28 / 48
第四章 百鬼夜行殲滅作戦
第三話*side陽真
しおりを挟む拳銃を知らない者が衛の武器を見て貧弱だと思ったのは仕方ない。
衛はその勘違いを利用し、過小評価を勝ち取っていた。
「確かに全くわからんな」
「だから薫子にはわからないだろうって言ったじゃないか」
少しでも衛を理解してもらおうと思ったが無理だったようだ。
ああやはり衛のことを理解し、寄り添うことができるのは僕だけなのだろう。
否、僕しかいない。
健気な衛の殻をやぶり、隠された禁断の果実に触れることを許されたのは、疑う余地なく僕だけなのだ。
愛しい衛は今も僕や、どうでもいい薫子のために援護射撃をしてくれている。お陰でサクサク妖魔を切り刻めていた。
そもそも衛の凄いところは退魔能力だけではない。
過小評価で周りを誤魔化し、その他大勢の中にうまく紛れ込んでいるところも大変優秀だ。
臆病なウサギのように巣穴に隠れたい気持ちは、その生い立ちを知れば納得できる。生きるための処世術だ。
周りの様子を伺う能力が研ぎ澄まされ、今まさに援護としての能力に紐づいていることに彼は気づいているのか。
宝石の原石のような衛は、気付かず自分でもその身を研磨していた。
だけどもっともっと輝かせるには本人が躊躇することもしなくてはならない。衛ほどの宝を有象無象の中に埋もれさせたままにする訳にはいかないのだ。
最高級の宝石になっても平穏に生きたいと言うのなら、僕が全力で手助けをしよう。むしろ僕はそのためにこの世に生を受けたに違いない。
僕は眩いまでの輝きを放つ衛を手に入れようとして、完全に絡め取られてしまった。
だが、それもまた善い。
僕をここまで昂らせ、夢中にさせてくれる存在なんて初めてなのだ。
愛する衛へと思いを馳せていれば、目の前に二メートルはあるだろう大男の妖魔が忽然と現れた。
知能のある妖魔は人の形をしていることが多く、話しかけてくる場合もある。
この大男もなにか言うかと思えば、呻きながら頭から血を流し苦悶の表情を浮かべているだけだった。
僕は迷わずに首を切り落とす。
一人で対峙していたならこんな簡単には切れなかっただろう。
衛が数発、大男の頭に撃ち込んでくれていたからあっさり切り落とすことができたのだ。
決して自分の武功にせず、とどめを他人に譲る。
だから衛の武器は弱いと思われていたが、これは目立たないための衛の策略であることを僕は知っている。
そのことに薫子も気付いたのだろう。
譲られたことに少しばかり機嫌が悪そうだが、衛の偉大さに触れられたのだからもっと感動してほしい。
残党もあらかた片付け終えれば、風景が禍々しい色合いから、薄暗くも安堵する街並みへと変化する。
「くそっ、やはりアイツ等高みの見物しやがって」
薫子が憎々しげに地面を蹴飛ばし悪態をつく。
五木が殺意を感じると言っていたが、事実今回のこの仕打ちは遠方へ左遷されるはずの薫子を僕が横から掻っ攫ったことに対する意趣返しだろう。
この程度のことは想定内なので仕方ないと笑える範疇だが……続くようなら手を回さないといけなくなる。
雑用が増えると衛との時間が減るのが難点だが仕方ない。
異空間が完全に現世の姿を取り戻し、ほっと一息ついた瞬間、馬のいななきが響いた。
「なっ!」
横で薫子が驚愕する声が聞こえる。
異空間が消失すると、現世と異空間はつながる。
異空間で起きたことがその瞬間に現世へ影響をおよぼし、また現世で起きていることも共有される。
突然、先程まで何もなかったところに二頭立ての大型馬車が姿を現した。
しかも衛のすぐ近くだ。
御者からすれば突然人が目の前に現れたことになる。
そうならないよう、特に今回は戦闘が激しくなるため、広範囲で一般人の避難や通行止めが行われているはずだ。
退魔武器は妖魔にだけ有効な武器ではない。現世でも武器として使うことができる。
衛は発砲の構えをしたが、何故かそのまま動かない。
何故か、ではない。
避ければ衛の直ぐ側にいる五木が被害に合う。五木は残念ながら馬車を避けることはできないだろう。
そして撃ってしまえば、御者、あるいは馬に怪我を負わせてしまうと判断したのだ。
退魔武器を妖魔以外に使えず、自分を盾にしてでも仲間を守る。
それが僕の愛する日凪衛だ。
「まったく君は、真面目すぎる」
僕の身体は考えるよりも早く駆け出していた。
122
あなたにおすすめの小説
ぼくが風になるまえに――
まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」
学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。
――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。
精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。
「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」
異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。
切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。
ダレン×フロル
どうぞよろしくお願いいたします。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
邪神の嫁として勝手に異世界召喚されたけど、邪神がもろタイプだったので満更でもないです
我利我利亡者
BL
椎葉 譲(しいば ゆずる)は突然異世界に召喚された。折角就活頑張って内定もらえてこれからって時に、冗談じゃない! しかも、召喚理由は邪神とやらの神子……という名の嫁にする為だとか。こっちの世界の人間が皆嫌がるから、異世界から神子を召喚した? ふざけんな! そんなの俺も嫌だわ! 怒り狂って元の世界に戻すよう主張する譲だったが、騒ぎを聞き付けて現れた邪神を一目見て、おもわず大声で叫ぶ。「きゃわいい!」。なんと邪神は猫の獣人で、何を隠そう譲は重度のケモナーだった。邪神は周囲からあまりいい扱いを受けていないせいかすっかり性格が捻くれていたが、そんな事は一切気にせず熱烈にラブコールする譲。「大好き! 結婚しよ!」「早く元の世界に帰れ!」。今日もそんな遣り取りが繰り返される。果たして譲は、邪神とフォーリンラブできるのか!?
孤独な邪神でもある黒猫獣人×重度のケモナーでもあるおチャラけ根明
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
悪役を幸せにしたいのになんか上手くいかない ~推しは間もなく退場予定~
はかまる
BL
ぼっちオタク高校生が転生したのはなんと大大大好きな恋愛小説。
…の、モブになっていた。しかも気づいた時点で既にストーリーはド終盤。
今まさに悪役のシルヴァ・ヴェントスが追放されそうになっている。
推しであるシルヴァの追放を阻止したい前世の記憶がゴリゴリあるオタク、アルス・チェルディは追放イベントを失敗に終わらせ強制的に悪役に学園生活を続行させる。
その後、悪役が幸せに学園を卒業できるようオタ活をしながら見守っていくはずが、なんだか悪役シルヴァの自分への態度が段々とおかしくなってきて……?
【CP】ヤンデレ?攻め×オタク包容力受け
短い話になりますがお付き合い頂けると嬉しいです。1日2回更新。
かっこいい攻めはいない不器用な青い恋。
(元となるSSから加筆した作品になります)
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる