荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第171話【鑑定スキルの使い方】

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「まずは魔道具に全て任せてみようか」

 僕はノエルに頼んで準備してもらった素材を魔道具の素材入れに収めてから調薬開始のボタンを押してみた。

 ――ゴゴゴゴゴ。

 低い音をたてながら魔道具は素材から必要な成分を抽出して調薬を進めていく。

「あ、次の素材を入れるランプが点灯しましたよ。
 次はこの素材を入れたらいいのですね?」

「ああ、そうだね。
 それを入れたら次はこれを入れれば終わりのはずだ」

 僕たちは本にあった作り方のとおりに素材を魔道具へと入れ調薬を進めていく。

「そろそろ完成するはずだ。
 こっちの瓶に出来た薬が溜まるはずだから出来上がったら二人で鑑定してみよう」

 調薬を始めて十数分程度で最初の調薬は完成した。

「思ったよりも簡単に出来た気がするけど魔道具ってのは凄いものなんだな」

 僕は魔道具に取り付けられた瓶に満たされた液体を眺めながらそう呟いた。

「今すぐに使うものではないからこぼしたりしないようにカード化しておくよ」

 僕はそう言って出来立ての薬の入った瓶をカード化してからノエルに渡す。

「じゃあこれの鑑定を頼むよ」

「分かりました。
 今までの練習の成果を見せる時ですね。
 ――鑑定」

 ノエルは微笑みながら渡されたカードに対して鑑定スキルを発動させた。

【初級回復薬:軽度の傷を修復させる効果がある】

「きちんと調薬は出来ているようですね。
 しかし、この魔道具が優秀なんでしょうけどこんなに簡単に調薬が出来てしまったら調合師の仕事が無くなるのではないですかね?」

 調薬がきちんと出来たことよりもそれによって他の人の仕事が無くなるのではないかとの心配をする彼女に僕はそっと告げた。

「確かに魔道具があれば調薬は出来るかもしれないけれどそれにしたってきちんとした分量の素材を準備しなければならないし、調合師だって無限に居るわけじゃない。
 特に小さな町や村にはそれこそ一人もいない可能性だってあるんだからそういった場所での調薬はそこに住んでいる人たちからするとありがたいことじゃあないかな?」

「――そうですね。そういったところでなら必要とされるかもしれませんね」

「だろ?
 それに僕はこの魔道具で作る薬を商業ギルドへ売るつもりは無いからね」

「売るつもりがない?
 ならば自分たちで使うものだけ作るのですか?」

「基本的にはそのつもりだけど、いざというときのために在庫をためて置こうと考えてるんだ。
 まあ、何もなければロギナスに戻った時にノエルの雑貨店で売れるようにすれば良いだけだしね」

「お店で売るのは良いですけど、その時はちゃんと登録しないと駄目ですからね」

「もちろん。
 ロギナスならば知り合いも多いし登録も問題なく出来ると思うよ」

 僕はそう言って薬のカードを仕舞うと今作った薬と同じ素材をテーブルに並べて次にやろうとしていることの説明をする。

「今度は魔道具に入れる素材の変化具合を鑑定で逐一確認しながら作ってみよう」

「それで何か変わるのでしょうか?」

「変わるか変わらないかはやってみないと分からないけど僕はやってみる価値はあると思ってるよ」

「分かりました。
 ミナトさんがそう言うならば私も全力で鑑定スキルを行使したいと思います」

 ノエルはそう言うと素材の投入を僕に任せて鑑定スキルに集中する。

「じゃあいくよ。
 一つ目の素材を投入、成分が十分に抽出されたと出たら次を投入するからすぐに教えて欲しい」

「はい」

 ノエルはそう返事をすると魔道具に手を乗せてスキルを継続して使って確認する。

「そろそろ準備をお願いします」

 始めて3分もしないうちにノエルはそう言って僕を見る。

「あと10秒後、9、8、7……。
 今です!」

 僕はノエルの指示に従って次の素材を魔道具に投入する。

「ゆっくり混ざっていますので今のうちに次の素材準備をお願いします」

 魔道具に手を重ねたまま鑑定スキルを持続させるのは相当に消耗するようで彼女の額からは汗が流れているのが見える。

「辛いようなら代わるけど大丈夫?」

「まだ平気です。
 これならば修練をしていた時の方が負荷が高かったですから。
 それよりももう少ししたら次の素材を投入しますので準備は……」

「出来てるから大丈夫だ」

 そんなやり取りをしながら僕たちは魔道具を使いながらも自分たちでタイミングを決めるセミセルフ調薬を完了させた。

「出来ましたね」

「ああ、出来た。
 時間的には完全自動での調薬時の約7割程度で完成はしたが問題はその効力だ。
 いくら早く作れても効力が低ければ役に立たないからね。
 しっかりと確認をしておかなければ……」

 僕の言葉にうなずいたノエルは完成した薬瓶を持ってスキルを使う。

「鑑定――」

【中級回復薬:中度の傷を修復させる効果がある】

「凄い!
 初級の素材で作ったはずなのに中級回復薬ができるなんて!」

 ノエルは上々の結果に薬瓶を握りしめて喜びの声をあげる。

「正直――予想以上の成果になったと思うけどやっぱりこのやり方はやめておこう」

「どうしてですか?
 時間も短縮されてますし、素材だって少なくて済むんですよ?」

「確かにノエルの言う通りなんだけどやっぱりスキルの消耗が気になるんだよ。
 調薬をしている間、常に鑑定スキルを発動しっぱなしなんてひとつの調薬を完成させるだけでどれだけ消耗することになるか……。
 初級回復薬レベルでこれじゃあ上級とかを作ろうとした時には倒れてしまうかもしれないからね。
 とにかく効果があることだけは確認出来たから実験は成功だ。
 あとは本当に必要になった時にまた考えるといい」

 僕がそう言い切るとノエルは一瞬だけ不満そうな表情を見せたがすぐに笑顔に戻って僕の言葉に同意をしてくれた。

「ありがとう。
 じゃあ次はこの薬を作ってみるとしよう。
 えっと素材は……」

 その後も僕たちは時間の許す限り調薬の本に書かれている薬を試していった。
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