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第175話【国境を越えて出会ったもの】
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「止まれ。
商会の証明証と通行料の支払い手続きをしてから通行するようにな」
国境門へたどり着いた僕たちの馬車は商会の証明証や荷物の検査を受けていた。
「ロロシエル商会の馬車にしては珍しく荷物が少ないのだな、まああんたならば特に問題はないだろうが何か急ぐ用事でもあったのか?」
何度も行き来しているトトルは当然ながら顔見知りの門兵も居ていつもとは違う様子に興味本位で聞かれていた。
「ちょっとな。
詳しくは商会の内部情報だから言えんがアランガスタ王都まで急ぎで行かないといけなくなってな。
こうして最小限での移動をしているんだよ」
「秘密ってことか。
まあ、商会の内部情報を詮索するのはご法度だから無理には聞かないさ。
ああ、そういえばアランガスタではまだそれほどでもないが隣のグラリアンでは最近、地の神の機嫌があまり良くないとの噂が聞こえてきているからくれぐれも道中気をつけて行ってくれよ」
門兵は手続きの終わった馬車の御者台にいるトトルにそう伝えてアランガスタ側の門へと馬車を誘導しながらそう教えてくれた。
「――なあ、地の神ってなんなのか聞いてもいいかな」
先ほどの門兵の話に出た神の話に興味を持った僕はトトルにそう問いかけた。
「そんなことも知らないとは驚きですね。
あなたはかなりの知識を持っているようでこの世界の理に関してはあまり詳しくはないようですね。
――この世界にはいろいろな神様が居て私たちの行いを見ているとされています。
例えば水の神様がお怒りになると大雨となり川が氾濫して大きな被害がでます。
空の神様がお怒りになると空から光の槍が降ってきて建物を壊したり燃やしたりされます」
「自然災害のことですよね?
その原因は全て神様の行いだとされているのですか?」
「そうですね。
大規模な自然災害は神の力と言われていますので私たちは常日頃から神に感謝と祈りを捧げています。
もちろん私どもが祈るのは主には商売の神様になりますが……」
(なるほど、人が対応出来ない現象に対しては神様の行いとして自らを納得させているのか……。しかし、神様か。確かにそんな存在には出会ったことがあるから居るのは分かっているけどあれから一度も会っていないからな。他の人はどうなんだろうか?)
「それで、神様に会われた事がある人って居るものなんですか?」
僕が真顔でそう聞くとトトルは予想どおりの答えを返してきた。
「ははは。
私は会ったことも会った人がいるとも聞いたこともありませんね。
そもそも、神様は私ども人とは交じらないものだと言われておりますし、個々の願いを叶えるなどあるものではないとも考えられていますので……」
「ならばどういった願いを祈るのですか?」
「行商ならば『無事に帰ってこられますように』などですね」
(なるほど、商売でも儲けがどうとかではなくて無事に終わる事を願うのか)
「なんかそれって良いですね」
僕は率直な感想を言ってから周りに目を向けた。
「そろそろまた荷物を仕舞って頂いてスピードを上げたいと思いますのでよろしくお願いします」
それから少し進んだ休憩場所でトトルからそう申し出があり僕は言われた荷物をまたカード化して護衛が乗れるスペースを開けてあげた。
「また乗せて貰えるのはありがたいけどこれに慣れるとマズイよね」
護衛メンバーのザビリアが荷物をどんどん片付けていく僕を見ながらそうつぶやくように言うと他のメンバーたちも一斉にうなずいた。
* * *
「――何か感じないか?」
休憩をしてから王都へ向けて走り出した馬車の最後方で辺りを警戒していたグラムがそう皆に問いかける。
「確かに、なんとなくだが嫌な気配があるな。
これはもしかしたら襲撃があるかもしれんぞ」
「馬車が単独で走っているのに周りからは護衛の姿が見えませんからね。
何かのトラブルでそうなってしまって先を急いでいるように見えたならチャンスととらえる者がいても不思議じゃないですよね」
ギリーの言葉にローズも自らの考えをあわせてくる。
「念のために準備をしておこうか。
何もなければそれでいいんだからな」
グラムがそう締めて護衛のメンバーは武器を手に辺りを警戒しながら身を潜める。
――ズズーン。
突然地鳴りがしたかと思うと道のそばにあった木が倒れておりその音に反応して馬が驚いて止まる。
「ちっ やっぱり出やがったか。
町や砦から離れるとまだこんな奴らが居るんだな」
盗賊らしき人影を認めながらもまだ警戒しながら近づいてくるのを見てこちらも様子を見る。
「私がうまく誘導しますので飛び出すのはもう少しお待ちください」
トトルがそう言うのを聞き皆がうなずく。
そもそも荷物を襲うつもりならいきなり火矢などは使ってこないだろうし、ここはトトルの演技に任せておくことになった。
「あなた達、いきなり危ないではないですか!
大切な荷物に傷が入ったらどう責任をとってくれるのですか!」
トトルは御者台から盗賊と思われる者たちに対してそう叫んだ。
商会の証明証と通行料の支払い手続きをしてから通行するようにな」
国境門へたどり着いた僕たちの馬車は商会の証明証や荷物の検査を受けていた。
「ロロシエル商会の馬車にしては珍しく荷物が少ないのだな、まああんたならば特に問題はないだろうが何か急ぐ用事でもあったのか?」
何度も行き来しているトトルは当然ながら顔見知りの門兵も居ていつもとは違う様子に興味本位で聞かれていた。
「ちょっとな。
詳しくは商会の内部情報だから言えんがアランガスタ王都まで急ぎで行かないといけなくなってな。
こうして最小限での移動をしているんだよ」
「秘密ってことか。
まあ、商会の内部情報を詮索するのはご法度だから無理には聞かないさ。
ああ、そういえばアランガスタではまだそれほどでもないが隣のグラリアンでは最近、地の神の機嫌があまり良くないとの噂が聞こえてきているからくれぐれも道中気をつけて行ってくれよ」
門兵は手続きの終わった馬車の御者台にいるトトルにそう伝えてアランガスタ側の門へと馬車を誘導しながらそう教えてくれた。
「――なあ、地の神ってなんなのか聞いてもいいかな」
先ほどの門兵の話に出た神の話に興味を持った僕はトトルにそう問いかけた。
「そんなことも知らないとは驚きですね。
あなたはかなりの知識を持っているようでこの世界の理に関してはあまり詳しくはないようですね。
――この世界にはいろいろな神様が居て私たちの行いを見ているとされています。
例えば水の神様がお怒りになると大雨となり川が氾濫して大きな被害がでます。
空の神様がお怒りになると空から光の槍が降ってきて建物を壊したり燃やしたりされます」
「自然災害のことですよね?
その原因は全て神様の行いだとされているのですか?」
「そうですね。
大規模な自然災害は神の力と言われていますので私たちは常日頃から神に感謝と祈りを捧げています。
もちろん私どもが祈るのは主には商売の神様になりますが……」
(なるほど、人が対応出来ない現象に対しては神様の行いとして自らを納得させているのか……。しかし、神様か。確かにそんな存在には出会ったことがあるから居るのは分かっているけどあれから一度も会っていないからな。他の人はどうなんだろうか?)
「それで、神様に会われた事がある人って居るものなんですか?」
僕が真顔でそう聞くとトトルは予想どおりの答えを返してきた。
「ははは。
私は会ったことも会った人がいるとも聞いたこともありませんね。
そもそも、神様は私ども人とは交じらないものだと言われておりますし、個々の願いを叶えるなどあるものではないとも考えられていますので……」
「ならばどういった願いを祈るのですか?」
「行商ならば『無事に帰ってこられますように』などですね」
(なるほど、商売でも儲けがどうとかではなくて無事に終わる事を願うのか)
「なんかそれって良いですね」
僕は率直な感想を言ってから周りに目を向けた。
「そろそろまた荷物を仕舞って頂いてスピードを上げたいと思いますのでよろしくお願いします」
それから少し進んだ休憩場所でトトルからそう申し出があり僕は言われた荷物をまたカード化して護衛が乗れるスペースを開けてあげた。
「また乗せて貰えるのはありがたいけどこれに慣れるとマズイよね」
護衛メンバーのザビリアが荷物をどんどん片付けていく僕を見ながらそうつぶやくように言うと他のメンバーたちも一斉にうなずいた。
* * *
「――何か感じないか?」
休憩をしてから王都へ向けて走り出した馬車の最後方で辺りを警戒していたグラムがそう皆に問いかける。
「確かに、なんとなくだが嫌な気配があるな。
これはもしかしたら襲撃があるかもしれんぞ」
「馬車が単独で走っているのに周りからは護衛の姿が見えませんからね。
何かのトラブルでそうなってしまって先を急いでいるように見えたならチャンスととらえる者がいても不思議じゃないですよね」
ギリーの言葉にローズも自らの考えをあわせてくる。
「念のために準備をしておこうか。
何もなければそれでいいんだからな」
グラムがそう締めて護衛のメンバーは武器を手に辺りを警戒しながら身を潜める。
――ズズーン。
突然地鳴りがしたかと思うと道のそばにあった木が倒れておりその音に反応して馬が驚いて止まる。
「ちっ やっぱり出やがったか。
町や砦から離れるとまだこんな奴らが居るんだな」
盗賊らしき人影を認めながらもまだ警戒しながら近づいてくるのを見てこちらも様子を見る。
「私がうまく誘導しますので飛び出すのはもう少しお待ちください」
トトルがそう言うのを聞き皆がうなずく。
そもそも荷物を襲うつもりならいきなり火矢などは使ってこないだろうし、ここはトトルの演技に任せておくことになった。
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大切な荷物に傷が入ったらどう責任をとってくれるのですか!」
トトルは御者台から盗賊と思われる者たちに対してそう叫んだ。
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