29 / 48
第四章 百鬼夜行殲滅作戦
第四話*side衛
しおりを挟む百鬼夜行は圧巻だった。
こんな一度に種類の違う妖魔を見たことがない。
だけど、それよりも圧巻だったのは夜蝶部隊の面々の活躍だ。
一人ひとりのスペックはもちろん知っていたけど共闘すると凄かった。しかも鮮血夜叉の名に相応しく、百園曹長が鬼神の如く強い。
一条寺少尉も人間離れしていると思ったが、百園曹長の動きも人間には見えなかった。
二階堂もだが漫画のキャラだから強いというより、この世界には高貴な人間は強いという設定でもあるんじゃないだろうか。
他にも豪胆なのに素早い槍さばきの三枝先輩と、縦横無尽に雷を落とす五木先輩の攻撃に、俺なんて居ても居なくても大差ないのではと思ってしまった。
自分のモブさ加減に嫌気が差しつつも職務は遂行すべく、こちらに近寄る妖魔を撃ち落とし、少尉たちが立ち回りやすいよう援護する。
気付けば漫画では苦戦し、少尉に傷を負わせたラスボスの大男もあっさり討ち取られており、いつの間にか百鬼夜行は収束に向かっていた。
普段よりは流石に疲れたが想像よりは全然余裕がある。
これも夜蝶部隊みんなの活躍のお陰だろう。
蛍光色でチカチカした視界が、落ち着いた夜の町並みに戻っていく。
安堵で一息ついた瞬間。すぐ近くに大きな影を感じた。
とっさに銃口を向けたがそこに現れたのは妖魔でなく、二頭立ての馬車だった。
馬のいななきと蹄がレンガを打ち付ける音が響く。
なぜこんなところに馬車が?!
妖魔でないなら、攻撃するべきじゃない。
とにかく回避しようと思ったが。
「うわっ!!」
五木先輩の驚き声に振り返れば、尻もちをついた五木先輩とそこに駆け寄る三枝先輩が見えた。
俺が避けたら五木先輩に直撃する。
だけど、時間を稼げれば三枝先輩の助けが間に合うだろう。
再び馬車に視線を向ければ御者が手綱を引いて、馬を止めようとしていた。
だが、間に合いそうもない。
もし俺がここで撃って馬が怪我したら……どうなるんだ? 仕事ができない動物って処分されたりしないだろうか?
さらに御者は一般人で、少尉たちみたいな運動神経はないだろう。ということは馬車が転倒でもしたら、大怪我するんじゃないだろうか?
俺は孤児だしその他大勢だから、いなくなっても問題ないと思うけど、みんなには家族がいる。犠牲にはできない。
人間ってこんなに一瞬で色んな事を考えられるんだ……と思わず感心してしまった。
感心していたら馬車はもう目の前で。
色々考えたけど、全員が助かる解決策が見つからないから仕方ない。
ひかれても重症くらいで死なないといいなぁ、なんてぼんやり思っていたら、脇腹に物凄い衝撃を受けて俺の身体はそのまま横にすっ飛んだ。
ゴツゴツのレンガ道に打ち付けられるかと思ったがその衝撃はなく、頭を庇われるように立派な胸筋と腕に包まれながら俺はゴロゴロと地面を転がる。
嗅ぎ慣れた甘い香りで俺を助けてくれた人が誰なのか判った。
いや、そんなものがなくたって、俺なんかを身を挺して庇ってくれるのは、この世でただ一人だけだ。
「っ……大丈夫かい? 衛」
「少尉っ!! お怪我はっ?」
俺を包み込んでいた腕を緩めた隙に、俺は跳ね上がるように起きると少尉の身体を確認した。
だって、だってだ。
漫画ではこの百鬼夜行で少尉は大怪我をしていた。
怪我をしたシーンとは違うけど、もしかして、と悪い予感が浮かんでしまう。
少尉は漫画でも大切な人を庇って怪我をしたのだ。
今のこの状況はそういうことじゃないのか?
俺はモブだけど少尉の恋人なのだから。
慌てふためく俺とは対象的に、一条寺少尉は優雅に微笑むと俺の頬を撫でた。
「ふふ、質問に質問で返すのは失礼だよ? だけどそんな顔されたら怒れなくなるな」
「ご、無事……ですか?」
無遠慮にジロジロと少尉を見下ろして、さらに恐る恐る抱きしめれば少尉の背中に手を這わせる。
服の破損やヌメリはない。
良かった。
漫画みたいに背中にがっつりと穴が空いたりはしていない。
だけど他に怪我をしているのかもしれない。
俺は撫で回すように少尉の体を触診した。
152
あなたにおすすめの小説
ぼくが風になるまえに――
まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」
学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。
――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。
精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。
「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」
異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。
切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。
ダレン×フロル
どうぞよろしくお願いいたします。
悪役を幸せにしたいのになんか上手くいかない ~推しは間もなく退場予定~
はかまる
BL
ぼっちオタク高校生が転生したのはなんと大大大好きな恋愛小説。
…の、モブになっていた。しかも気づいた時点で既にストーリーはド終盤。
今まさに悪役のシルヴァ・ヴェントスが追放されそうになっている。
推しであるシルヴァの追放を阻止したい前世の記憶がゴリゴリあるオタク、アルス・チェルディは追放イベントを失敗に終わらせ強制的に悪役に学園生活を続行させる。
その後、悪役が幸せに学園を卒業できるようオタ活をしながら見守っていくはずが、なんだか悪役シルヴァの自分への態度が段々とおかしくなってきて……?
【CP】ヤンデレ?攻め×オタク包容力受け
短い話になりますがお付き合い頂けると嬉しいです。1日2回更新。
かっこいい攻めはいない不器用な青い恋。
(元となるSSから加筆した作品になります)
魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます
トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。
魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・
なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️
エブリスタにも、掲載しています。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。
くまだった
BL
新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。
金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。
貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け
ムーンさんで先行投稿してます。
感想頂けたら嬉しいです!
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる