その日の夕食を共に摂りながら僕たちは先に進むかロギナスに戻るかを真剣に話し合った。
「やっぱり残してきたお店の事も気になるし、そろそろ戻るのも良いかもしれないですね。
でも、ミナトさんがまだ不安ならばもうちょっと後でも良いですけど……」
ノエルは本音と僕への気遣いで曖昧な返事をする。
(本当はすぐにでも戻りたいだろうに)
「いいよ。
ロギナスに戻る準備をしようか。
ただし、少し情報収集をしてからだけどね」
(とは言ったけどこの町のギルドじゃあ隣国でもないグラリアン王国のさらに端にあたるロギナスの情報なんてほとんど入るわけがないし、せめてアランガスタまで戻るしかないのか?)
僕は情報取得の難しさに頭をひねるがどうやっても打開策は思いつかなかった。
「仕方ない、ギルドで辺りの情勢だけ確認してアランガスタまで戻ろう」
僕は悩んだ末にそう判断をしてノエルに伝える。
「ごめんなさい。
私がお店のことが気になるなんて言ったから……」
「いや、どちらにしてもいつまでもこっちに居るわけにもいかないんだから良い機会かもしれないし、もし何かあればその時点で判断すればいいだけだよ」
僕は彼女にそう優しく声をかけると商業ギルドへと向かった。
「――そうか、帰ってしまうのか……。あの3人もとりあえず形になったようだがもう少し居て欲しかったな」
ギルドではロロシエル商会のハーベスが僕たちの動向を聞きつけてわざわざ挨拶に来てくれた。
「あの3人はやる気もありますし、これからの修練に必要な事はすべて教えてありますので僕が居なくてもサボりさえしなければ1年もあれば5レベルに到達出来ると思いますよ」
「そうか。
お前さんたちには世話になったな、国は違えど商売人は国境を越えるからな。
また何処かで会うこともあるだろう」
ハーベスはそう言って僕と握手を交わして笑った。
* * *
「――では、特に大きな問題は起こっていないのですね?」
ハーベスと挨拶を交わした後で僕たちはギルドの職員からアランガスタやグラリアンで大きなトラブルの噂が無いかを確認したが、ギルドには特にそういった情報は入っていないとの回答があっただけだった。
「まあ、予想どおりとしか言えないよな。それこそ国同士の戦争でも起こっていない限り小さなトラブルや人探しなんて情報は他国までは届かないだろうからね」
「それで帰路はどういった形を予定してますか?」
「これも来た時と同じく乗り合い馬車を使うか個人で馬車を手配するか商会の馬車に荷物運搬で同行させてもらうかになるかな」
「ミナトさんはどれが良いと思ってますか?」
「理想を言えばロロシエル商会のトトルさんがアランガスタへ向かう便があれば同行させてもらうのが一番安心出来ると思ってるけどそうタイミング良く馬車を出すわけがないからなぁ。
それこそハーベスさんに頼んでみれば良かったな」
「今からでも話してみたら良いではないですか?」
「さっき別れの挨拶をしたばかりなのにか?」
僕はなんとなくバツが悪い気もしたが交渉のタネを持ってハーベスに会いに行った。
「おや、どうしました?
その顔はわたしに頼み事がある顔ですね。
良いでしょう、儲け話であれば乗るのが商人ですからお話を聞かせてもらいましょうか」
ハーベスは先ほどの別れの挨拶の事など全く気にした様子もなく、僕の表情と態度ですぐに商人モードとなり応接室へと案内してくれた。
「それで、どのような提案ですかな?」
「今回、僕たちはアランガスタ経由でグラリアンへ戻ろうと思ってるのだけどその手段がまだ決まっていないんです。
それでロロシエル商会の方でアランガスタへ行商へ出る予定があれば同行させてもらえないかと思いまして」
「ふむ。
確かに君のスキルを使えば通常の何倍も荷物を運ぶことが出来るだろうが……。
しかし、それだけではないだろう?
君のことだ、もっと魅力的な交渉内容を用意しているのだろう?」
「さすがロロシエル商会の長ですね。
これはあまり多くの人に口外してないことなので信用ある人だけにして欲しいのですが僕のカード収集スキルには劣化防止の効果があります。
そして特定の人にのみ開放する効果をつけることも出来ます。
つまり簡単に説明すると劣化させたくない又は破損が気になるなどの物品をカード化して必要になったらハーベスさん自身が開放することが出来ると言うことです。
これを出来る限りですがカード化しましょう」
僕は交渉のカードを出してハーベスの回答を待った。
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