荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
174 / 201

第174話【予想以上の進行速度】

しおりを挟む
「よし、準備のほうに問題はないですか?」

 トトルが御者台から確認の声をかけるとガラムたち護衛のメンバーから大丈夫との声が返ってくる。

「よし、出発します。
 目的地アランガスタ王都、途中に寄るのはマーグの街のみで、その後国境の砦を通過後に王都まで一気に進むことになります。
 ここまではいいですね?」

 トトルはそう言うと馬の手綱を動かして馬車を進ませながら続きを話す。

「今回は行商が主目的ではなくミナト殿とノエル殿をアランガスタ王都まで無事に送り届けることを優先する旅ですので向かう馬車はこの馬車一台となります。
 編隊が多くなればなるほど進行は遅くなりますからね」

「しかし、本当に何も積まないで護衛である俺たちまで馬車の荷車に乗ってしまって良かったのか?」

 ガラムは普通であればゆっくり進む馬車について歩くのに今回は早く進むために馬車に乗れるとのことで別の心配をし始めた。

「乗って移動は楽で良いけどその分報酬をカットするとは言わないよな?」

「その点はご安心を。
 今回の旅での利益確保は目処がついていますので問題なく護衛の皆さんに報酬をお支払いいたします」

「それはありがたいが一体どんなカラクリだい?
 って聞くまでも無かったな。
 目の前にその答えが居るんだから……」

 ガラムは僕の方を見てニヤリと笑う。

「商会の商品は僕が全て保管していますよ」

 全てお見通しと言った様子で話すガラムに僕は数枚のカードを見せて納得してもらった。

「しかし、全くもってこんなに身軽に動けるとは思わなかったよ。
 これならばマーグの街まで1日、国境門までもう1日でたどり着けるだろう。
 アランガスタに着いたら王都までも約2日でたどり着けるように途中の町には寄らずに強行で進めるからな」

 ガラムの言葉にザビリアたちも頷いてからあたりの警戒をはじめる。

「確かにそうですね。
 ミナトさんが居るだけで今まで複数の馬車で輸送していた商隊が馬車一台で済んでしまうのですからある意味恐ろしくもありますね」

 僕のそばに座っていたノエルがそうつぶやくように言うと馬車の後方を警戒していたローズも同意をするように頷いた。

   *   *   *

 旅は予想以上に順調に進み、1日目のマーグの街への到着も予定より早く到着してみんな驚いていた。

「今日は街の宿にて宿泊しますが朝が早いので酒は飲まないようにお願いします。
 ミナト殿は契約どおり商隊の仕事を補佐してもらいますのでこの後は私とギルドに顔を出してください」

 トトルはそう言うと僕とふたりでギルドへ向かい、予定していた商談を済ませてから宿へと戻った。

「おかえりなさい。
 商談はうまくいきましたか?」

 宿に帰るとノエルがそう言って出迎えてくれる。

「まあ、商談と言っても僕はなだけだからね。
 話しはトトルさんが全てやるんだから僕は言われるままに荷物をカード化したり開放したりしただけだよ。
 まあ、ギルドの職員がスキルを見て驚いた顔をしていたのだけが印象に残っているけどね」

「それはそうでしょうね。
 カード収集スキルの有用性はこの国ではまだまだ広まっていないようですからね。
 これからロロシエル商会が少しずつ人材を育てていけば変わっていくでしょうね」

 ノエルはそう言うと準備しておいた紅茶を僕にすすめて眠る前のひとときをゆっくりと過ごした。

   *   *   *

「――では出発します。
 今日の予定は国境の砦へたどり着くこと。
 砦の施設にて食事のみ対応してからすぐ横の広場にて野営をします。
 荷物はカード化したものばかりだと逆に怪しまれるかもしれませんので砦近くの休憩場所で破損や劣化に強い商材を馬車に置きますので護衛の皆さんはそこからは徒歩でお願いします。
 ミナト殿とノエル殿はそのままで大丈夫ですので商材と共に乗っていてください」

 トトルの適格な指示のもとガラムたちは皆うなずきあって了解との認識を共有した。

「――このあたりで休憩を兼ねて偽装工作をしましょう」

 今日もかなりのスピードで馬車を走らせた僕たちは予定しておいた場所にて商品の一部をカードから開放して馬車に積み込んでいく。

「こんなもので良いですか?」

 僕はトトルに言われた量の商品を馬車の荷車へ並べて確認すると「もう少し出しておきましょうか」と言われて追加でカード化を開放する。

「しっかし何度みても便利すぎて普通に運ぶのが馬鹿らしくなるようなスキルだよな」

 商品の量を調整している僕を周りを警戒しながらもあきれ顔で見るガラムに僕は思わず苦笑いをしながら言う。

「物をカード化するだけの地味なスキルなんですけどね」

 それに対してトトルが横から話に入ってくる。

「確かに地味なスキルだが商品を多数扱う商人には喉から手が出るほど欲しいスキルとなるだろう。
 きっとこれから先はカード収納スキルを持つ者が頭角を現してくるだろう。
 もちろん、きちんと教育を受けてレベルアップ出来た者だけだがね」

 トトルはそう言って本来ならば連れてくるつもりだったロロシエル商会のスキル持ちの彼らの事を思い浮かべていた。

「そうあって欲しいですね。
 結局今回は馬車の関係で同行出来なかったミギーさんたちもしっかりと修練を積んで自らはもちろん、次の世代にも広げていって欲しいと思います」

 トトルの様子からそれを悟った僕はそう言って彼の思いを汲んだ発言をする。

「さあ、国境の砦まであと少しです。
 ここから暫くは徒歩組に併せて速度を落として進みますが十分に日が落ちるまでにはたどり着けると思いますのでよろしくお願いしますね」

 トトルはそう言って進む準備を整えると国境の砦へ向けて馬車を走らせ始めた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...