少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音

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第四章 百鬼夜行殲滅作戦

第三話*side陽真

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 拳銃を知らない者が衛の武器を見て貧弱だと思ったのは仕方ない。
 衛はその勘違いを利用し、過小評価を勝ち取っていた。

「確かに全くわからんな」
「だから薫子にはわからないだろうって言ったじゃないか」

 少しでも衛を理解してもらおうと思ったが無理だったようだ。
 ああやはり衛のことを理解し、寄り添うことができるのは僕だけなのだろう。
 否、僕しかいない。
 健気な衛の殻をやぶり、隠された禁断の果実に触れることを許されたのは、疑う余地なく僕だけなのだ。
 愛しい衛は今も僕や、どうでもいい薫子のために援護射撃をしてくれている。お陰でサクサク妖魔を切り刻めていた。

 そもそも衛の凄いところは退魔能力だけではない。
 過小評価で周りを誤魔化し、その他大勢の中にうまく紛れ込んでいるところも大変優秀だ。

 臆病なウサギのように巣穴に隠れたい気持ちは、その生い立ちを知れば納得できる。生きるための処世術だ。
 周りの様子を伺う能力が研ぎ澄まされ、今まさに援護としての能力に紐づいていることに彼は気づいているのか。
 宝石の原石のような衛は、気付かず自分でもその身を研磨していた。
 だけどもっともっと輝かせるには本人が躊躇することもしなくてはならない。衛ほどの宝を有象無象の中に埋もれさせたままにする訳にはいかないのだ。
 最高級の宝石になっても平穏に生きたいと言うのなら、僕が全力で手助けをしよう。むしろ僕はそのためにこの世に生を受けたに違いない。

 僕は眩いまでの輝きを放つ衛を手に入れようとして、完全に絡め取られてしまった。

 だが、それもまた善い。
 僕をここまで昂らせ、夢中にさせてくれる存在なんて初めてなのだ。

 愛する衛へと思いを馳せていれば、目の前に二メートルはあるだろう大男の妖魔が忽然こつぜんと現れた。
 知能のある妖魔は人の形をしていることが多く、話しかけてくる場合もある。
 この大男もなにか言うかと思えば、呻きながら頭から血を流し苦悶の表情を浮かべているだけだった。 
 僕は迷わずに首を切り落とす。

 一人で対峙していたならこんな簡単には切れなかっただろう。
 衛が数発、大男の頭に撃ち込んでくれていたからあっさり切り落とすことができたのだ。

 決して自分の武功にせず、とどめを他人に譲る。

 だから衛の武器は弱いと思われていたが、これは目立たないための衛の策略であることを僕は知っている。
 そのことに薫子も気付いたのだろう。
 譲られたことに少しばかり機嫌が悪そうだが、衛の偉大さに触れられたのだからもっと感動してほしい。

 残党もあらかた片付け終えれば、風景が禍々しい色合いから、薄暗くも安堵する街並みへと変化する。

「くそっ、やはりアイツ等高みの見物しやがって」

 薫子が憎々しげに地面を蹴飛ばし悪態をつく。

 五木が殺意を感じると言っていたが、事実今回のこの仕打ちは遠方へ左遷されるはずの薫子を僕が横からさらったことに対する意趣いしゅ返しだろう。
 この程度のことは想定内なので仕方ないと笑える範疇だが……続くようなら手を回さないといけなくなる。
 雑用が増えると衛との時間が減るのが難点だが仕方ない。

 異空間が完全に現世の姿を取り戻し、ほっと一息ついた瞬間、馬のいななきが響いた。

「なっ!」

 横で薫子が驚愕する声が聞こえる。

 異空間が消失すると、現世と異空間はつながる。
 異空間で起きたことがその瞬間に現世へ影響をおよぼし、また現世で起きていることも共有される。
 
 突然、先程まで何もなかったところに二頭立ての大型馬車が姿を現した。

 しかも衛のすぐ近くだ。

 御者からすれば突然人が目の前に現れたことになる。
 そうならないよう、特に今回は戦闘が激しくなるため、広範囲で一般人の避難や通行止めが行われているはずだ。

 退魔武器は妖魔にだけ有効な武器ではない。現世でも武器として使うことができる。
 衛は発砲の構えをしたが、何故かそのまま動かない。

 何故か、ではない。

 避ければ衛の直ぐ側にいる五木が被害に合う。五木は残念ながら馬車を避けることはできないだろう。
 そして撃ってしまえば、御者、あるいは馬に怪我を負わせてしまうと判断したのだ。
 
 退魔武器を妖魔以外に使えず、自分を盾にしてでも仲間を守る。
 それが僕の愛する日凪衛だ。

「まったく君は、真面目すぎる」

 僕の身体は考えるよりも早く駆け出していた。

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