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第四章 百鬼夜行殲滅作戦
第四話*side衛
百鬼夜行は圧巻だった。
こんな一度に種類の違う妖魔を見たことがない。
だけど、それよりも圧巻だったのは夜蝶部隊の面々の活躍だ。
一人ひとりのスペックはもちろん知っていたけど共闘すると凄かった。しかも鮮血夜叉の名に相応しく、百園曹長が鬼神の如く強い。
一条寺少尉も人間離れしていると思ったが、百園曹長の動きも人間には見えなかった。
二階堂もだが漫画のキャラだから強いというより、この世界には高貴な人間は強いという設定でもあるんじゃないだろうか。
他にも豪胆なのに素早い槍さばきの三枝先輩と、縦横無尽に雷を落とす五木先輩の攻撃に、俺なんて居ても居なくても大差ないのではと思ってしまった。
自分のモブさ加減に嫌気が差しつつも職務は遂行すべく、こちらに近寄る妖魔を撃ち落とし、少尉たちが立ち回りやすいよう援護する。
気付けば漫画では苦戦し、少尉に傷を負わせたラスボスの大男もあっさり討ち取られており、いつの間にか百鬼夜行は収束に向かっていた。
普段よりは流石に疲れたが想像よりは全然余裕がある。
これも夜蝶部隊みんなの活躍のお陰だろう。
蛍光色でチカチカした視界が、落ち着いた夜の町並みに戻っていく。
安堵で一息ついた瞬間。すぐ近くに大きな影を感じた。
とっさに銃口を向けたがそこに現れたのは妖魔でなく、二頭立ての馬車だった。
馬のいななきと蹄がレンガを打ち付ける音が響く。
なぜこんなところに馬車が?!
妖魔でないなら、攻撃するべきじゃない。
とにかく回避しようと思ったが。
「うわっ!!」
五木先輩の驚き声に振り返れば、尻もちをついた五木先輩とそこに駆け寄る三枝先輩が見えた。
俺が避けたら五木先輩に直撃する。
だけど、時間を稼げれば三枝先輩の助けが間に合うだろう。
再び馬車に視線を向ければ御者が手綱を引いて、馬を止めようとしていた。
だが、間に合いそうもない。
もし俺がここで撃って馬が怪我したら……どうなるんだ? 仕事ができない動物って処分されたりしないだろうか?
さらに御者は一般人で、少尉たちみたいな運動神経はないだろう。ということは馬車が転倒でもしたら、大怪我するんじゃないだろうか?
俺は孤児だしその他大勢だから、いなくなっても問題ないと思うけど、みんなには家族がいる。犠牲にはできない。
人間ってこんなに一瞬で色んな事を考えられるんだ……と思わず感心してしまった。
感心していたら馬車はもう目の前で。
色々考えたけど、全員が助かる解決策が見つからないから仕方ない。
ひかれても重症くらいで死なないといいなぁ、なんてぼんやり思っていたら、脇腹に物凄い衝撃を受けて俺の身体はそのまま横にすっ飛んだ。
ゴツゴツのレンガ道に打ち付けられるかと思ったがその衝撃はなく、頭を庇われるように立派な胸筋と腕に包まれながら俺はゴロゴロと地面を転がる。
嗅ぎ慣れた甘い香りで俺を助けてくれた人が誰なのか判った。
いや、そんなものがなくたって、俺なんかを身を挺して庇ってくれるのは、この世でただ一人だけだ。
「っ……大丈夫かい? 衛」
「少尉っ!! お怪我はっ?」
俺を包み込んでいた腕を緩めた隙に、俺は跳ね上がるように起きると少尉の身体を確認した。
だって、だってだ。
漫画ではこの百鬼夜行で少尉は大怪我をしていた。
怪我をしたシーンとは違うけど、もしかして、と悪い予感が浮かんでしまう。
少尉は漫画でも大切な人を庇って怪我をしたのだ。
今のこの状況はそういうことじゃないのか?
俺はモブだけど少尉の恋人なのだから。
慌てふためく俺とは対象的に、一条寺少尉は優雅に微笑むと俺の頬を撫でた。
「ふふ、質問に質問で返すのは失礼だよ? だけどそんな顔されたら怒れなくなるな」
「ご、無事……ですか?」
無遠慮にジロジロと少尉を見下ろして、さらに恐る恐る抱きしめれば少尉の背中に手を這わせる。
服の破損やヌメリはない。
良かった。
漫画みたいに背中にがっつりと穴が空いたりはしていない。
だけど他に怪我をしているのかもしれない。
俺は撫で回すように少尉の体を触診した。
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